ユリ

変太郎

無垢な想い

 わたしは、親友のゆりちゃんのことが好きだ。電話で恋愛相談されているうちに、わたしが好きになってしまった。


 いつもクールで、頭よくて、でも実は恋愛になるとすごく乙女で。そんな彼女が好きで、裏の顔を知っているのはわたしだけなんじゃないかって、そんな気がしてた。

今日は6月25日。ゆりちゃんの誕生日。わたしは今日、想いを伝えようと思う。女の子同士の恋なんて、そう簡単には叶わない。それでも……。

「けじめなんだ……」

 叶わなくても傷つかないように呟く。


         ☔️


 放課後。午後5時を少し過ぎたくらい。

 いつもどおり、ゆりちゃんと一緒に帰路につく。校舎の玄関を出て。

「今朝、風で傘壊れちゃった」

笑って嘘を言ってみる。

「あたしの傘入る?」

「いいの?」

「当たり前じゃん。濡れちゃうでしょ」

 親友として当たり前。そういうことだと思う。確かに私たちは、お互いに特別だと思ってる。でもそうじゃない、別の意味で特別だと思われたい。


 1つの傘に2人で入って歩く。雨音が周りの音を遮断して、まるで2人だけの世界にいるみたいだ。


「あのさ」

「ん?」

「誕生日……おめでとう」

「ありがとう!」

「好きだよ、友だちとしてじゃなく」





「わたしもだよ」





え?



今なんて? ゆりちゃん好きな男の子いるんじゃ?



「架空の好きな人作って話さないと、あんたのこと好きって気持ち抑えられないんだもん」

 一瞬横目で見たゆりちゃんは、顔を赤くしていた。

 こんなことってあるんだね。

 


 雨ではない、別の液体が地面を濡らす。

 これは悲しみによるものではない。これから始まる幸せな日々の始まりを意味する、嬉しさからくる涙だ。






 

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ユリ 変太郎 @uchu

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