第115話

 伝説の聖天子の存在が凄過ぎて、確かに次の天子……つまり青龍を抱きし天子については、伝説になる様な記述は存在しないものの、父の教えを守って国と民の為に、その青龍の力をもって平安なる治世を護った。と記されているから、それなりの聖天子ではあられたと思われるし、幾人かの女御も御いでであられた様だが、やはり血は争えないというか……中宮とは非常に御仲睦まじく、二人の親王様と二人の内親王様を儲けられ、嫡男御親王様東宮冊立、今上帝様御崩御後高御座たかみくらにおつきになられ……と記されているから、中宮とはかなり良好な関係が伺える……という事は、そんなに恐ろしいお方ではなかったと推測される。

 つまり今現在いまの今上帝の醸し出す、あの恐ろし過ぎるは〝怒り〟という事だ。

 朱明はずっと、その事を考えている。

 つまりあの恐ろしさは、今の今上帝の御憤りが、それ程までに凄いという事だ。

 ならば皇后様が御戻りになられたならば、以前のあのお方に戻られるのだろうか?

 朱明と伊織は決して瑞獣様が、亡くなられたとは思っていないが、現在この現世……今上帝様のお傍におられない事だけは事実だから、くどい様だがその今上帝の御憤りが半端ないのは確かだ。だとしたら、お傍らに御戻りになられれば、今上帝は御憤りを御鎮めになられて、あの穏和なお方に御戻り頂けるのだろうか?

 朱明は今上帝の、御変わり様に驚きしかない。

 確かに青龍を抱いた人間には、近寄り難かったり、威圧的で怖いイメージを与えるきらいはある様だが、あれ程に恐怖を与えるものではないと思われる。つまりあの状態は異常だという事だ。

 ……やまりそれ程の御憤りという事だ……

 だが全てを見透かしている様に、思えるは?あれが青龍の〝力〟なのか……。

 そして何よりも、これ程迄の大物はこの中津國には、存在した事が無いから、本当の処が判然としないのだ。

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