手に取れば、きっとすき間の世界のとりこになる。

他の方も言及されていますが、「不思議の国のアリス」のほか、「星の王子さま」の要素(数字を操るしごとにんげんや、仕事の意味がわからないあかりつけや…)、また(もしかしたら)すこし「ナルニア国物語」など、さまざまな作品の雰囲気を織り込みつつそれらに引けを取らないほど吸い込まれる作品でした。

「何が夢か」といえば、映画の「マトリックス」が浮かびますが、あるいはそれを狙って(二つの世界が分かれている)映画と(二つの世界が一体となっている)小説の差別化を行っているのかな、とも。最後にマルコムXの引用がなされていて、ドラゴンが「黒」曜石なのも関係があるのかもしれない……と、それなりに大人になってしまったから余計な詮索をしてしまっているのかもしれません。

御伽噺らしくクスッとするところも(例えばひげ一本の差で負けてしまうこととか、人魚が興奮のあまりはねることとか)あって、しかしおじいさんとかお話が読み終わったあともこちらをじっと見つめているような……ひょっとしたら明日、おんなじふうにハツカネズミを追いかけることがあるんじゃないかと思えるような。懐かしいような、新しいような、また忘れてしまったような……。もしかしたら(もしかしなくても)このおはなしに捕まってしまったのかもしれません。

追記
自主企画へのご参加、ありがとうございました。