第114話
今上帝が悪意によって眠らされ、最愛なる皇后様……瑞獣様を害され、そして青龍の力によって御目覚めとなられたが、その今上帝は以前の今上帝とは、まるで別人の様に御なりになられていた。
それは御愛おしみの皇后様を失われての、御憤りの所為だとは理解している。それ程迄に御悲しみは、計り知れないものなのだと解っている。
ならば原来青龍とは、どういう物なのだろう……
青龍を、知らない朱明は思う。
確かに皇家に青龍を抱けし天子を切望したのは、遥か百年・二百年程前の事で、待望の青龍を抱けし天子が誕生して、権力の在り処が戻ってからは、力を持つ一族が現れ様が、権力は天子たる代々の今上帝より転がって行く事はなく、その今上帝を皇后や后妃又は、その御子様を使って意のままとしようとする事は適わなかった。
だからもはや皇家どころか、この国で青龍を抱きし天子の存在事態が、重要とされる事はなくなっていた。
だから朱明達若い者達だけではない者達すら、青龍を抱きし天子の話しは、夢想の世界のものと化して、ただの伝説となっている。
つまり高貴な天孫の血を引く天子だから、青龍を抱いていると言われても、ただあり得るもの、という感覚だ。全く現実味がない存在だった。
……だが実際朱明が、大青龍と云われている青龍を抱きし今上帝に、再び拝した時のあの恐怖と威圧感は半端ではなくて、恐ろし過ぎて震えが止まらない程であった。
……青龍を抱きし天子は、代々どうだったのたろうか?
二百年の間に、青龍を抱きし天子は誕生している。
かの聖天子の御子様に、摂政が抱きし青龍を処替えさせて、権力の在り処かを正した話しは有名だから、その御子様は青龍を抱きし天子であった筈だ。
そして処替えさせて抱いたのだから、最初は抱いてはいなかった。
つまり天子が龍を抱く前と後が存在するわけだが、その変化で宮中の者達から恐れ慄かれたという記述は、どの文献を読んでも残されていない。
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