ごめん・ありがとう・愛してる、ずっと……
メグミがヒロのインタビュー記事を読んでから半月以上が経った。
相変わらずハヤテはメグミに、今後の事について何も話さない。
ただ、時々ひどく疲れた様子で電話をかけてきては『メグミに会いたい』と言った。
でも『会いたい』と言うだけで、少し前までのように車で会いに来たりはしなくなった。
会いに来る事もできないほど疲れているのかとも思ったが、電話もメールも、どんどん言葉が少なくなっていくハヤテに、メグミは言い知れぬ不安を覚えた。
卒業公演の1週間前。
ハヤテとメグミは、久し振りに会う約束をしている。
卒業公演を間近に控えているのに、珍しくハヤテの方から『会おう』と言ってきた事に、メグミは驚いていた。
メグミのバイトが終わる頃に書店まで迎えに来たハヤテは、メグミが帰り支度を終えるまで店内で新刊の小説や雑誌などを見て待っていた。
それから二人で書店を出て、駅前のレストランで一緒に夕食を食べた。
食事を終えてコーヒーを飲んでいる時、ハヤテがポツリと言った。
「卒業公演……来てくれる?」
突然のハヤテの一言にメグミは耳を疑った。
「えっ?行ってもいいの?」
「来て欲しい。メグミのために弾くから」
「うん……ありがとう……」
いつもとどこか違うハヤテに戸惑いながら、メグミはよぎる不安を消し去ろうと、少し無理をして笑って見せた。
レストランを出ると、ハヤテはメグミの手を取り、しっかりと指を絡めて歩いた。
「この後、うち来る?」
メグミが尋ねると、ハヤテは首を横に振った。
「練習しないといけないから、メグミを家まで送ったら帰るよ」
「うん、そっか……。もうすぐだもんね。でも会えると思ってなかったから、会えてすごく嬉しかった」
「ごめんな……」
少し無理をしているのか寂しげなメグミの笑顔を見て、ハヤテの胸はしめつけられるように痛んだ。
「でも少しだけ……寄り道してもいい?」
「いいけど……どうしたの?」
「もう少し、こうして歩きたいなと思って。メグミが高校生の時、よくこうして学校から歩いて帰ったな」
「ハヤテが合唱部の伴奏やってた時だね。まだ1年くらいしか経ってないのに、なんか懐かしい」
「うん。そっか……まだたったの1年か……」
それからしばらく、黙ったまま手を繋いで、月明かりの下を歩いた。
大きな池のある公園の散歩コースを、池に映る月を見ながらゆっくりと歩く。
暦の上では春になったとは言え、時折冷たい風が吹き付け、メグミの長い髪を煽った。
「やっぱり夜はまだ寒いね」
「朧月夜にはまだ早かったな……」
ハヤテは繋いだ手をコートのポケットに入れ、空に浮かぶ月を見上げた。
「ハヤテ、どうしたの?」
「メグミとそんな話、したなぁと思って」
「朧月夜の事?たしか……ぼんやり霞んだ春の月の夜……だったよね」
「うん。よくできました」
ハヤテが笑うと、メグミも嬉しそうに笑った。
「春になったら一緒に見られるかな、朧月」
何気なく言ったメグミの一言に何も答える事ができなくて、ハヤテは立ち止まってメグミを抱きしめた。
「ハヤテ……?」
「少しだけ、このままでいさせて」
「……どうしたの?」
「ごめん……」
(オレは卑怯だ……)
ロンドンに行くと決めた事も、メグミを連れてはいけない事も、何も言い出せないまま時間だけが過ぎて行く。
メグミの顔を見ると決心が揺らぎそうで、会いたくてもできるだけ会うのを我慢してきた。
本当はできるだけ長く一緒にいたい。
もうすぐ別れを切り出すのに、今だけは何もかも忘れてそばにいたいと思う。
『春になったら……』
いつかメグミが呟いた言葉がハヤテの脳裏を掠めた。
春には、自分はもうここにはいない。
