正解を探す冒険

中洲ノ粤犬

第1話

ー「Yeah!素晴らしく美味なる飯かな!食べたまえよ!」ー

あなたはこの台詞を聞いてどう思うだろうか。ある人は、〈こんな言葉遣いをする人間はいないwww〉と感じるだろうし、またある人は、〈金持ちが友達に御飯を食べるように勧めている〉と考えるかもしれない。

『同じ物事でも人それぞれ捉え方が違うのは当たり前のことだ』と世の人は言うが、それはその中の大多数には数割も理解されていないだろう。

人は育った環境や元来の性格により、知らぬ内に己を毎日変化させている。そして、その組み合わせは毎日変わると言える。

学校で毎日会う友人ですら、一時たりとも完全に同じ状態であることはない。

しかし、私を含む誰しもがそれを十二分に理解するに至っていない。

そこで、前述のような事態が起こり得るわけだ。それは、他人を見る余裕がないからとも思える。


最初の例文はストーリーの始まりだと思っていただきたい。

彼に招かれた数人の友人達は、勧められるがままに会食を始める。そこで、ある事象が発生する。このグループの中の一人が料理の鶏肉をテーブルの下に落としてしまったのだ。ここで当事者にはRPGのように選択肢が発生する。

①誰も見ていないようだが、拾ってティッシュペーパーにくるむ。

②誰も見ていないので、拾ってこっそり食べる。

③誰かに見られたので、拾ってティッシュペーパーにくるむ。

④誰かに見られたが、拾って素知らぬ顔で食べる。

他にもあるが、枚挙にいとまがないため、この4パターンを例にそれぞれの人物がするであろう思考について考察したい。


①を選択した場合

当事者…誰も見ていないけれど、落ちたものを食べるのは汚いし、拾ってくるむのがマナーだよな。

他者…(気付かない)


②を選択した場合

当事者…誰も見ていないし、食材が勿体無いから食べよう。

他者…(気付かない)


③を選択した場合

当事者…見られたからマナーとして拾って、くるんでおこう。

他者…落としたのか。高いけどもう食べられないな。


④を選択した場合

当事者…誰かに見られたけど、勿体無いから食べよう。

他者…うわあ。あいつヤバッ。下に落としたもの食うのかよ…。


①では、誰も見ていないこととマナーとして良くはないと考えていることが決定の判断基準となった。

②では、誰にも見られていない上に、高級食材を無駄にすることに抵抗を持ったことが決定の判断基準となった。

③では、高級食材が勿体無いが、他の友人が見ているためにマナーとして拾っておくべきだとの判断が行動の基準となった。また、目撃者もそれが当然だと思っている。

④では、誰かに見られたが、食材を無駄にしてはならないとの判断が行動の基準となった。しかし、目撃者から見るとそれは人間的に異常に見える。

※これらはあくまでも私の見解


これが正解だ、というものは時と場合によって異なるわけだ。

しかし、ある観点から見ると正解は限られてくる。

賛成数の多さだ。

多数決の原理とはよく言われたもので、特に我々日本人のほとんどは元来、数に弱いらしい。そして、それは「空気を読む」という文化として定着しているようだ。

私見を述べさせてもらうと、毎日風呂に入るほど清潔好きの日本人が②と④を選択するとは思いがたい。

この国でよほど変わった人間でなければ選ばないだろう。

と、すると①または③が"一般的な"正解となるわけだ。

だからといって、②と④が必ずしも不正解であるとは言えない。

選択肢としてはあるものである。


してはならないのは、当事者が「不正解の選択」をした場合に大勢で罵詈雑言を浴びせることだ。

そんなところで空気は読まなくてよいと私は考えている。





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