第3話 キャラクターメイク
結局ボクはアリスの言う通り小鬼族を選ぶことにした。
どう見ても悪役種族かモンスターである。
ボクはアリスに、
「この特徴の中で種族として外せないものは何があるの?」
と、問いかけると。
「身長が140半ばを超えないことと、額に角が生えていることだけですね♥」
なんとまぁガバガバな規制なのかと思わず苦笑いする。
だが、そこだけを守れば後は全て自分好みに魔改造できるのだ。
今までやってきたゲームのキャラクターの外見も自分が納得するまで徹底的に拘って来たので、ここでどれだけ試行錯誤しようと苦にならないと思う。
そんなことを考えながらキャラメイクを始める。
身長は130㎝半ばで基本的な体格はスレンダーな女の子、入力したとおりにアバターが変化するが、驚いたことに
さっきサラッと各種族を見た時にも思ったが、祖霊族の男の
多分不細工な女の子も作れなくはないのだろうし
「そういうニーズもあるんだろうな…」
人の好みは様々なので他人に迷惑をかけないなら好きなキャラクターを作るのが良いと思うし、相手の迷惑にならない範囲で付き合えばいいんじゃないかな?
自分の嫌いなタイプに自ら近寄っていったくせに相手を侮辱し被害を受けたとわめくだけの奴は迷惑極まりないだけだと思うけど。
そんなことに考えをめぐらせながら自キャラの作成を進めると、案外あっけなく
キャラの外見が出来上がった。
身長134㎝程でピンクシルバーの髪を赤いリボンでツィンテールにしたロリ巨乳、アンダーが細い為胸がより大きく見える美少女、トランジスタグラマーというべきなのだろうが胸以外の全ての身体のパーツが細く小さいので、ロリ巨乳という言葉が真っ先に浮かぶのは仕方がない。
額の生え際から延び優美な湾曲を描く真っ白な一本の角が特徴的な
そのかんばせは優しげな眼付に光の加減で色合いが変わる瞳孔、金色の光を放つ虹彩。
高くもなく低くもなくバランスのとれた鼻梁に、清楚な印象を与える小さな唇。
口を動かせば時折垣間見える可愛い八重歯程度に退化した犬歯。
贔屓目抜きに評価しても国を傾けかねない美少女である。
「これは、お可愛い♥大規模パッチが入った後は貞操を脅かされる危険がありそうなアバターですね…」
アリスが心配げに話しかけてくる。
何か言ってるようだが今ボクは仮想世界で使うことになるアバターの美しさに魅了されているので聞き流した。
「思ったより時間も手間もかからなかったね?」
ふと思ったことをアリスに尋ねると、
「多くの方は『〇〇みたいなキャラにして』という要望から始まり、そこから更にダメ出しを積み重ねられるので、AIとしても対応のしようがない案件が多いのです。しかし御主人様はゴブリン女性を御自分の理想を元にして上手く作り上げられたので、
想定よりもずいぶんお早めに作り上げられたかと…」
アリスの言葉を聞くと、ここでキャラを作る人の内無視できないほどの割合の人がモンスタークレーマーとなっているようだ。
AIの世界も世知辛い。
「残りはスキルとステータスですが♥」
雑談もほどほどにキャラメイクに戻る。
小鬼族は本多忠勝をモデルにした種族なのではないのか?
というほどプラス修正が高い。
筋力
耐久力
器用さ
素早さ
知性
魅力
魔力
の、七つの能力の内、筋力と耐久力、器用さと素早さに結構なプラス補正がついている。
弱点としては知性に少しマイナス修正がついているので術者をするなら多少不利ではあるが、
まぁ前線指揮官だった平八郎の亜流だと思えば気にもならない。
問題はスキル構成の方だ。
今までいくつかこの仮想世界をデチューンしたゲームをやったことがあるにはあるが、ボクは能力的に
前線でタンクをやるには視界が狭く、
DPSをやるには操作量が足りない。
残るロールでメジャーなのはヒーラーかヌーカーだが、ゴブリンにはあまり向かない。
そう思いながらスキルを眺めていると、
「アリス…これって?」
声を震わせながら彼女に問いかける。
「クラウドコントローラーですか?一般的にCCと呼ばれるロールですね。
高い戦術眼と指揮力のある方がお使いになると集団戦では猛威を振るうと認識しています♥」
そう!デチューンされたゲームでは幾つかのクラスやロールがコストに合わないと言って削除されたのだが、その中にボクが長年愛用したキャラのロール、クラウドコントローラーが存在した。
本番の仮想世界では実装されたままだったのか…
ボクはしばし感動に打ち震えると、
「アリス!ゴブリンのクラウドコントローラーに最適のスキルは何?」
と彼女に問うた。
アリスはしばらく計算した後
「現状の使用ではゴブリンのCCに最適なスキルは弓だと思います♥
次点で魔法ですね♥」
それを聞くと、
「ではゴブリンCCアーチャーにCC向けな魔法もつけて、最適なステータスを組んでみてくれる?」
と、お願いする。
「畏まりましたご主人様♥」
彼女はそう返事をしてスキルとステータスの構成を演算し始める。
しばらくして、
「このようになりました♥」
ステータス 成長度
筋力 :13 B
耐久力:14 C
器用さ:16 A
素早さ:17 A
知性 :11 D
魅力 :21 S
魔力 :17 C
*Lv1時のステータスの平均値は9~11
*初期職の一般的な成長度はC
HP:7
MP:9
魅力は恐らくアバターの出来への評価だと思うが、他は長所をある程度削って上位職になった時の為に欠点を埋めてくれたのだと思う。
「アリス、ありがとう」
苦心してくれたであろう彼女に感謝を示す。
微笑で返してくれるアリスは続いてスキルを提示してくれる。
戦闘スキル
クラウドコントドール Lv.1
弓 Lv.1
土魔法 Lv.1
水魔法 Lv1
一般スキル
礼儀作法 Lv.3
*戦闘スキル、一般スキルの上限は5と言われている。
戦闘スキルは恐らくスキルポイントで何とか取得してくれたのだろうが、一般スキルの礼儀作法はどうやって付けてくれたのだろう?
そのことをアリスに聞くと、
「一般スキルはLv.1を3種類か、LV.3 までの物を選択することができるのですが、
ご主人様の事を小鬼族と侮る者がいる可能性を危惧し礼儀作法をそれなりのレベルに上げました♥」
痒い所に手が届く気配りをしてくれるあたりやっぱりこの子は大当たりだ!
アリスを頭を撫でてあげると。嬉しそうにくるくると飛び回る。
そんなやり取りが落ち着くとアリスは、
「ご主人様、仮想世界での御名前をお決めください♥お名前が決定すれば仮想世界にログインとなります♥」
「弓っていうのは名前に付けたいな、後はアリスとの類似性も持たせたいし…」
しばらく悩むが、思いついた名前に抵抗はない。
「弓姫アイリスで登録してほしい」
アリスは嬉しそうに微笑むと、
「イエス、マスター。弓姫アイリス登録できました。果て無き旅のご無事をお祈りいたします♥」
その言葉が聞こえた途端視覚に表示されていた情報と共にアリスはすぅっと視覚から消えたのだった。
CCネカマ姫仮想世界に舞い降りる! 不知火読人 @Yomihito_Shirazu
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