第6話
今日もあがりだ。
帰り道、がらの悪い連中に遭遇した。
奴等はこちらを見てニンマリしながら、吸っていたタバコを俺が通りすぎる瞬間、突然地面に叩きつけた。
いきなりタバコを目の前に放られて、いささか驚いたが、何事もなかったかのように通りすぎてしまった。
問題はその後に腹を立てたことだ。
俺は全速力かつ血眼で今来た道を引き返した。
しかし、時は既に遅かった。
吸殻だけを残して、チンピラの車は去っていた。
俺は、とてつもないばかばかしさとともにそいつを近くの公園のゴミ箱に投げ捨てた。
なぜ先刻、驚いたりせずにあいつらに注意をしなかったのか。俺は何よりも、そんな自分に激怒した。
それを、コッソリ覗いた劣等感がニヤニヤしながら眺めていた。
「失せろと願う度にこいつは元気になるんだからな」と俺はいつも以上に呆れた。
「即決力」「勇気」「体力」「筋力」「精神性」
それらを高いところに持っていけばいくほど、決断力が生まれる。
ある意味ではそれは『武力』だ。
しかし、それがあれば何でも良いわけではない。
例えば、核抑止論には賛成しない。
狂気的な悪意を持った第三者がクーデターに成功でもしてしまえば、世界のどこにいようとも命は風前の灯だ。
しかして、武器で自分を強化するのではない。
『自分自身』を強化する必要があるのだ。
そうでなければ、「浜から離れたところで浮き輪を失ったかなづち」と同じだ。
泳げることが大切なのだ。
劣等感を自尊心に変えてやる為には、心を完全なる味方につけなければならない。
彼が劣等感ばかりに気を使っているようでは俺はほとんど成長できないのだ…。
劣等感が泣いている 中洲ノ粤犬 @tasogare7974
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