第46話 ダンジョン内に潜入だポン
私達は、今しがたまでいた草原の丘から、洞窟ダンジョンに直接移動する為に、メグフェリーゼ様の御力をかりて転移してもらったんだ。
いきなり、私達は、洞窟ダンジョンの高い空中に転移したみたいで、落下する感覚があったんだけど、タンポポが翼を羽ばたかせて空間を飛び始めたから、いきなり落下するのは回避出来た。
私は、タンポポの背中に跨りしがみついていたから大丈夫だったけど、ポンポコはどうなったんだろう。
ポンポコの行方が心配になった私は、辺りを見渡そうとしてみた。
「ポン!ポン!ポポン!ポポンがポン!」
すると、私の真下からポンポコの声が聞こえてくる。
「ポポンが神獣忍法!空中神歩行の術だポン!」
その声と同時に、空中を華麗に楽しそうに飛び跳ねているポンポコを発見して、ホッとする。
てゆうか、わたしが考えた技をちゃんと使ってくれた。やっぱ技名が冴えてるね。才能あるよわたし。
「アンポコちゃん、心配はご無用だポン」
私の心の内を読み取って、返事をするポンポコ。
どうやらアンポンタンの隊員全員が、無事に洞窟ダンジョンに転移できたみたい。
普段の私なら、洞窟ダンジョンに入るだけで、ビクビクしちゃうぐらいのビビリの怖がりさんなんだけど、今はアンポコの白仮面を装備してるから、心がすっきりしてて全然大丈夫そう。
メグフェリーゼ様から授かったアンポコ専用の白仮面には、女神様特性の恐怖耐性がついてるからね。流石は女神様特性の品。やっぱすごい。効果の効きがわたしが作るよりも断然上だもん。
この白仮面をつけてるだけで、妙に自信が湧いてくるような気分もしてくるし。
そのへんの付属効果の説明は聞かされてないけど、どうせ私に話すのが面倒いだけで、何か他にも危なそうな特殊効果がついていそう。
まあ、いいや。その件は今度時間がある時にこの仮面をじっくり解析していけばいいや。
流石に、この仮面にマイナス効果は付けないと思うから、今は横に置いておこう。
私は、メグフェリーゼ様から授かっていたもう1つの装備品──
この
そのことを考えるとちょっと興奮してしまう。
「これは、想定以上だったポポ」
「空中に転移されて良かったポン。流石はメグフェリーゼ様だポン」
タンポポとポンポコの呟き声が私の耳に届く。
どういう意味なのか、ポンポコ達の方に視線を移すと、ポンポコ達は地表部を見つめていた。
「アンポコちゃんも真下の風景を見えおいた方がいいポン」
「──地上の様子ね。どれどれ......」
私は、空中を飛んでるタンポポの背にぴったりと密着したまま、注意を傾けて周りを見渡す。
周りは凄く開けた大空間。
上空から見てかろうじて、奥の壁が見通せる様相だ。
この空中から地表を全体的に見渡してみると、地表がとんでもなくやば過ぎるのが見て取れる。
「なんじゃ、こりゃ──」
ビックリ仰天、オーマイガー!!
──地表は、闇色をした魔物達で埋め尽くされてる。
圧倒的すぎる数の魔物達で、上空から見ても遠くの仕切りの壁が漸く見通せる程の広大な空間を様々な魔物が埋め尽くしてる。
こりゃー、凄いわ。思わず口を大きく開けて唖然としちゃった。
こんなの見たことない....っていうか、見たくなかった。
せめてもの救いは、巨人種や龍種の魔物が見当たらないぐらい。
大勢の魔物の中で、ぱっとみて眼についたのは、甲殻種の
──まさに、魔物の軍団なんだけど.....。
騎士団は、こんなのを討伐しようとしてたの?
こんなの無理だし、無謀だし!!死んじゃうからね!!
騎士団を小隊に振り分けて対応した時点で、既に対応を間違えてるよ。
個別に対応してたら、数の論理で潰されちゃうのに、そんな考えをもたなかったのかな?
