第215話

 ……この尊すぎる濃い血を、最愛なる妻が一族がかしずく、天が必要に応じて誕生させる、大地の神が統べる大地に還すは一興だ……惜しげも無く体内の全てを、かの大神に捧げよう。政の先はもはや伊織に託してある。御父君様と御父君様が信頼した関白とで見据えた、それは驚く程の改革だが、あの伊織ならどうにかやり遂げるだろう。仮令その全ては無理だとしても、最愛なる妻が力を貸してくれる。そして伝説のお妃様と、伝説の御親王様が……一度も愛してはやれなかった我が皇子の、高御座まで御守りくださるから、を摂政とし、義兄となった朱明は不思議な力で伊織を支えて行くだろう。

 次の天子は………伊織がいいようにするだろう……どちらを選んだ処で、だ。直ぐに天が決めた天子とげ替えられる……




 今上帝は暫くの間、深い深い眠りにつかれた。

 余りに深い眠りについたので、それは尊きお方の呼び声さえ、気がつかぬ程だった。今上帝は尊過ぎるお方のお声で、その重い瞼を再び御開けになられた。


……何と思い切った事を致す者よ……


 その声のする方に、御視線を御向けになられる以前から、眩しい程の光りに、今上帝は瞼を開けてはおられぬ御様子だ。


……実にそなたには難儀をかけるが、が言い出すと是非も無いのだ。は実に愛らしいものであるが、いかんせん私の事となると、何一つと譲る事を知らぬ……


 尊過ぎるお方はそう言われると、ほぅ〜、と大きな溜め息をお吐きになられる。

 そのご様子がとても温かく穏やかで、ただただ御優しき御姿を醸し出されておられる。


……実に私はそなたが不憫でならぬ。は大青龍を抱ける程の者ゆえ、多少の事はこなせると申して譲らぬ。確かに青龍が好む……それも桁外れなる大物であるゆえ、それ程の者ならばの期待は外れまいが……何と申してもと言うて聞かぬ……実に困惑しきりである……


 と、それはお困りのご様子を、目いっぱい醸し出される。


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