死んで異世界召喚された先で想い人が人魚として悪徳貴族に監禁されて……るのか？？……どういう状況？

プロローグ

人口約50人、現代社会から隔離されたかのような南の小島、そんな所でのびのびと育った。

遊び場は海しかなく、毎日毎日海海海。

でもつまらないなんて思った事は1度も無かった。

いつもスイと一緒だったからだ。

スイは正直変わってる、所謂不思議っ子だ笑

普段ほとんど口を聞かないのに海に関してはやたら語り出すし、毎日毎食(給食以外)鯖料理だし、海が荒れて入れない日はこの世の終わりかのように絶望した顔で部屋に籠るし、学校の授業中に突然『海が呼んでる』と立ち上がり窓から逃走なんてしょっちゅうだ。

でもそんなスイが大好きだった。

そんな毎日でよかったのに……何となくいつもと違うことがしたいという訳の分からない衝動にかられ、嫌がるスイを無理矢理山へと連れて来てしまった。

きっと罰が当たったんだ。

無理矢理引っ張られて、どんどん山の奥に連れていかれる恐怖に耐えられなくなったスイが手を振りほどいた弾みでバランスが崩れ、倒れないようにと踏み出した足がズルッと滑った。

運が悪いことにバランスを崩したのが崖際だったのだ。

そこからは周りがスローモーションで動く。

悲痛に歪められた顔で必死に手を伸ばすスイがゆっくりと遠ざかっていく。

あぁ、これ死んだ……スイごめん、あんなに嫌がってたのに無理矢理連れてきたせいで……そんな顔すんなよ、おまえのせいじゃないから……最後に見るスイの顔があんな悲痛な顔なんて……

全てを後悔しながら死を覚悟し、そっと目を閉じ、衝撃と激痛を待っていたがいつまでたってもそれらが襲ってこない。

流石にスローすぎるだろと恐る恐る目を開けるとそこに映ったのは荘厳という言葉がピッタリの見たこともない空間と青く浮かぶ魔法陣の上にいる自分の姿だった。