何も知らないメグミは、二人の時間がずっと続くと信じているはずだ。
いつかと立場が逆になって初めてハヤテは、好きだから少しでも長く一緒にいたくて、話を切り出せなかったメグミの気持ちが、痛いほどわかった。
(言わなかったんじゃない……。言えなかったんだ……)
ハヤテはメグミを強く抱きしめながら、できる事ならこのまま離したくないと、強く思った。
その後、卒業公演まで、ハヤテはメグミに一度も会わなかった。
卒業公演で弾く曲を練習していたハヤテが、突然弾くのをやめ、ため息をついて、違う曲を弾き始めた。
ロンドンに行くと決めた日から、何度となく弾き続けたその曲は、ハヤテが生まれて初めて作った曲だった。
ハヤテは、メグミへの想いを込めて作ったその曲を、卒業公演で弾く事にした。
メグミのために弾くピアノを、目の前で聴いてもらえるのは、きっとこれが最後だ。
約束も何も残せない代わりに、せめて、大切な想いを込めた曲をメグミに聴いてもらいたい。
ハヤテは、卒業公演が終わったら、今度こそ、ロンドンに行く事をメグミに打ち明けようと決意した。
卒業公演当日。
メグミは客席の前の方に座り、ハヤテの出番を待っていた。
他の生徒たちによる管楽器の演奏や合唱などのプログラムの最後に、司会者がハヤテを紹介した。
司会者が演奏曲の変更を伝える。
「澤口 颯天作曲、『Hazy moon night』」
タキシードを着たハヤテがステージに現れ、深々とお辞儀をした。
ハヤテはピアノの前に座ると、客席のメグミを見つめた後、目を閉じて深呼吸をした。
それから、ゆっくりと鍵盤に指を乗せ、ハヤテの長い指が優しい音色を奏で始めた。
メグミのために弾くと言っていたその曲は、とても優しく、それなのにどこか寂しげで、切なくメグミの胸に響いた。
卒業公演が無事に終わり、メグミはハヤテに言われた通り、先に自分の家に帰ってハヤテが来るのを待っていた。
すっかり暗くなった頃、ハヤテから【駅前で食事をしよう】とメールが届き、メグミは待ち合わせの時間になると駅前に向かった。
メグミが着く頃にはハヤテは既にそこにいて、一緒にレストランで食事をした後、メグミの部屋に向かった。
部屋に着くと、メグミは二人分のコーヒーを入れ、ハヤテの隣に座って、いつものように、ハヤテの肩に頬をすり寄せた。
ハヤテはメグミの肩を抱き寄せ、優しく頭を撫でた。
「今日のハヤテの曲……すごく素敵だったよ」
「うん……ありがとう」
「また聴かせてね」
メグミが笑ってハヤテを見上げると、ハヤテはそれには答えず、唇をギュッとかみしめた。
「卒業式が済んだら……ロンドンに行く」
苦しげに声を絞り出すハヤテの顔を、メグミはジッと見つめた。
「うん……。やっぱり行くんだね……。前に雑誌で見たから……もしかしたらって思ってた」
「ごめんな……。ずっと言い出せなかった」
黙り込んでしまったハヤテを見つめて、メグミはそっと唇を重ねた。
「何も言ってくれないの?ついて来いとか、待ってろとか、言ってくれないの?」
「言えないよ……。先の事なんか全然わからないのに、そんな無責任な事……」
「ハヤテがついて来いって言うなら、私は行くよ?待ってろって言うなら、私は……」
「ごめん……連れては行けない……。でも、待ってて欲しいなんて言えない……」
メグミの目に涙が溢れて頬を伝った。
ハヤテはメグミの目に溢れる涙を長い指で拭いながら、静かに話を続けた。
「初めて自分がやりたいって思う事を見つけたんだ。でも……メグミに寂しい思いさせてるって思ったら……オレはそれを言い訳にして、メグミに会いたくて、途中で投げ出して帰って来るかも知れない……。それだけはしたくない……」
「じゃあ……私はどうなるの?」
