5. 幕間 - 停電

「学者先生よ。ずいぶん楽しそうだが、そんなにこの話は面白いかね?」

 ええ、とても、と私は答えた。

 元気そうだな、と思ってしまった。聞いているのは百年前の話だというのに。

「モノの怪の話も随分と集めてきましたが、平笠の化け猫の話が一番面白いですよ。しかも今回は直に会った方のお話ですから、瑞々しさが違います。おっと」

 ふいに明かりが落ちる。

「停電かねえ。電気は便利だが、まぁ、大風にゃ弱いな」

 老人が愉快そうに呟く。おお祭司様さじさおお祭司様さじさ、と廊下をやってくる足音がする。

「ところで、儂が長生きなのはやはり血を飲んだからなのかね?」

「どうでしょうか。巷のまじない師も、疫鬼エキを成敗したら病める者に血を与えます。ですが、それで長命になるということはないようです」


 老人にはそう答えつつも、私には心当たりがあった。


「彼女が血を飲ませたという事例は他に見つかっていませんが、彼女は特殊ですからね。そういう事もあるやも知れません」

 

 やがて蝋燭と茶が持ち込まれ、集落の祭を取り仕切る古老は喉を湿らせて、話の続きを始めた。

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