夢の惑い噺

山際タカネ

初日 顔の無い像

1-1

私はまた、瞼を閉じる。

今日も真っ暗な視界に、昨日とは違う像。

ゆったりとした衣装と佇まい、腰を曲げ、杖突く姿は老人だろうか。


像のままに粘土を捏ね、記憶した似姿を模って行く。

腰の曲がり方、杖の節くれ立った質感、握り込む手。

ディティールには妥協せず、力無く撫でた肩や、細い首まで拘って作り込んで。


「また今日も見えない。」


今日もまた、顔の無い像が増える。

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