白い空

アンドリュー

白い空

明日が来る。月が薄くなり真っ黒の空が白くなり、やがて青くなる。そんなの当たり前だと人は言う。じゃあもし自分の時間だけ止まってしまったら?当たり前だった事がそうじゃ無くなったら人は何を当たり前と定義するのだろう?








僕の時間はもうじき止まる。生まれて記憶を持たない頃から何度も大きな手術をされてきた。一番古い記憶は鼻の穴にチューブを挿されて頭の中が痺れるような激しい痛みを感じた事だ。








綺麗に整えられた世界が硝子越しに映されていたが、僕には酷く醜く見えた。森の木々のように美しく並ぶ建物や、夜の星々のように輝きを放つ街並。普通なら絵に描いた様なその表面を眺めて満足するのだろうけど、僕はそんな人達とは違う。








でも同じになれないといけない理由はあるんだろうか?だって、僕の時間はもうじき止まるけど、普通な考えの人達はまだまだ時間が残っている。僕と他の人達の時間の重みは違う。だから僕は最後まで僕でいようと思う。








次第に、考える事までも億劫になってきた。僕の腕や脚はまるで皮と骨しかないようだけど、もしそんな姿になった腕や脚とお話しが出来たのなら、僕は仲良く出来るだろうか?嫌われちゃうかな?逆に感謝されるかもしれないね。筋肉痛もなく、ヘトヘトになるまで酷使しなかったから。








生活の一部である機械からの耳鳴りの様な音が遠くなっていく。白い作り物の僕の空に幾つもの雲が影をおとしている。そのうちの幾つかの雲からは雨が降っているみたいだ。








僕を生かす為に動いていた音と耳鳴りが重なり静まっていく。








もし僕に今から時間が与えられるのなら、僕はどんな僕でいるだろう?多分、僕のままだろうな。だって、僕の時間を人にあげる位なら、自分の為に使いたいんだもの。僕には何一つとして選べなかった。だから、心だけは僕の物だ。キレイな表面なんて要らない。僕は僕のまま、、






「生きたかった。」








病室に変化の無い電子音が響く。光を失った瞳の少女は16歳。その少女の手を握りしめる両親らしき人影は、膝から崩れながら大粒の涙を流していた。病室の窓からは、丘の下に広がる夜景があった。


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白い空 アンドリュー @masatatu

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