第2話
教室の鍵を開けると、密閉され、日光によって温められた空気が一気に対流してくるのを感じた。
「あっつ」
冷房は嫌いだが、今日はそんなことを言っている余裕はない。
僕は渋々冷房をつけた。
設定温度は27度だ。
それでも冷房の風を直に浴びたら、お腹を壊す可能性がある。
そんなこともあって、夏限定で僕の席は窓側の一番後ろだ。
僕はいつもの通り自席に座った。
すると間もなく先生がやってきて、何かを両手で持っていた。
「お待たせ。ってここ暑いね。まぁ冷房が効くまで少し我慢だね。」
既に額に汗をかいている先生が息を切らしながら言うなり、ぼくの目の前の席にに座り、
「はいこれ、君がいつも買ってる綾波だよ。このお茶美味しいよね。」
と、先生は僕の目を見て言った。
「ありがとうございます」
僕は少し照れながらもお礼を言った。先生の目は見れなかったけど。
お互いにペットボトルに手を運び、それを一口飲んで、席の端っこに置いた。
そして互いに見つめ合った。
その刹那の時間が永遠に感じた。
「え、えっと…どこがわからないんだっけ…?」
先生が目を逸らしながら言った。よく見たら頬が赤く染っている。
「先生、熱ありますか?それとも、熱中症になってません?」
「いや、大丈夫だよ!!大丈夫!ほらこんな事もできるから!!」
先生はそう言うと、机の上に立って、ガッツポーズをした。
ただ椅子の上にっているだけなのに何故か自信に満ち溢れているように見える。
それにしても、黒いスカートの中にある禁断の場所が見えそうだ。
「先生、下着が見えそうです。早く降りてください。」
「やだ!青海君のむっつりスケベ!!」
「……」
先生はすぐに降りて席に座って、少し不機嫌そうな顔をして窓の外を眺めていた。
そう言えば先生のカッターシャツのボタンは上二つも空いている。
生徒にそんな誘いをするなんて、先生の方がスケベじゃないか。
そんなこんなで数学を教えてもらった。
僕に数学を教えている先生は楽しそうだった。
自然と僕も楽しくなってきた。
帰り際にとある質問を先生に説いた。
「先生1つ聞いてもいいですか?」
「どうしたの?」
「僕の人生色々と経験不足で、何かいい経験になる事はないですかね?例えば何処かに行って何かするとか…」
「……!!」
先生はなぜか顔を赤くして、こちらに片手を出して「ストップ!!」と言わんばかりに指を広げていた。
「先生、急にどうしたんですか?」
「え、いや、その……誘ってる…の?」
別にそんなつもりはなかった。
だが、先生に海まで車で送ってもらえるのはありがたい。
それに、先生の昔話も聞けるかもしれない。
「逆にいいんですか?僕は、海にでも行ったらいい経験になるかなと思って、海に行こうと思ってたんですけど…」
「う、海ね!そうだね!いい経験になるよきっと!!」
やっぱり、先生は慌てふためいている。
「で、これから私と一緒に海に行けば良いのね?そういえばご飯はどうするの?」
深呼吸をして落ち着いた先生は話を理解したらしく、ご飯の心配をしてくれた。
先生との授業が楽しく、時間のことを忘れていたが、もう正午になっていた。
ご飯なら弁当を持ってきている。
登校日だと思っていたから。
「お弁当を持ってきています。このまま行こうと思ってたんですけど。」
僕は嘘をついた。
恥をかかないように。
「こんな時期にお弁当を外に持って出ようなんて考えないほうがいいよ。この熱でお弁当が腐っちゃうでしょ?」
「あ、確かに。」
正論を返され納得した。
先生にそう言われるまで本気で持っていこうと思っていた。
危うくお腹を壊して帰路で倒れるところだった。先生に感謝だ。
「まぁとりあえず、お弁当食べてから行こうか、私もお弁当持ってきてるし、他の先生にも話を通しておかないといけないから。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、またあとでね!」
先生は、そう言って元気に教室を飛び出した。
君の描いた空の下で 高梨 鯨 @TakanashiKuzira
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