目に見えないけれど、はっきりと引かれた境界線。
ずっとそこにあったものでも、急激にくっきりしてしまうことで、余計に目を背けたくなるかもしれません。
対してヤンはみるみる成長してゆくジュールが微笑ましくて仕方ないと、自分の寝床でもいい夢を視ているかもしれませんね。次々に本を読破してしまうことは勿論、ジュールが綴る文字が目に見えて変化していくさまは、頬が緩みそうです。
作者からの返信
二人の時間にフォーカスしていますけど、社会の一員としてはまったく別のところにいるわけで。なんだか自分の感じていた喜びが勘違いだったように寂しく感じますよね。
家庭教師(?)としてはジュールはやりがいのある生徒でしょうね。一番目に見えるのは字が上手くなることかなと思って。成長する人を見守るのって自分のことのように楽しいのではないでしょうか ^^
今までが夢の中出来事過ぎました。
否応無く現実社会の一員に戻っていかねばなりません。
ジュールも寂しくて辛いかもしれませんが私も同じ気持ちで読みました。
しかしフレデリックの「椿姫」を薦めるちょっとした皮肉と言い
チクチクチクチクじわじわじわじわ!これから先の嫌な予感しかしませんね!
作者からの返信
丁寧なご感想、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
自分が勝手にいいように思い込んでいることも、現実のなかでは「所詮…」みたいなところありますね。この二人にもそれぞれの立場がありますし。
ヤンには兄のひと言がこたえたのでしょう。
「チクチクチクチクじわじわじわじわ!」笑
的確な描写おそれいります笑 仰る通りです。
『椿姫』嫌味ですよね。分かって頂けて嬉しいです。きっとmono黒さんは文学系も色々ご存じなんでしょうね。
ヤンとジュールの距離がどんどん縮まっていく描写が巧みですよね。
ピアノのくだりや本、勉強、胸の傷でのジュールの怒りと、その後の和解。日々の出来事を通して、二人の絆が結ばれていく様子と、微笑ましいやり取りにほっこりします(*^-^)
穏やかで平和だからこそ、フレデリックの存在が余計に際立ち、胸がさざめく。
まるで綺麗な青空なのに、遠くの山の上に黒雲があるような、そんな胸騒ぎ。
平和なのに、戦争の足音が聞こえてくるような緊張をはらんだ空気。
もおっ!柊さんの演出が上手すぎて「この穏やかな日々は長くは続かないのかも……」なんて、今から切ない気持ちになっていますよ!
完結しているから心穏やかに読めますが、リアルタイムで追っていたら、先が気になって眠れなかったでしょうね(>o<")
作者からの返信
遊井さん、コメントありがとうございます ^^
丁寧に読み込んで下さっているのが伝わる素敵なコメント、嬉しいです! アプリヴォワゼは飼いならすとか手懐けるという意味ですが、この章題に沿って日常の中で互いの距離がさらに近づくところを描きたかったです。
フレデリックの存在を形容される言葉がまさにそんな感じですね。青空の向こうに黒雲…すばらしい例え。不穏な人ですね。
まっすぐに物語に入ってもらえるのって作者にとってすごく嬉しいことですね。章ごとに色々あり、話も進んでいきますが、仰る通り完結していますので安心してお読みいただければと思います ^^
悪夢に魘されるジュールの枕辺に立つヤン、ジュールにピアノや文字の綴り方を教えてあげたり、本を提供してあげたり、心の優しい青年です。ジュールの痛みはジュールだけのもの。忘れることはできないと、痛みと共に生きようと、正論を教えるのもヤンですが、ジュールの傷は、まだ真新し過ぎたのかもしれませんね。そんな彼にヤンが繰り返す言葉……「汚くなんかない…!絶対に…汚くなんかない……!」
言葉が届いて、ヤンがジュールの髪を綺麗にしてあげる場面も素敵です。信頼という糸で繋がっていると感じます。そう言えば『星の王子様』で「Apprivoiser」は「時間をかけてできた絆」とも訳され、個人的に、とても好きな単語です。「手なずける」=「仲良くなる」=「目に見えない絆」という解釈でしょうか。仏蘭西語の解釈とは色々に考えることができるものですね。「アプリヴォワゼ」と片仮名表記も綺麗ですし、この「アプリヴォワゼ」という章の内容が、本当に好きです。
作者からの返信
宵澤様、
コメントありがとうございます。「時間をかけてできた絆」とはいい訳ですね。一般的には動物を手なずける意味で使われる言葉なのでフレデリックにそう言わせています。でも解釈としては星の王子様のキツネで、お互いを必要としはじめる雰囲気をこの章に出してみたかったです。カタカナにするときれいですよね。分かってくださるの嬉しいです。
文学作品ですね。胸がいっぱいになって少しずつしか読めません。作者様が真摯に紡いだ作品は美しいです。
心に傷を負った者はやはり傷を抱えている者に惹かれ、胸襟を開き、傷を埋め合おうとする事で欠けたものを満たそうとし、自分の存在意義を感じるのかもしれませんね。
共依存にもなりやすい関係ですが、ヤンの「傷は忘れようとしても蘇るからうまく付き合っていかなければならない」という厳しくも深い愛情のある言葉が、その懸念を払拭してくれそうですね。
随所に散りばめられた文学作品も素敵です。
「椿姫」はオペラの方もよく聴いたり観たりしたので、アリアが聴こえました。ドゥミ・モンドやクルチザンヌの世界が好きで、思春期に憧れていたんです(笑)。でもこれはフレデリックの高尚な皮肉ですね。
作者からの返信
葵さん、こちらも読んで下さって、嬉しいコメントをありがとうございます!序盤からとても深く読み込んで頂けるのは作者冥利に尽きます。
そうですね、日々の中でヤンが自分を受け容れてくれる、信頼に足る人だというのを感じて、ジュールも心を開くことができたようです。
確かに相手によっては共依存になる可能性、ありそうですね。そこまで考えられるとはすごい。でもヤンはそこに流れない芯のある人にしたかったです。厳しい言葉は下手したら関係がひびわれて終わりですが、むしろ信頼が深まるチャンスでもあると思います。
葵さんは文学作品にもお詳しいですね。小道具的に使った作品にも目を留めて下さり、意図を汲んでくださって嬉しいです。
心のこもったコメントをありがとうございます。