第2話
「おや」
だれか、入ってきた。
「これは珍しいお客さまですね。よくぞこんな、世俗にはまりこんだ教会へお越しくださいました」
「誰?」
「私ですか。ここの教会を運営している者です」
「うんえい?」
「そうです。ここは、小さな街の、小さな教会」
「そうなの。もっと綺麗で、大きなところだとおもってた」
「あなたにとっては、きっとそうなのでしょう。前にも、ここへ来たことが?」
「うん。結婚式。でも、私に席は与えてもらえなかった。鐘の音を聴いて、思いを馳せていただけ。だから、入れて、よかった」
「そうですか」
「ねぇ。お願いがあるの。私が主のところへ返れるように、精霊さまの導きを得られるように、祈ってほしいのだけど」
「うふふ。あなたは、まだ主のところへ赴くには早すぎます。しかし、祈りましょう」
「ありがとう」
主よ。
三位一体の、父と母よ。
どうか、この子を、護ってください。
慈愛をもって、あるべきところへ。
赴くべきところへ、お導きください。
この子に命を、お与えください。
この柩は、この子にはもったいない。
命を。
そして、愛を。
「さぁ。産まれなさい。そしてまた、ここへいらっしゃい。あなたの心とからだに、幸多からんことを」
教会 春嵐 @aiot3110
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