私がもし指揮出来るんだったら、絶対に洞窟内に侵入しないように初級ダンジョンを封鎖して、騎士団で洞窟周辺を取り囲み、洞窟周辺から溢れ出てきた魔物達を一斉に叩いたほうが、絶対に効率的だし被害が少ないと思うんだけど.....。
この地で不幸にも力尽きた騎士団のみなさんは、恨むんだったら、私じゃなくて、こんな馬鹿な命令を下した上官を恨んでちょうだい。
なんだか、アンポコの仮面を装着しているせいで、感覚がすっかり麻痺したみたいに感じるけど、まあ震えて縮こまっているよりは全然ましだからと妙に達観した思いを抱いてしまう。
この魔物の軍団が居座っている、この洞窟内の巨大野営地と言っても言い間違いではない場所を、よりじっくりと俯瞰するように観察してみた。
「あれれのれっ....タンポポちゃん、魔物の軍団の全ての魔物達は、彫像のように固まって身動き一つ動かさないけど、どういうことなのかな?」
「今のアンポコちゃんは、わからないみたいだけど、この空間には、メグフェリーゼ様の神威が満ちているポッポ」
「ここに集まっている全ての魔物達は、メグフェリーゼ様の神威の圧力で動けないポン」
そうか!!転移する場所の安全を確保するために、この空間中にメグフェリーゼ様の神威が満ちてるんだ。
どうりで、悪意とか腐臭とかまったく感じない訳だ。
さっきまで、その空間に自然にいたから、今まで全然気づかなかったよ。
それなら、この空間にいる魔物達は、当分動くことが出来ないんじゃないかな。
「この魔物達を排除するなら、今がチャンスだポン!!」
「そうね。今がチャンスなのはわかるけど、地上に降りてポコポコ1匹づつ倒していくのは、時間が掛かりすぎるから嫌だからね」
「えー、ポンポコの力を色々試してみたかったポン」
「──女神様から授かった力を、ここで存分に発揮して暴れる予定だったのにポッポ」
ポンポコとタンポポから、早速避難の声が上がる。
「じゃあ、まずは私がこの場を掌握するから、その次は、ポンポコとタンポポで順番に技を出し合っていく感じで、この状況を対応していきましょうか」
私としては、さっさと、メグフェリーゼ様の考案した計画に従って、もくもくと作業を進めて、一刻も早くこの場の作業を終わらして立ち去りたいんだけど.....。
「「わかったポン(ポッポ)」」
(アンポコ、壁際に生存者がいるわ)
(他にも、今見てる場所の反対方向の場所では、騎士達が寄せ集まって総攻撃を掛けていたみたいよ)
おっと!!脳裏に直接言葉が届いた。
この念話は、マリティカ様から、直接送られてきた思念波だね。
私との回線が復旧したから、さっそくそれを使って私に注意を払うように呼びかけてきたんだろう。
その思念波は、私の脳裏にその場の映像と一緒に送られてきたから、その方向に視線を向けてみる。
「ありゃっ....風紀委員長ちゃん、発見!!」
風紀委員長のルリ長さんだ!!
「流石は、アンポコちゃんの因縁の相手だポン」
「こんなところにまで、風紀委員のお仕事をする為に出張るなんて、信じられないポン」
「わたし達を捕まえにきたかもポン」
「流石にそこまで恨まれてないと思うよ。嫌、思いたい……かな」
なんか、今にも死にそうな顔をしてるね.....て言うか、なんでこんなダンジョンにいるんだろう。
直ぐに傍にいって救出してあげたいけど、今の私は、アンポンタンのアンポコ。
勝手な行動をとると、アンポコの身許がすぐに露呈してしまう。
(折角だから、登場の演出をしてみて、反応を見てみたらどうかしら?)
「それがいいポン」
「そうねポッポ。折角みんなで案を持ち寄って完成させた振り付けも用意したんだし、人前でするには初めてだけらちょっと抵抗感はあるけど、人数も少ないからお披露目するには、今がうってつけかもしれないポッポ」
はー、あれをするのか。
超恥ずかしいけど、ここまで来たら、もうやけくそだ!
私は、自分でもどうかと思う振り付けをしながら、アンポコの役になりきろうとする。
そう、わたしはアンポコ、わたしはアンポコ、わたしはアンポコ。
正義の使者、正義戦隊1号のアンポコよ。
「正義と慈愛と水の女神──マリティカ様の使徒として....」
「この世の安全保障を担う役目を果たす為、この世界に降臨した」
私は、可愛らしいポーズを次々に決めていく。
「キラキラリーンで、ズバッと解決!!」
「正義戦隊1号──アンポコ!!」
ここで、最後の純情悩殺ポーズを決めながら、私のソロの最後のセリフを叫ぶ。
「今から正義を執行するんだポン」
「正義戦隊2号──ポンポコ!!」
「みんな、私達が解決するポッポ」
「正義戦隊3号──タンポポ!!」
「我ら、正義戦隊アンポンタン、只今参上!!」
最後に私達全員の声がはもって、この空間に響き渡る。
でも、誰からの拍手も賞賛もなかった。
みんな女神の神威にさらされて、動けないから仕方がない。
(何処となくぎこちないけど、初めての演技だから仕様がないわね。まあ、悪くはなかったわよ)
マリティカ様から思念話で総評を貰えたけど、全然嬉しくない。思念波から笑いが漏れてるもん。
「次は、もっと自然になるように練習しとくポン」
神水使いですが、錬金術師として成り上がりたい 黒いきつね @happyfsky
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