エイリス王国に向かったが、厄介事に見舞われているらしい。――5

 ピピの胸はほとんど膨らんでいないが、それでも水まんじゅうみたいに柔らかい。


 加えて、中央には小豆あずき大のしこり。そのしこりがなんなのか、わからないほど俺は初心うぶじゃない。


 わかるからこそ、俺はコチンと硬直せざるを得ないんだけど。


 血の気が引いた顔に、今度は血が集まってきた。頬が熱くて仕方がない。


「ピピも、手伝う」


 フリーズしている俺に構わず、ピピがもぞもぞと動き出した。


 が、その所為せいで、胸のしこりと手のひらがこすれ、「ひんっ」とピピが身震いする。


 イカン! この展開は非常にあやうい!


「ピ、ピピ、ストップ!」


 俺は制止の声を張り上げるが、それが逆に災いしてしまった。


「はひぃっ❤!」

「うぶっ!?」


 股間を刺激してしまったのか、ピピの太ももが閉じられ、俺の頭を挟み込む。


 結果、俺の顔はピピの股間に押しつけられるかたちになり――、


 い、息ができない!


 このままでは窒息してしまう。なんとか太ももの拘束を解こうと、俺は頭を振る。


「パ、パパぁ……なんか、変な気分に、なるぅ❤」

「むぐぅっ!!」


 さらに拘束がキツくなった。


 ピピがなにか訴えているようだが、俺に聞いている余裕はない。


 神獣の力で頭を締め上げられているのだから当然だろう。頭蓋骨がミシミシときしんでいる。緊箍児きんこじめられた孫悟空になった気分だ。


 あ、頭が潰れる……!!


 もがかずにはいられなかった。


「お、おっぱいまでぇ❤」


 とろけたピピの声に構わず、俺はジタバタと暴れる。


 しかし、俺の頭はますます締め上げられ、酸素不足も相まって、意識が朦朧もうろうとしてきた。


 こ、こんなバカバカしいことで死んでたまるか!!


 生への執着が俺の体を勝手に動かし、両手をギュッと握らせる。


 フニフニしたピピの胸に、両手の指がめり込んだ。


「つ、強すぎぃ……っ! ひうぅううううううううううううううううううううううっ❤❤!!」


 太ももがビクビクッと震え――不意に力が抜けた。


「ぷはっ!」


 俺は顔を上げ、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。


 あ、危なかった! 渡ったらいけない川が見えた!


 安堵あんどの息をつき――俺は顔を青ざめさせた。


「ひんっ……んひっ❤!」


 ピピが、ぴくっ、ぴくっ、と痙攣けいれんしていたからだ。


 ま、またやってしまったぁああああああああああああああああああああ!!


 罪悪感にさいなまれながら、俺はピピに謝る。


「ゴゴゴゴメン、ピピ!」

「ひうぅっ❤!!」

「うぶっ!?」


 再び太ももに力が込められ、俺の頭を締め付ける。


 フ、フリダシに戻る……だと!?


 またしても呼吸を阻止され、


「ひゃひっ❤!?」


 またしてもピピが嬌声きょうせいを上げる。


 俺は内心で叫んだ。


 もう勘弁してくれぇええええええええええええええええええええええええええええ!!





 約一五分後、ようやく俺たちはいましめを解くことができた。


 それまでに、ピピが達した回数は三回。


 過去最悪のハプニングだった。

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