第67話
「朱明様、よもや不遜なる事を、お思いではありますまいな?」
……えっ?……
朱明はそれは神妙な面持ちの、孤銀の言葉にハッとする。
……ふ、不遜になるのか?大鬼が、神では無いと否定する事って?……
朱明の思考が空回りする。
だって神は神で鬼は鬼で、神=鬼じゃないだろ?位置的には対比する物で、交じり合わない物で……いやいや待てよ、神と崇める所も存在するし、鬼神ともいうか?あー!なんて中津國はめんどくさいんだろー……。
朱明が面倒になって、思考を停止した。鬼が神でも、朱明にはどうでもいい事だ。いやいや、だったら今まで果敢に、調伏挑戦していた自分って何?神は調伏できないだろう?
……あ?……
試行錯誤した朱明は、閃きを持って大鬼丸と孤銀を見つめた。
……つまり、退治はできないのか?抑え込んだと思っても、服従させたと思っても、封印したと思っても、今生から姿を消すだけで、不思議の世界には存在する……大鬼丸達が地下に潜り島に潜むって、そういう事?……
「つまりつまり……」
朱明は大鬼丸を見つめて、再び動きを停止する。
……ならば魚精王の金鱗様は、何故あれ程慌てられた?瑞獣様は、不思議の世界にも存在しないという事か?……
「……孤銀よ。そなたでも死はあるのか?」
朱明は、神だという孤銀に言った。
伊織は、絶対瑞獣様は戻って来ると言った。朱明もそう信じている。
この中津國で強力な力を持つ、大神のお気に入りのお妃様の愛娘の瑞獣様だ、そして大神ご寵愛の兄を持つ……そんなお方が死ぬはずはない。死ぬはずはないが、金鱗はあの可愛らしい瑞獣様の気を、感じる事ができないと、それは悲痛な表情を浮かべて言った。
そしてあの碧い羽根は、鸞と化した証し……。
孤銀は、真剣な朱明の表情を直視した。
そして重々しく頷いた。
「はい。我らとて死はございます」
朱明はそれを聞いた瞬間に、問うた事を後悔した。
心の奥底で朱明は、瑞獣碧雅は何処かに生きていると、たかを括っていたからだ。
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