最終決戦が終わった後にわけのわからない事を言い出す人間
仲仁へび(旧:離久)
01
最後の戦いが終わった。
目の前で奴が塵と化していく。
僕たちはとうとうあの強大な敵を倒すことができたのだ。
これで僕たちは世界を救った英雄だ!
力を合わせて、苦難を乗り越えてきたかいがある。
これで、世界に平和がもたらされたのだ。
人々を襲っていた悪魔はもう現れない。
皆、大切な人達と平和に暮らすことができる。
「何でだよっ!」
でも、そんな中で空気を引き裂くような悲鳴があがる。
仲間の一人。彼女だけが浮かない顔をしていた。
「アメリア? どうしたんだい?」
「何でここにあいつらがいねぇんだよっ!」
「?」
彼女は誰のことを言っているのだろう。
ここに来るまでに倒れた一般兵士達のこと?
それとも、悪魔の犠牲になった一般市民たちのことだろうか。
だが、彼女の瞳には深い悲しみの色があった。
「いるはずなんだよ。ここにはあいつらがっ!」
「アメリア、落ち着いて。一体どうしたんだい?」
彼女は、きっと疲れてるのだ。
最期の敵と戦うまでも、戦闘があった。
かなりの激戦だったから、休ませてやらなければならない。
けれど、アメリアはこちらの伸ばした手を振り払った。
「気色悪い喋り方をするおっさんも、頑張り屋のシェフィも、機械好きのタバサも、なんだかんだいい奴だったお前の弟のヒューズも」
彼女は一体何を言っているのだろう。
そんな人達は知らないし、僕に弟はいないはずだ。
「何で、忘れてんだよ。何で忘れちまえるんだよ。あんなに仲がよかったじゃねぇか。お前達の絆はそんなもんだったんかよ」
「アメリア。もういい。休もう」
「よくねーよ。こんなの納得できるかっ!」
アメリアはどこから手に入れたのは分からない秘宝を手にして、叫んだ。
「やり直す。また最初から戦ってやる。コソ泥のザーフィスとも、モンスターも悪魔とも、お前とも、ついさっきたたかった最後の敵とも」
そして彼女は最後まで、訳の分からないことを言うまま、その剣を自分に突き刺して死んだ。
「アメリア!」
分からない。
彼女は一体、何を考えてるんだ。
ギリギリの視線をくぐりぬけて頭がおかしくなった?
そんはなずはない。
危機一髪で潜り抜けてきた戦闘なら、今までもたくさんあったのに。
一体何が彼女を狂わせてしまったのだろう。
慌てて、手当てを受けさせるが、どんな病気でも直してきた者達が全て白旗をあげた。
彼女の命は戻らなかった。
傷はすぐになおったのに。
最終決戦が終わった後にわけのわからない事を言い出す人間 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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