Jude's Journey

狛犬わらび

第1話 出発

潮風が肌に心地よいー

木でつくられた簡素な船にある若い青年と船乗りが乗っていた。

時折船乗りは、話しかけようとするが青年は口を利かなかった。

何度やっても無駄だと思ったのか、船乗りは浅くため息をつき船を漕ぐのに集中しはじめた。

今、この二人が向かっているのはアメリカの南に進んだところにあるフェローという群島だ。

船乗りは、なぜそんな危なっかしいところへ行くのかと不思議に思った。

それは、単に今の時代めったに見ない山賊が現れるからとでもなく、

あそこは、オックスウェル家という一家が代々人身売買を請け負い群島の政治といってもいい場所なのだ。

それを知っていて行くのか否か船乗りは気になっていた。

しばらくして、フェローの海に面した岩肌に船乗りは船を止めた。

青年はひょいっと荷物を持ち、船を降りると

「いくらだ。」

とつぶやいた。

船乗りはやっと口を開いたなと思いつつ。

「2.5$に負けてやる、ここはあぶねえとこだかんな。」

青年は差し出された手に金を置くと、分かっていると小声で言い、身軽にその場を去った。



少し歩くと小さい集落があり何やら揉め事が起きているようだ。

あんなのにはかかわりたくないと思いつつ、耳を傾ける。

「だから…、お前とは一緒に行かないぞ!」

その人は片方にこっぴどくけがをさせられているようだった。

「歩けるだろ!?じゃねぇとお前の首根っこ引きちぎるぞ!あん?」

片方は見るからに盗賊かその類だろうという見た目をしていた。

青年はかかわりたくはないのに、助けなきゃという本能でこう言ってしまった。

「おい!」

そういうとすぐにその男はこちらへ振り向き

「ほほう、お前デカくて強く見えるな、いい値段になりそうだぁ。」

と言い放つ。

格闘には自信のある青年は、

「残念だが、お前には無理だ。」

と指を指しながら煽る。

「それはどうかな?なめってっと痛てぇ目みるぜぇ?」

そういいながら、右の拳で殴り掛かってくる。

それを素早く避け、すかさず蹴りを入れる。

盗賊は、腹を軽く手でおさえ口を拭うと

「やるじゃねえか、兄ちゃん。ちょっとは骨があるねえ。」

この集落の人々はオックスウェルの権力のため誰も逆らおうとはせず、戦うのが久しいのかこの言葉が出たのだろう。

青年が様子を見ていると、今度はナイフで斬りかかろうとしてきた。

避けるが刃先が掠れて傷を負ってしまった。

だが、盗賊は前へ進む力が強く、そのまま青年は投げた。

しかし盗賊は力を振り絞って立ち上がりナイフを持ち直し襲いに来る。

それを、青年はまた投げさすがに懲りたか静かに眠っていてくれた。

それを見た、さっきの人は

「ありがとう!なんとお礼を言っていいか…。あとちょっとで誰かが盗賊にやられるところだったんだ。」

そういわれると、めんどくさいので

「礼はいい。」

とつい怒り気味に言ってしまった。

「せめて名前だけでも…。」

申し訳なく彼は小声で

「ジェード。」

「ジェード ギネス。」

と答えた。

「俺は、アランよろしく。」

さっきと一変笑顔になりアランも答える。

ジェードはやはりオックスウェルが絡んでるのかと思い、恐ろしさを知らない他方の者があえて行った方がいいと思った。

「ところで、盗賊の残りは?」

「二人だよ、あの辺にいる。」

彼が指さした方向には、山がありそこに舗装された階段があった。


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