第2話 探索~第一ターミナル~
そんな会話が繰り広げられていた中、ターミナルの一角に、両替機を発見した者がいた。
この人は大層驚いた様子で班に報告を入れてきた。
なんでも、この地域では既に円は使われておらず、独自の通貨を導入しているらしい。
日本円がそのまま使えないのは不便だが、それでもまだその両替機が日本語で表記されているのだからまだましであろう。
これで独自の言語が用いられていたとしたら、ここでのコミュニケーションはほぼ不可能に近かっただろう。
首都圏として東京を支え続けていたという自負があったからだろうか。
もしそうだったとしたら、九州や四国だったらまた違う結果になっていたのかもしれない。
ふと、案内板を見てみると、俺も気になる場所を見つけた。
空港内にある本屋である。
『分断されたもう半分のニッポン』であるこの地域は、目新しいものがあるのではないか、と思ったのである。
料理本やノウハウ本、さらに小説もあるが、どれも本土の流行りとは微妙に違う。
それでもそこまで本土と乖離していないのは、さすが同じ民族といったところか。
そんななか、この書店で一番猛プッシュされていたのが、日本各地、世界各地のガイドブックであった。
2020年現在のガイドブックもあれば、海外のものを中心に、数年前のものしかないものも存在する。
この扱いの違いは、ただ人気のあるなしなのか、将又それ以外の理由か。
そもそも、世界から遮断されたはずの千葉で、何故ガイドブックが一番目立つところに並んでいるのかが謎である。
そんなことを考えていると、唐突に後ろから話しかけられた。
俺唐突に話しかけられすぎだろ。
半分辟易しながら振り返ると、そこには二人分のパンフレットを持ったマーリンこと、千代田真凛が立っていた。
「ねぇ、第二ターミナルのほうも見てみない?」
ご存じではない方に説明すると、この空港は、第一、第二、第三ターミナルと三つの旅客ターミナルが存在する。
現在俺たちはそのうちの第一ターミナルにいるのだが、ここから第二ターミナルまで移動してみようという提案だった。
それでか、彼女は気が利くことに三つすべてのターミナルのパンフレットを俺に渡してきてくれた。
「お、ありがと。 でも、いいのか? 同じ探索班と別のターミナルに移動すると、連絡が難しくなりそうだが」
「大丈夫、携帯電話も普通に使えるし、なんなら動画まで見れちゃうよ」
いつも見てるサイトじゃないけどね、と付け加える真凛。
そうか、いつも見ているあの人たちの動画が見られないのは流石に残念だな。
ただ、いつまでもそんな後悔ばかりしていても生き延びられないので、取り敢えず先に進むことだけを考えよう。
「わかった、第二ターミナル、行ってみますか」
「そうこなくっちゃ!」
この判断が正しかったかどうかはわからないが、一つだけ言えることがある。
これ、どうやって移動すればいいんだ…?
めっちゃ千葉(仮) 貝 @Hakoniwa_19
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。めっちゃ千葉(仮)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます