1-2

幼い頃から絵心は無かった。

見たままに、見たものを描いても、見たものと結び付かない全体のバランスが崩れた絵。


自然に、次第に、絵は描かなくなったが、しかし。

瞼を閉じれば見える人は日毎に違って、顔の無い像であっても解る個性に満ち満ちていた。


ある時、粘土に触れた。

滑らかな手触りに、夢中になって手で形を与える。

我を忘れて夜通し手指を使い、翌朝の手元には遊ぶ顔の無い子供の像。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢の惑い噺 山際タカネ @Leraye

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