エイリス王国に向かったが、厄介事に見舞われているらしい。――10

 エイリス王の依頼を受けたのち、俺たちは従者につれられ、エイリピア城の廊下を歩いていた。


 どうやら俺たちのほかにも、呪いを解くため、エイリス王に協力しているひとがいるらしい。


 意匠いしょうが凝らされた、白いドアの前で、従者が足を止める。


 従者がドアをノックした。


「どうぞ~」


 ドアの先から間延まのびした返事が聞こえ、従者がドアを開ける。


 その部屋は客間らしいが、俺たちが泊まってきたどの宿よりも広かった。家具もすべてがアンティークもののようだ。


 客間には、テーブルについて分厚い本を読む少女がいた。


 見た目は一六歳くらい。身長はミアよりわずかに高そうだ。


 肉付きがほどよく、胸とお尻が大きい。


 海に似た藍色の髪は編みおろし。アメジストの瞳に、穏やかそうな垂れ目。


 どうやら魚人族らしく、藍の鱗と鰭を持っている。


 身にまとうのは、白と青を基調としたワンピース。トーガを真似たような、洒落しゃれたデザインだ。


「ララ様。こちらの方々が、あなたとともに呪いの解決に協力してくださるそうです」


 ララと呼ばれた少女は、俺たちを見て、アメジストの瞳をいっぱいに開いた。


 どうしたんだろう? と俺が首を傾げていると、読んでいた本をバタンッと乱暴に閉じ、ガタッと椅子を鳴らして勢いよく立ち上がり、タタッとこちらに駆け寄ってくる。


 あれ? なんだかスゴい既視感きしかん


 なんて感想をいだいていると、


旦那だんなさま~~~~っ!!」

「やっぱり!?」


 少女が俺の胸に飛び込んできた。


 少女は俺の胸に頬ずりして、クンカクンカと匂いを嗅いでいる。


『ララ』って名前を聞いたとき、もしかしたらと思ったんだよなあ。


 少女の柔らかい感触と体温、バニラビーンズみたいな甘い匂いにドギマギしながら、俺は苦笑する。


「きみも恩返しに来てくれたんだね、ララ?」

「その通りです、旦那さま~」


 腕のなかの少女が、ふわりと微笑んだ。


「やっと会えました~!」

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