再会(語り:タニア)

翌日。タニアはかなり早く起きて活動を始めた。

服装は、タリアのものだったピンク色の給仕服。ただし、用意だけされていてタリアが着ることはなかった、半袖のものだ。(タリアは常に長袖の服を着ている)


タニアは久しぶりの我が家を探検していた。

甘いはちみつ亭の外側は鳥型魔法具を介して水晶球で見ていたし、窓から覗ける範囲は建物の中も見ていたが、やはり自分の目で見ると違うものだ。

特に地下室は、鳥型魔法具では見ることが出来ない場所だった。


タニアが地下室の箱や樽を眺めていると、声がかけられた。

サティ「タニア!?…帰ってきたのなら、わたくしの所に顔を出すべきじゃなくて?心配…してなくもなかったんですからね?!」

声をかけてきたのは、村長の娘のサティだった。ミシアとタニアの幼馴染である。

タニア「…サティ…?」

タニアはサティに抱きついた。

タニア「久しぶりね!サティにも会いたかったわ!大きくなったわね!」

タニアの目から嬉し涙があふれ出る。

サティ「…ええ?!…ちょっと、たった数日会わなかったくらいで、大袈裟ですわよ!?」

タニア「数日じゃないもん!…え~ん」

サティ「そんな、泣くほど…?!」


そこへ、階段からタリアが降りてきた。

いつもの長袖の給仕服を着ている。

タリア「おはよう、サティ。来てたのね」

サティ「ああ、タニア!良いところに来ましたわね。タニアの様子がおかしいのですわ。…って、えーっ?!タニアが2人いるぅ??!!」


タリア「それが、旅の途中で分裂しちゃってねー」

サティ「ええっ!?そんな病気だったんですの?!」

タニア「そんなわけないでしょ!」

タリアのジョークに、タニアがつっこむ。


タリア「まぁ、話すと長いんだけど、とりあえず。わたしはタリアって名前になったから、よろしくね」

サティ「突然どーゆーことなんですのぉ??」

タリア「まぁ、双子だと思ってもらえればいいかな?一応そちらが姉ということで…。そんな感じはしないけど」

タニア「それどういう意味よ?!」

タリア「さぁね~?」


タリアは笑って、駆け出した。地下室の階段を上って、1階の酒場に入る。

タニア「こら、待てぇ!」

タニアは追いかけようとするが、長いこと磔にされていたせいで筋力が弱くてあまり走れないので、1階に出たところで立ち止まった。

サティ「ちょっとぉ、説明しなさいよ~!」

サティも追いかけてきた。


酒場には、朝食のためにミシアやミシアの仲間たちが集まっていた。珍しく早起きしたライラもいる。

ミシア「おはよう、タニア、タリア」

アーキル「朝っぱらから追いかけっこか?元気なこって」

コノハ「年寄りくさいわよ、アーキル」

ルディア「元気なのは良いことです!」

ケニー「そうですね」

ライラ「おはよう~、タニアちゃん、タリアちゃん~。でも~、お店の中を走っちゃ、駄目よ~?」

タニアとタリアを見て、みんな幸せそうに笑っている。


そんな中をなおも逃げようとするタリア。

タニア「そっちがその気なら…」

タニアは精神を集中させて、こっそりと魔法を使った。自分の意識とタリアの意識が軽く結合する。

タニア「ていっ!痛っ」

タニアは、自分の手の甲を二本指で叩いた。

サティ「なにやってるんですの??」


不思議そうにするサティをよそに、タリアに反応があった。

タリア「痛ぁ~い?!」

タリアの手に軽い痛みが伝わったのだ。

タニア「ふふん、どんなもんよ」


タリア「痛い…。でも…。ふふふっ」

タリアはタニアの所に戻ってきた。

タニア「なに?…どうして笑うの?」

タリア「だって…みんなが笑っていて、嬉しいんだもの」

サティ「わたくしは、笑ってなんかいなくてよ!説明しなさいってば~。まったくもう…ふふふっ」

サティも文句を言いつつ、つられて笑顔になった。


魔法で結合された意識を通して、逆にタリアの嬉しい気持ちがタニアに伝わってきた。それを感じて、タニアにも嬉しい気持ちが湧き上がってくる。久しく感じたことのない感情だ。


タニアは、ミシアと再会することを長らく夢見てきた。そして、それは実現した。

ライラさんやおねえちゃんの仲間の人たちにも囲まれ、友だちと会うこともできて、みんなが笑顔だ。

タリアと共に居ることになったのは予想外だったけど、一緒に笑い合うのも悪くない。


…幸せ…。


タニアの幸せな気持ちがタリアにも伝わってきて、タリアも一層笑顔になった。



(第3巻―海水浴編―へ続く)

https://kakuyomu.jp/works/16816452218953884589

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深痕のミシア ―2.タニア編「どちらの言う事を信じるの?」― 真田 了 @sanada-ryou

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