第193話

「皇后様、この国は早婚なので、女人はそれは早く結婚を致すのでございます。主上様ならば、まだまだお若い身、と申せますが女人の妹はもはやとうが立っております」


「なんと?そうなのか?」


 皇后様はこの国のの事情に、物凄く関心を持たれた御様子で身を乗り出された。


「今上帝は私が未だ嘴の黄色い雛と申して、なかなか手出しをしてくれなんだが……早く事を成すが普通なのか?さてはやはり私の痩躯を気に病んでおったのであるな……」


 皇后様のイラっとした感じが受け取れて、御簾越しであるが失敗った感がハンパ無い朱明は慌てる。

 何といっても主上の事となると、いろいろとこだわりを持たれるお方である……と言えば聞こえがいいが、とにかく独占欲が御強く嫉妬深くあられる。こんな事で誤解など招いたあかつきには、主上に申し訳が立たない。


「あー皇后様。我が国の童女は、裳着を致し初めて成人と認められ、相手を得られるのでございます」


「裳着?」


「裳を付ける事で、儀式がございます。その家の事情やその女人の、その……状態により異なります故、歳では決まりませぬ。故に皇后様は瑞獣でございます故、その……お躰の変化が、高々の人間には解りませぬ故……主上様も、おぼし悩まれたのでございましょう……」


 朱明は苦し紛れではあるが、なかなか上手い事を言った感がある。

 それを聞いた瑞獣皇后は、真剣に考える素振で言った。


「……確かに……我らのなど、聞いた事が無い……だがは着けて参ったであろう?しかしながら、お母君様は、嘴の黄色い雛と申されてであった……」


 ……つまりはどっちだ……


 御簾越しの二人が同時に、考える素振りを作った。


「ゆえに……故に、それは御大事に思し召しの皇后様ゆえ、主上様はそれはそれは御苦悩なされたと存じます……」


 多少声などひっくり返して、弁明を重ねた。


「……さようか?さほどに今上帝は、私を大事に思し召しか?」


 皇后様の御機嫌が、みるみる良くなって一安心の朱明である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る