第2話 未知
電車から降りると、僕と同じような年齢の人がぞろぞろと降りてくる。
僕はその人ゴミに紛れて、1人で改札口を出た。
改札口を出るとそこには、ただ真っ直ぐの道が広がっていた。
果てしなく続く道、まるで未知の道だ。
ここから約2キロほど歩くと大学に着く。
いや治安悪すぎだろ。
もちろん改札口を出てからも1人で歩く。
前にはぺちゃくちゃ喋っている女子達がいて、後ろにはイチャイチャしているカップルがいた。
前も後ろも、夏の性欲全開の蝉たち負けず声が聞こえる。
その間に挟まれている僕はとても心苦しかった。
下を俯いてのっそりと歩く。
僕は正直なところ早くこんなところ抜けて大学に行きたいからのっそり歩いている場合では無いのだが、これは仕方がないことだ。
なぜなら前の女子達が異様に歩くのが遅いからだ。
そんなの抜かせばいいじゃんと思うかもしれない。
しかし、抜かして、もし前にいる女子達に僕の顔を見られ、醜く思われたら僕が苦痛で仕方がない。
それに抜かしたとしても入れる場所が無い。
道は全て大学生によって埋め尽くされている。
ふと、地面から鳴き声とともに蝉が見えた。
蝉は確か空を飛んだり、木に捕まっているはず、つまり、
その蝉は空を見上げひたすら腹を揺らしながら鳴いていた。
よく見ると羽が欠けている。
どうやら飛べないようだ。
世の中、人も蝉も飛べるやつだけが生き残れる。
飛べないやつは社会から批判され、恋愛対象にもされない。
まるで僕のようだ。
そういうやつは何を望んでいるか分かるか?
そう、こういうことだ。
僕は蝉を思いっきり足で踏み潰した。
僕は靴の底から蝉が潰れているのを感じた。
あんなにうるさく鳴いていたあの蝉も、もう鳴かなくなった。
それもそのはず、蝉は空へと逝ってしまった。
これであの蝉も楽になれただろう。
久々の人助けは良いものだ。
そう優越感に浸っていると、気づけば学校の門をくぐっていた。
学校に来て、僕はまず昼飯用の食券を買いに行くため、食堂前に来た。
ここにもたくさんの人が並んでいる。
順番が来て、適当にランチCを選んだ。
後から献立を見ると、洋食メニューのようでそこにはエビフライやフライドポテトに混じってトマトが入っていた。
トマト嫌いなんだよな〜
しかし財布の中にはもう100円くらいしか入っていない。
仕方なく今日はランチCを食べることにした。
食券を買い、教室へと向かう。
ドアを開け、人目を避けて、窓側の1番端っこに座った。
その窓に映った僕の顔は、朝見た時と全く同じのくまさんの着ぐるみを被っていた。
抜け殻のヌケガラ 凛陰 @ecoosme829
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