恋愛脳のメカニズムを知らないで、やれツンデレだとかやれヤンデレだとかやれ幼馴染だとか騒ぐラノベ作家やエロゲー作家は、一度ホルモンの女王に謝った方が良い
第22話 そうなんだ。彼女も大原先生を疑っている
第22話 そうなんだ。彼女も大原先生を疑っている
そうなんだ。彼女も大原先生を疑っている。女の勘って鋭いからな。でも、大原先生が橘さんをいじめる動機がわからない。橘さんは俺の持った印象や、葵の話では絶対に人と争うことを好まない。むしろ人との関係を大事にするタイプの子のはずだ。
また、俺の脳内では、橘さんと、エストロゲンの可憐な制服少女が重なる。橘さんが人と争ったり、出し抜いたりするはずがない。
どうやら婚約破棄が原因かな。大原先生はそのストレスで、ホルモンバランスを崩したんだ。ギフトの証言もあるし、ホルモンはかなり攻撃的になっていたんだろう。エストロゲンの制服美妖精が口裂け女になるなんて……。ギフトが視覚化してなくてよかったよ。きっとおぞましい物に見えたにちがいない。
それにしてもその感情が橘さんにだけ向かったのは異常だ。やっぱり大原先生と橘さんとの間に何かあったと考えるのが妥当か。
そういえば、昔からよく言うよな。「金の切れ目が縁の切れ目」って。
そこまで考えていた俺に、池田さんが声を掛けて来た。
「五条君、今日は色々と勉強になった?」
「池田さん。ありがとうございます。とても有意義な時間を過ごせました」
「そう言って頂くと嬉しいわ。これから毎週こちらで、合同練習を行う予定だから」
「えっ、毎週ですか?」
俺はてっきり今日だけだと思っていたので、思わず葵の顔を見る。
葵は予想外と云った顔をして、俺の視線に向かって手を横に振っている。
「篁さん。私たちの演劇部とあなた達の演劇同好会は、合同練習から合同主催に変わったのよ。楽しみだわ。あなた達と共演できるなんて。これが練習メニューよ。当面は発声練習と柔軟かな。一か月もあれば、私が脚本を書くから、本格的な演技はそれからね」
「「「「えーっ」」」」
俺たちは、一斉に不満の声を上げる。
「私が此処まで協力してあげたのよ。お返しがあるのが当然よね。私たちは演劇部だから当然、演劇で返していただくわ」
池田さんが、鋭い目線で俺たちを睨む。メガネ越しの視線って結構怖い。
ギフトが絶妙のタイミングで池田さんに息を吹きかけてくれる。
池田さんの周りでは、手段を選ばないビキニアーマーのアマゾネス軍団が、俺たちに標準をあわせ槍や弓を構えている。あーあっ、俺たちは狩られたも同然だ。
「「「「「わかりました。頑張ります!!」」」」
俺たちは声を揃えて良い返事をする。ギフト曰く「才能ある野心家には借りをつくるな」だそうだ。葵の周りには女の子らしい精神を持った娘(こ)はいないみたいだ。
「五条君、あなたを主役にするつもりだから、しっかり演劇を勉強してね」
「イエッサー ボス!!」
俺は、もはやそれ以外に返す言葉は無い。
「池田さん、私たちも劇に出るんですか?」
「雅さんに恵子さん、それから真由美さんももちろん出るわよ」
「ええ、じゃあ、こんなコスプレ衣装を着るんですか?」
ちょっと嬉しそうに、雅さんが池田さんに尋ねた。
そういえばこの部室に入った時、一生懸命コスプレ衣装を見ていたな。
雅さんたち、実はコスプレプレーヤー願望者なのか?
「ああっと、ごめんね、今度の劇は古典をするつもりなのよ」
ああっ、雅さんたち、あからさまに残念そうな顔をした。やっぱりコスプレ願望者なんだ。
毎週ここに来ることになったが、今日の所はもういいだろう。手に入れたい情報はほぼ手に入った。俺は葵に向かって頷く。
葵は池田さんに向かって頭を下げた。
「池田先輩。今日は色々と有難うございました」
「「「「ありがとうございました!!」」」」
俺たちは、葵のお礼に続けて、声を合わせてお礼を述べた。
「あら、その声まだまだね。特に感情がこもってないわ。これからビシビシしごくから覚悟しておいてね」
にこにこしながら手厳しい意見を言う池田さん。やっぱり一筋縄ではいかない人だ。
俺たちは、校門まで送って貰って聖心女学園を後にする。
すると、校門を出たところで、いきなり声を掛けられた。
「光希、今まで何してたんだよ。遅かったじゃないか!」
「びっくりした。健二か。なに、お前、帰ってなかったのか?」
「そんな、後から呼びに来てくれると思って、ここから出てくる聖心女子の冷たい目線にもめげずここで待っていたのに」
嘘をいうな。お前の事だ。きっとここから出てくる女の子を、涎を垂らしながら眺めていたに違いない。よく変質者扱いされて、警察を呼ばれなかったものだ。
それを聞いて、申し訳なさそうに葵が言った。
「あっ、ごめん。池田先輩に宮田君の事を頼んでくるのを忘れちゃった。てへっ!」
「そこでかわい子ぶって、責任逃れをしないでよ」
健二は結構、根に思っているんだ。ちょっとうっとしい。俺も少し切れそうになる。
「いいんだよ。ほっときゃ」
「でも、宮田君も仲間だよ」
「確かに、大丈夫じゃないか。反対しているのは大原先生だけだろう。近いうちに黙らせて見せるさ。必ずな!」
俺は口角を上げた。今、俺の脳内ではビキニアーマーたちのアマゾネスたちが、戦いの踊りを踊り狂っている。ただし、原住民が躍るようなものではなく、バトル系アニメのテーマソングに合わせてだ。
「葵、お前、あの橘さんの元同級生からは、ちゃんと色々と聞いたんだろう」
「光輝、ばっちりよ。その個人情報をさらされた掲示板のアドレスとか、登録用アドレスとか」
「そうか、半年以上前だけど、追っかけることができるかな?」
「光輝、篁コーポレーションのインタ―ネット事業部の力を信じなさいって、一年以内のアクセスなら、きっと相手を突きとめるわよ。企業荒らしやら悪質なネットクレーマーなんかから、しっかり、賠償金をふんだくっているんだから」
「それじゃあ、葵、頼んだぞ」
「ラジャーです」
こうして、聖心女学園を訪問した俺たちは、有益な情報を手に入れ、ほくほく顔で帰り道をいく。とりあえず、文化祭での合同主催の件は棚に置いておくことにしたのだ。
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