ピンチや失敗があったが、乗り越えればそれでいい。――7

 度重たびかさなる戦闘と、数々のトラップをくぐり抜けた俺は、二時間後、視線の先に広間を見つけた。


 転移の魔法円があった部屋と同じくらいの広さで、同じく四角形の広間だ。床には、転移のそれと違うかたちの、魔法円が描かれている。


 三方の壁にはふたつずつ、残りの壁にはひとつ、出入り口があった。


 そしてそれぞれの出入り口に、六人の姿がある。


 俺は目を見開き、笑顔を浮かべた。六人も顔を輝かせる。


 たった二時間程度だが、離れている時間がとても長く感じた。


「みんな!」


 俺は喜びいさんで駆け出す。


 しかし、広間に入る寸前、磁石のN極とN極を付き合わせたときのように、反発力が発生した。


 な、なんだ、これは!?


 足を踏ん張って全力を込めても、反発力にあらがえない。俺は広間に入れずに押し返されてしまう。


「ぬぐぐぐぐぅ……!」

「パパが、すぐそこに、いるのにぃ……!」

「見えない壁に、押し返されているようです!」


 クゥ、ピピ、ミアも、なにかの力で阻まれているようだ。神獣の力でも突破できないとは、相当な反発力だ。


 同じく、シュシュとサシャも苦戦している。


 そんななか、


「わたくしは大丈夫みたいです~」


 ララだけが広間に入れた。


「ララ。俺たちがどうして広間に入れないか、わからないかな?」

「……おそらく、位相いそうのズレがあるのでしょう~」


 ララが俺の前にある見えない壁に触れ、そう推測する。


「い、位相のズレとは、なんなの、ですか?」

「空間の繋がりに不具合があるということです~。光や音は通りますが、空間の繋がりが不十分なので――」

「オレたちは通れないってこと?」

「その通りです~」


 ララが神妙な面持ちで頷いた。


 みんなが目の前にいるのに合流できないなんて……もどかしくて仕方がない!


 俺が歯噛みしていると、ララが静かに口を開く。


「……ひとつ、位相のズレを修正する方法があります~」

「ホント!?」


 目を丸くするクゥに「はい~」と答え、ララが床に描かれた魔法円を示す。


「この魔法円は空間操作のものです~。この魔法円を使えば、空間の繋がりを確かなものにして、位相のズレを修正することができるでしょう~」


「ただ」と、ララがスカートを握りしめる。


「また、トラップが仕掛けられているかもしれません……みなさんに、また迷惑をかけてしまうかもしれません……」


 唇を噛むララを見て、俺は気づいた。


 ララは恐れているんだ。さっき、転移の魔法円のトラップに引っかかったように、また失敗するんじゃないかって。


 ララはおびえているんだ。さっきと同じように、俺たちをバラバラにしてしまうんじゃないかって。


 ララは、さっきの失敗を引きずっているんだ。


 ララの気持ちはわかる。誰でも失敗は恐ろしい。失敗を恐れないやつは、余程よほどの大物か、ただの無神経だ。


 それでも俺は、こう言おう。


「失敗したって構わないよ、ララ」

「…………え?」


 思いも寄らない言葉だったのだろう。ララが目を見開いた。

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