第12話

「愚鈍なる陰陽師よ……」


 雷が落とされた対屋たいのやから庭先に身を現した碧雅は、メラメラと蒼火を立ち込めている。その姿は美しいというよりも、神秘的で幻想的だ。

 とても人間達が考える、物の怪化け物のでは無い。


「他の国で妖狐が皇帝をそそのかして、我が子をその地位に付け様と致し、その正体を陰陽師が見抜き、真言を唱えて変化を解かれ妖狐となって、宮中を追われた話しは有名だが、幾度も言うが九尾も神獣である。妖狐も眷属神である。……確かに、が神で無く化け物であるならば、同じ神獣である私も化け物である……だがそなた達は、どうして知ろうとせぬのだ?なのだ、高々のそなた達とは違うのだ……高々のそなた達が、如何様と致せる物では無い」


 そう言うと碧雅は、陰陽師の唱える術に苦しげに顔容を歪ませた。

 そして大きく身を反り返えらせると、蒼炎を燃え盛らせ宙に浮かんだ。

 陰陽師以外のもの達が恐れ慄く中、天に昇って碧く美しい鳥の姿と化し、その両腕を見事に輝く翼と変えた。

 その姿は鳳凰に、似て似つかぬ姿であった。

 碧と翠に輝く翼は大きく美しいが、鳳凰程の大きさは無い。

 だが赤々と燃え盛る鳳凰と同じく、蒼々と蒼炎が燃え盛る全身を覆って陰陽師の身に閃光を放った。

 術を唱えながら陰陽師は、その閃光を避ける。

 鋭い閃光は逃げ惑う侍達を、突き抜いていくが、陰陽師の唱える術に苦しむ碧雅は、どうしても陰陽師に一撃を与えられ無い。


「……そなたを雇いしは誰ぞ?他国の話しを模し、私を陥れたは誰ぞ?」


「それを聞いて如何致す?」


 陰陽師がほくそ笑んだ。


「!!!そなた……では無いのか?その術は……」


 碧雅が大きく苦痛を露わにした。


「他国で妖狐を仕留めた矢の片方を、お前に向けて放ったのさ……」


「誰ぞ?その様な事を致せるは……まさか……???……」


 美しき瑞獣鸞ずいじゅうらん碧雅は、目に見えぬ呪矢を受けて天空を回転した。

 そのまま落ち行く先に、見窄みすぼらしい牛車が宮中に向けて走り行くのを認めた。

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