「会いたくても『会いたい』って言えないようなつらい恋は、メグミにはもうさせたくない……。今だってなかなか会えなくて寂しい思いさせてるのに、何年もメグミを待たせるなんて……オレにはできないよ……。だから、もう……終わりにしよう……」
ハヤテは、何よりもつらい言葉を口にした。
メグミの目から溢れたいくつもの涙が頬を濡らす。
「待ってよ……。なんで一人で決めちゃうの?私の事、もう好きじゃないの?」
「好きだよ……めちゃくちゃ好きだよ……」
「だったら……」
「好きだから……守れるかどうかもわからないような不確かな約束で、メグミを縛り付ける事はできない……」
ハヤテが唇をかみしめると、メグミはハヤテの胸で声をあげて泣いた。
「いやだよ……。このまま別れるなんて……。置いて行かないで……私を一人にしないで……。ハヤテが好きなの……別れたくない……」
「ごめん……。ホントにごめんな……」
ハヤテは泣きじゃくるメグミを、強く抱きしめた。
「待ってるから……ちゃんと待ってるから……別れるなんて言わないでよ……」
「オレの事なんて待たなくていいから……寂しいとか会いたいって素直に言える人見つけて……幸せになって……」
「ハヤテのバカ!!私はハヤテがいないと幸せになんてなれないよ!ハヤテじゃなきゃ……他の人じゃダメなの……。私にはハヤテの代わりなんていないよ……」
「ごめんな……幸せにしてあげられなくて……」
しばらくの間、二人は何も言えないまま、ただ黙って抱きしめ合っていた。
ハヤテの温かい胸に抱きしめられながら、メグミは涙を止める事もできないで泣き続けた。
お互いにどうしようもないくらい好きなのに、ハヤテはメグミを好きだからこそ、別れを選んだ。
どんなに引き留めてもハヤテの決意が変わらない事は、メグミにはわかっていた。
好きなのに、どうにもならない恋もある。
ついて行く事も、待つ事も許されない。
それでも、想う事くらいは許されるだろうか?
ハヤテへの想いはこのままで、いつかハヤテが迎えに来てくれる日を待っていたいとメグミは思った。
夜明け前、ハヤテは泣き疲れて眠ったメグミの髪を愛しそうに撫で、そっと頬に口付けて、小さく「愛してる」と呟いた。
起こさないようにメグミをそっと寝かせ、メグミからもらった腕時計を外し、テーブルの上に置いて、ハヤテはメグミの部屋を後にした。
初めて恋をして、つらい別れを経験した。
再び会えた時には『もう二度と離さない』と思いながら握ったはずのメグミの手を、自分の夢のために自ら離してしまった。
心の中で、何度も『ごめん』と『愛してる』の言葉をくりかえしながら、ハヤテはメグミの涙で濡れたシャツの胸元をギュッと握りしめ、涙でぼやけた夜明け前の街を歩いた。
(結局、さよならも言えなかったな……)
卒業公演の翌日、ハヤテは4年間通った音大を首席で卒業した。
そしてその二日後には、ロンドンに発つため空港にいた。
一刻も早くここを離れないとまた決心が揺らぎそうで、ハヤテは最初に予定していた4月を待たずに日本を発つ事にしたのだ。
幼なじみで唯一の親友のショウタには、ロンドンにいるヒロの元で、自分のやりたい音楽と仲間を見つけて、上を目指したいと話した。
見送りはいいと断ったのに、ショウタは「空港まで送る」と言って、車で空港まで送ってくれた。
空港のロビーで手続きを済ませたハヤテは、ショウタとベンチに並んで座っていた。
「頑張れよ」
「うん」
ショウタはいつになく言葉少なく、ポンポンとハヤテの肩を叩いた。
搭乗案内のアナウンスが流れ始めた。
「じゃあ……そろそろ行くよ」
「おう。元気でな」
ハヤテが荷物を手に立ち上がると、向こうの方からメグミの手を引いて走ってくるソウタの姿が見えた。
