しぬ

しについて、友達や恋人に喋ってみた。


その日から、毎晩誰かが家に来るようになった。遂には、紀伊半島から親族が襲来してきた。


みんな、何も言わない。


ただ、一晩中ぼうっとしについて考えている私を、見てる。


友達はお酒呑んだりピザ頼んだりしてる。


恋人は親族とコネを作り始めていた。訊いてみたが、将を射るには馬がどうこうとかわけのわからないことを言っていた。あたまがおかしいのかもしれない。


私は、ひとりじゃなくなった。

必ず誰かが、そばにいる。


そして、気付いた。


既に私は、しんでいた。


誰かがいるということ。誰かと日々を過ごすということ。


その日常のなかに、自分はいない。

ひとりではない日々が、私をこのうえなくひとりにして、しなせてくれた。


彼らは、私が物理的に死を選ぶと思って、それを止めるためにここにいる。


しかし、私の求めているしは、そんなものではない。


いま、この瞬間が、わたしにとっての、し。


誰にも理解されない。誰にも悟られない。ただ、自分の存在だけが、消える。


生きながら、しんでいる。


これが、私の求めていたものだった。彼らは、私を見ていない。私の外側が死を選ぶと思って、それを止めようとしている。でも、私のしは、内側。


ありがたかった。


この人たちの勘違いのおかげで、わたしは、しねる。

外側だけの私を残して。


融けていく。私が。夢と幻想のなかに。


もう、私に今日は来ない。

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そして今日が 春嵐 @aiot3110

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