ピンチや失敗があったが、乗り越えればそれでいい。――6

『スケルトンは普通の方法じゃ倒せないんだ!』


 俺とシュシュの念話を聞いていたのか、サシャがアドバイスを送ってくる。


『赤い宝石が体のどこかにあるはず! その宝石――かくを破壊しない限り、スケルトンは何度でも起き上がってくるよ!』

『ありがとう、サシャ!』

『や、やって、みます!』


 俺とシュシュはサシャにお礼を言う。


 シュシュが再び、アクアショットを放った。


 今度は先ほどのような砲弾ではない。弾丸のような、小さな水球すいきゅうだ。


『そ、そこ、です!』


 水の弾丸が、狙いたがわずスケルトンの核を撃ち抜く。


 核を破壊されたスケルトンは、糸の切れたマリオネットみたいに崩れ落ち、灰となって散っていった。


『や、やり、ました!』


 シュシュが歓喜の声を上げる。


 シュシュのほうは大丈夫! 俺も行こう!


 ミスリルソードを正眼せいがんに構え、俺はスケルトン集団に駆け迫った。


 一体のスケルトン。その、肋骨ろっこつの中央にある宝石ほうせき目がけ、ミスリルソードを突き出す。


「はあっ!」


 ミスリルソードの切っ先が核を砕き、スケルトンが灰となった。


 が、スケルトン集団もただではやられない。


 直線だった陣形が、弧を描くように変形する。俺を取り囲もうとしているんだ。


 Cランクとは言え、スケルトンは倒しにくいモンスターだ。囲まれて一斉いっせいに襲いかかられたら、流石にマズい。


 けど、狙いがわかっていれば対処は容易たやすい!


 囲まれる前に、俺はバックステップを踏む。


 逃さないとばかりに、スケルトンの一体が俺を追いかけ、槍を突き出してきた。


 それを待っていたんだ!


 体を傾けて槍を避け、左肩にある核をミスリルソードで斬りつける。


 スケルトンが灰になったのを確認し、続いて右翼のスケルトンに突撃。額の核を刺突で破壊する。


 そして再びバックステップ。


 またしても一体のスケルトンが俺を追ってきた。


 今度は攻撃される前に斬り伏せる。


 相手が集団で襲ってくるなら、各個撃破ができる状況を作り出せばいい。


 幸い、スケルトンの知能は低いようだし、『突撃 → バックステップ → 深追いしてきたスケルトンを撃破』のシーケンスを繰り返せば、倒しきれる。


 三度突っ込もうとしたとき、スケルトン集団の頭上を、巨大な影が飛び越えてきた。肉も皮もない、骨だけの猟犬りょうけんだ。


 スケルトンと同じ、骸骨のモンスター。魔獣『スカルハウンド』だ。


 スカルハウンドが前足を振り下ろし、鋭い爪で俺を斬りつけようとする。


「くっ!」


 咄嗟とっさに半身になって回避。


 背後に回ったスカルハウンドは、ターンして俺に向き直った。


 現状は、スケルトン集団とスカルハウンドに挟撃きょうげきされたかたちだ。


 スカルハウンドが大口を開けて、迫ってくる。


 スケルトン集団がいるから、背後に飛び退くわけにはいかない。


「けど、逃げ道がないわけじゃない!」


 トン、と跳躍ちょうやくして噛みつきを回避。


 同時、俺はスカルハウンドの背骨に、赤い宝石を発見した。


 スカルハウンドはスケルトンと同じ、骸骨系のモンスター。すなわち、あの宝石は核だ。


 なら、対処法も同じ!


 ミスリルソードを突き下ろし、核をつらぬく。


 スカルハウンドが灰となり、ザラザラと崩れた。


 着地した俺は振り返り、スケルトン集団への突撃を再開する。


『え、えぇいっ!』


 シュシュの戦いも順調だった。


 尻尾のぎ払いで、スケルトンの脛骨けいこつ腓骨ひこつを破壊し、体勢を崩したところにアクアバレット。まとめて十数体を討ち取る。


 飛びかかってきたスカルハウンドに対しては、


『「ブルースフィア」!』


 巨大な水球で取り込み、水圧で押しつぶす。


 骨ごと核を破壊されたスカルハウンドが、灰になった。





 五分後、スケルトン集団を倒しきり、俺とシュシュは一息をつく。


 俺は額の汗を拭い、六人に念話を送った。


『トラップだけじゃなく、出現するモンスターも一筋縄ひとすじなわじゃいかない。慎重しんちょうにいこう!』

『『『『『『了解!』』』』』』


 六人と合流すべく、俺は先へと進んだ。

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