ソウタは息を切らせて、ハヤテを睨み付ける。
「ハヤくん、オレは怒ってるよ。ハヤくんの夢は応援したいけど、そのために川嶋を捨てるなんて勝手すぎる」
「うん、わかってる……」
「川嶋も言いたい事あるんだろ?ハッキリ言ってやれ!!」
ソウタはメグミの背中をポンと押して、ハヤテの前に立たせると、ショウタと一緒にその場所から離れた。
「結局ハヤテは、私を捨てて行くんだね。私、ハヤテにフラれるの2回目だよ。ホントにひどいよね……」
メグミがうつむいたまま呟いた。
「ごめん……」
「好きだから一緒にいるって……絶対離さないって言ったくせに……。運命の相手だなんて……ハヤテの嘘つき……。大嫌い……」
「うん……ごめん……」
ハヤテが申し訳なさそうに謝ると、メグミがハヤテの手に何かを握らせた。
それは、あの夜ハヤテがメグミの家に置いてきた腕時計だった。
「こんなの……置いて行かれたって迷惑だよ……。私が持ってたって仕方ないのに……。要らないなら、ハヤテが捨てて」
メグミはうつむいたままで声を絞り出す。
「大嫌い……もう二度と……顔も見たくない……」
そう呟くと、メグミはハヤテに背を向けた。
ハヤテはメグミから受け取った腕時計を握りしめ、その後ろ姿に「ありがとう」と小さく呟いた。
メグミは本当は「行かないで」と言いたかったのだと、ハヤテは気付いていた。
メグミが本当の気持ちと逆の事を言う時、目をそらして合わせないようにする癖を、ハヤテは知っている。
これが今のメグミにとって精一杯の、ハヤテへの「いってらっしゃい」と「愛してる」なのだとハヤテは思った。
一緒に時を刻む事はもうできないと、メグミに返すつもりで置いてきた腕時計をつけて、ハヤテは搭乗口へと向かった。
搭乗口でチェックを終えて少し進んだ所で、ハヤテは振り返り、ショウタとソウタに手を振った。
その時、柱の陰に身を潜めるようにして涙を流しているメグミの姿を見つけた。
(前にもあったな……こんな事……)
メグミとの思い出がハヤテの脳裏に蘇る。
初めての恋に身を焦がした、メグミとの甘い日々。
砂糖菓子のように甘くて優しいメグミの言葉。
寂しがり屋で甘えん坊なメグミのすべてが愛しくて、ずっと一緒にいたいと思っていた。
でも、もう戻る事はできない。
自分の夢のために離してしまったメグミの手の温もりを大切に胸にしまって、ハヤテはロンドンへと旅立った。
ロンドンに渡ったハヤテは、ヒロが日本で見つけて連れてきたと言う、3人の若いミュージシャンと出会った。
身長が188センチもあるギタリストの
高校を中退してロンドンに来たらしく、もうすぐ19歳になるらしい。
ベーシストの
21歳の元美容師で、元ヤン風の見た目より性格が穏やかで面倒見が良い。
ドラマーの
同級生のリュウトとは中学からの親友で、国立大を中退してまでヒロについてきたらしい。
今まで積極的に友達を作った事のなかったハヤテは、最初のうちは戸惑う事もあったが、同じシェアハウスで生活を共にしているうちにそれぞれの良さも見えてきた。
一緒に食事をしたり、時には酒を飲んだりもして、音楽以外の話もするようになった。
みんないろんな物を背負って、それぞれの覚悟を胸にここに来たらしい。
性格も経歴もバラバラな4人だったが、ハヤテは不思議とうまくやっていけそうな気がした。
ハヤテがメグミと別れ、ロンドンに渡ってから1か月が過ぎた。
その日の仕事を終えたハヤテは、いつものようにユウ、リュウト、トモキと一緒に、賑やかにテーブルを囲んでいた。
ユウは未成年なので酒は飲めないが、料理が得意で、みんなで食事をする時は、よく夕食や酒のツマミを作ってくれる。
その日もユウの作った料理がテーブルに並んでいた。
