どこまでも素直で純朴なジュールに、どこかうっとりしてしまいます。
喜怒哀楽の感情の起伏は、しっかりと、今ここに生きていることの証のようです。
経験からくる拭えない恐怖。たとえ自分が図太いつもりでも、そう簡単には平気でいられないことってありますよね。
作者からの返信
警戒心から少しずつ(ヤンに対しては)心を解くような章にしたかったので、ここでジュールの性質を感じてもらえてよかったです。
ついこないだまでそこにあった経験はまだ生々しいまま残っていると思います。自分に対する嫌悪感なんて人には言えないものですし。ましてや一緒に泣いてくれるなど想像しなかったでしょう。ヤンの正直さが功を奏しました。
後ろに人が立つと背筋が凍りつく。この感覚、僭越ながら拙宅の日芽子に通じるものがあると、みたびの拝読で気付きました。
このアプリヴォワゼという章は特に好きです。ジュールが隠していた心が音楽療法の結果、堰を切って溢れて、それを包むヤンが居て、あたたかい❤ 兄弟のような二人の幸せな姿ですね。
作者からの返信
ひいなさん、沢山のご感想を残して下さりありがとうございます。
日芽子さんの覚える感覚の方が複雑かなと、さっき拝読して思いました。この場面でのジュールは村での日々で自分に染みついてしまった感覚を認めざるを得ない、というところでしょうかね。言ってみれば外側から来る者に対する恐怖心で、日芽子さんの場合はそれが自分の体への嫌悪感へ繋がっていくので、より複雑に思えるのです。ジュールの自分への嫌悪感はその経験に対してで、自分の持つ男の体への嫌悪ではないので、ここに男女の差もあるのかなと思ったり。
この章はなるべく丁寧に書きたいと思っていたので(でないと次の初恋が唐突になるので)お言葉嬉しいです。兄弟みたいな微笑ましい感じが出てるといいですが。
「森から心地よい風が吹き、すっきりと軽くなったジュールの首筋を通り過ぎていった。ジュールは短くなった髪に手を当て、照れくさそうにありがとうと微笑んだ」
この最後の二行が特に、すばらしいと思いました。
髪を切ってもらってすっきりするとともに、心が「アプリヴォワゼ」していますよね。ジュールの照れくさそうな微笑、それを見て笑っているヤンの表情が浮かんできます。
作者からの返信
九月さん、コメントありがとうございます。
こういう小さなシーンまで拾って下さって嬉しいです。この章でジュールとヤンが「アプリヴォワゼ」していく様子が書けていれば何よりです。
もしかしたら照れくさそうな微笑の中に少しずつ別の気持ちが芽生えかけているかもしれませんね。