第3話
「だまらっしゃい!この
「あ、あっぶねえなババア!包丁振り回すのやめてくれよ!」
妖狐の里から三里ほどもある人里からもはずれたそこにいたのは泣き喚く子供とその親と思しき男、そして半狂乱の老婆だった。
「その
泣きじゃくっていた子供は老婆にきっと憎しみの目を向けると言い放った。
「うるさい!
「なんじゃとこの糞餓鬼…!!」
老婆は益々激昂した様子で包丁を無茶苦茶に振り回しながら男と子供に迫った。
「あ、あっぶねえな!!?やめてくれ!!頼むから!!」
「この…糞餓鬼っ…!!殺す!!百代先まで呪い殺してやろうぞ!!この婆の目の黒いうちは…坊のことを悪く言うものは百代二百代では済まさぬ!!この婆の生命に換えてでも末代まで奈落に這いずり落とし尽くしてやるわ!!
「に、逃げるぞ!!」
「どこへ行く貴様ら!!わしの坊が攫われて喰われるなど…あのような良か童がそんな目に合うわけがなかろうが!!この世がそれほどの修羅であるならば…わしはこんな世に未練などない!!わしは修羅道を這いつくばり…最後に貴様ら
老婆は山道の大木の畝に足を取られて勢い余って転んだ。
「ぜっ…ぜえ…ひいっ…!…おのれ…馬鹿たれ共が…!次に会ったら命ないものと思って…」
婆は四つん這いになったまま、檀ノ介らの行きし方を見ると山道の道半ばに一人の童がいた。
これは夢か幻か、それともここが極楽浄土か。見紛うことなどあるものか、と自らに言い聞かせながらも婆は何度も袖で目元を拭った。
「ばっちゃ?」
「坊…?」
「ばっちゃ…」
「坊…!?間違いない…坊…!坊!!」
婆は先程まで四つん這いになって汚れた着物など頓着もせず、坊に向かって一目散に駆け、坊と呼ばれた小さな
「坊…よくぞ無事じゃった…!!」
「坊…!!こんなにも長い間どこにいたのじゃ!!婆はもう帰らぬものかと……!!坊おおお!!」
婆の方はしばらくすすり泣いていたが、やがて笑い出した。
「ヒヒヒ……
泣いたり、笑ったり。婆の奔放な振る舞いに
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