「ユウは料理得意だよな。好きなの?」
ハヤテが料理を口に運びながら尋ねると、ユウは首を横に振った。
「別に好きじゃないし得意でもないけど……できるヤツがオレしかいないから、仕方なくやるだけ。一人だと面倒だからやらないよ」
「ふーん……。たしかにオレは料理できないし……」
「オレも料理はしねぇな」
「オレはバイトでキッチンにいたけど、そこのマニュアル通りのメニューしか作った事ないから、普通の料理はできない」
リュウトとトモキがハヤテに同意すると、ユウはため息をついた。
「だろ?じゃあみんなは、何か得意な事ある?」
ユウの質問に、リュウトが得意気に答える。
「オレは元美容師」
「オレはユウの手伝いくらいならできる。炒めるとか、炒めるとか、炒めるとか」
トモキの言葉に、ユウが苦笑いする。
「炒めるばっかじゃん!!で、ハヤテは?」
「オレは……ピアノくらいしか取り柄がない」
ハヤテが答えると、ユウは首を横に振った。
「取り柄がないって、大袈裟だなぁ……。まぁいいや。じゃあ、これからはリュウに髪切ってもらって、トモに料理の手伝いしてもらって、寂しくなったらハヤテにピアノ弾いてもらう事にするよ」
「おぅ、いいぞ。いつでも切ってやる」
リュウトがビールを飲みながら答えると、ハヤテはリュウトの方を見た。
「オレもいい?」
「ああ。ハヤテ髪切って欲しいのか?」
「うん……イメチェンって言うか、見た目変えたい。オレ、地味だろ?」
リュウトがハヤテの顔を見て首をかしげた。
「そうか?まぁ、派手ではねぇけどな」
「なんて言うか……いろいろ吹っ切りたい」
「そこまで言うなら……オレの好きなようにするけど、文句ねぇな?」
ニヤリと笑ったリュウトに一抹の不安を覚え、ハヤテは慌てて付け加えた。
「うん。あっ、でもあんまり奇抜過ぎるのはちょっとアレだけど……」
「しゃあねぇな。わかったよ、ちゃんとハヤテに似合う範囲でやってやる」
「ありがとう、頼むよ」
そんな会話を交わした3日後。
ハヤテの髪はリュウトの手によって、見事な金髪に変わっていた。
ハヤテは初めて見る金髪の自分に驚いた後、大声をあげて笑った。
『ハヤテに派手さとか求めてない』と言っていたメグミが、今の自分の姿を見たらなんと言うだろう?
『似合わないよ』と笑うだろうか?
それとも、『金髪でもハヤテはハヤテでしょ』と言うだろうか?
離れてもメグミの事を一番に考えてしまう自分に苦笑いしながら、ハヤテは溢れそうになる涙を、メグミが好きだと言っていた長い指で拭った。
その夜、ハヤテは自分の部屋へ戻ると、窓を開けて空を見上げた。
空にはぼんやりと霞んだ月が浮かんでいる。
(ホントの朧月夜だな……)
メグミはどうしているだろう?
メグミも空に浮かぶ霞んだ月を見て、ハヤテと交わした会話を思い出したりするのだろうか?
(一緒に見たかったな……)
寂しくて、会いたくて、ここにメグミがいてくれたらと思う夜もある。
『もう二度と、顔も見たくない』と、メグミがどんな気持ちで言ったのか。
一度は自分がメグミに向かって吐き捨てて後悔した言葉を、メグミに言わせてしまった事を思うと、ハヤテの胸はしめつけられるように痛んだ。
メグミなりの精一杯の強がりと、深い愛情を改めて感じて込み上げた涙が、ハヤテの頬を濡らした。
今はもう隣にいない愛しいメグミを思い浮かべながら、ハヤテは霞んだ月を見上げる。
(待っててくれなんて言えないけど……せめて、ずっと好きでいてもいいかな、メグミ……)
見た目を変えてもすべてが吹っ切れるわけではないけれど、ハヤテはほんの少し、前に進めたような気がした。
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