瓦解

麻城すず

瓦解

 きっと切っ掛けは些細なことに違いない。

 例えば髪を切ってみたり、携帯のストラップを変えてみたり。つけてるピアスを変えてみたり、あるいはマニキュアの色を明るめにしたり。

「男替えたんだ」

「まあね」

 そんな些細な変化に気付くくらいあたしのことを見てるなら、なんで離れていくのかな。

 いつも後をついて来ていた幼馴染みは、いつからかあたしと距離を置くようになった。

 それがとても悔しくて、他の男と付き合うようになった。だけど長続きする訳もない。告られて付き合って、相手好みの格好をして、そして何人と付き合ったっけ。

 いつまでこんなことを繰り返すつもりなの。好きでもない人にちやほやされて、寂しさが紛れるのは最初だけ。

 気付けば彼と比べていて、結局別れる羽目になるのだ。

「そのピアス、彼から?」

「そうだよ」

「深い青は似合わないよ、お前には」

 無神経なこと言わないで。あんたには関係ないことじゃない。

 いつもならきっと、そう言ってた。

 だけど。

「じゃああんたが選んでよ」

 つい口にしたその一言。

「また男替えるつもりなの?」

 彼にはちゃんと通じてた。

 少し驚いた後に見せた嬉しそうに笑う顔、それがあたしも嬉しくて。

 こんな些細な言葉一つで今までの関係は瓦解する。まるで壊れることを待ち望んでいたように。

「好きだったよ、ずっと」

 瓦解した関係を構築し直し、あたし達は新たな場所へ向かうのだ。


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瓦解 麻城すず @suzuasa

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