(四)(終)

 でも、今こうして君の目からこぼれ落ちる涙を見て、その粒の大きさを見て、僕は君の本心を知った。今の本心と、当時の本心を。君の愚痴は遥か遠回しな告白だったことを。君の近くにいたのに、僕は君のことを全然理解していなかったのだ。

 一〇年前の自分は何をしていたのだろう。何を考えていたのだろう。あのとき彼女をさらうことができたなら、いやその後だってよかった、一〇年間も時間があったのに、大学生になってから、いや、就職した後だってよかった。それなのに、自分は今まで彼女に何をしてやれたのだろう。

 気がつくと、僕は二次会の会場の真ん中で、泣き崩れていた。このとき僕は、一〇年前の僕自身を酷く恨んだ。


(了)

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近くにいたのに 【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名 @HarunaTsukushi

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