第6話 協力者?
食後のコーヒーを飲みながら、新品の学習ノートで楽しそうに文字を書いている生物の様子を眺めていた。
半分ぐらい飲み終わった時、
「すみません、少し良いですか?」
職員が扉を少し開け、顔を出して言う。
「分かりました」
私はコーヒーカップをテーブルに置き、職員の後に続く。
隣の部屋に案内され椅子に腰かける。
「あの生物について今回のサンプル採取で分かったことが2つほどあります。」
「何が分かったのですか?」
「まず1つ目は、あの生物には生殖器、子宮が備わっている事が確認されました。」
「雌だったのですか」
雌だったのか……プレゼントは人形がいい
か?
生まれてこの方贈り物を贈ったことが無いので何を贈ればいいか全然分からない。
「2つ目は、驚くべき再生能力です。」
「再生能力?」
「サンプル採取の際、皮膚の一部を切り取ったのですが、その後の傷が私達が目を離した隙に元通りになっていたのです。そこから調べた結果、あらゆる動物を優に超える再生能力を持ち合わせているのです」
そういった後職員は少し声を潜めて
「後、少し耳に挟んだんですけど、あの生物が食べてる肉って、人の肉って噂ですよ」
人の、肉だと?
「どうやらうちの研究所、今回の研究、バックに結構やばい組織が付いているらしくて、今日食べてたあの肉もその組織が届けに来たらしいんですよね。」
脳の処理が追い付かない。
そんな中、 一つ疑問に思う事がある。
「一つ聞きたいんですが、今回の研究に山城薬品工業は関係しているのですか?」
「えぇ、まぁ様々な薬と資金の提供を受けているらしいですよ」
何か繋がった様な気がした。
分からない、分からない事だらけだ。
ただの予想だが、今朝見た光景、ガタイのいい男達はその組織の構成員達だとしたら?
そして、そんな彼らが運んでいたあの箱の中身は薬品なんかじゃなく死体だとしたら?
今、私はとてつもない物に片足を突っ込んでいるのは無いのかと思い、冷や汗が背中を流れる。膝に置いた手に力が入らず震え始める。
私は、私はただ、新たな発見を、この目にしたかった、それだけで、こんな、
「紀見塚さん!?紀見塚さん!?」
「ッ…!すっ、すみません……」
はっと意識を取り戻す。
「顔色わるい……いや、そうなりますよね」
「……あの、私はどうなるのでしょうか?そんな話を聞いてしまって」
「紀見塚さん、今研究所内の職員は全員情報を外に漏らさない為か帰宅するのを禁止されているんです。紀見塚さんが帰宅できるのはこの情報を知られていないからなんですよ。だから今回の話は他言無用という事で、お願いしますね?もしこの情報が外にバレたら……」
職員は自分のこめかみに人差し指を当て銃の形にすると
「バーン、死んじゃいますよ」
死ぬ?死ぬだと?冗談じゃない!
職員は立ち上がり部屋を後にしようとする。
「待ってくれ!」
私も立ち上がり職員に尋ねる。
「私はどうすれば無事にここを辞めれるんですか?」
少しその職員は考えた素振りをすると
「あの生物の教育が一通り終わってからじゃ無いですかね?」
「……分かりました」
脚の力が抜け椅子に座り込む。
「すみません、一応言っておかないと紀見塚さん、自分から調べようとするんじゃないかと思って」
確かにそうだ、もしこの話を聞かずにいたら疑問を疑問で残すのを許す事が出来ずに、この件について調べようと動いていただろう。
「私の名前、まだ言ってませんでしたね。私の名前は赤井 姫乃と言います。紀見塚さんの教育がいち早く終わる様に私もサポートします。だから……」
「くれぐれも逃げないように」
そう言うと彼女、赤井姫乃はウィンクをし、部屋を出て行った。
今後の不安に押し潰されそうになっている時
「ヴァァア!!!」
隣の部屋からあの生物の叫び声が聞こえた。
異形だが異常ではない愛 @APP18
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