ずっと踊らされていたが、俺に屈するつもりはない。――2

 俺は目をいた。


 どうしてバレているんだ!?


「手紙は処分してしまえば問題にならない。あとは、きみたちさえいなくなれば解決だ」

「お考え直しを! いたずらに混乱を起こさないでください!」

「話は終わりだ」


 俺の説得は届かなかった。


 ブロッセン王が、衛兵たちに命令する。


「その者たちを討て」

「なっ!?」


『捕らえろ』ではなく『討て』だと!?


 愕然がくぜんとする俺に、衛兵たちが槍を向けた。


 双眸そうぼうに暗い色を宿し、衛兵たちが突進してくる。


 こんなメチャクチャな命令に従うなんて、正気か!?


 俺は歯噛みする。


 説得は失敗だ! もう、争うほかにない!


「みんな、応戦だ!」

「「「「「はい!」」」」」


 即座に五人が立ち上がり、俺たちは背中合わせに円陣を組む。


 謁見にあたり、俺の装備は外されている。武装した衛兵に無手むてで挑むのは、流石さすがに難しい。


 まずは武器の調達だ!


 衛兵のひとりが槍を突き込んできた。


 俺は体を右にズラして回避し、左手で槍のを握る。


 目を見開いている衛兵を蹴り飛ばし、槍を奪い取った。


 蹴り飛ばされた衛兵に代わり、ふたりの衛兵が槍を突き出してくる。


 俺は奪い取った槍を両手で握った。本来とは反対。穂先ほさきが手元に、柄が相手に向く持ち方だ。


 突き込まれた二本の槍を、すくい上げるように弾く。


 槍を跳ね上げられ、衛兵の両腕が引っ張られた。


「せあっ!!」


 がら空きになった衛兵の胸元に突きを放つ。


 ふたりの衛兵が突き飛ばされ、手放された槍が、カラン、と床に落ちた。


 五人も、衛兵の攻撃をさばいていた。


『武具創造』で生み出した刀で、ミアが槍の穂先を斬り落とし、クゥ、ミアが拳で、ピピが脚で、シュシュが尻尾で、衛兵を弾き飛ばす。


 だが、衛兵たちはなおも殺到してくる。跳ね飛ばされた衛兵も起き上がり、腰にいた剣を抜いて、再び俺たちに向かってきた。


 俺たちが全力で戦うと、衛兵たちはただじゃすまない。敵対することになったが、ひとを傷つけるのは、やはりイヤだ。


 手加減しなくてはならない状況下、数でごり押しされたら厳しい。


 ここでぶつかり合うのはマズい! 一旦いったん逃げて、作戦を練り直す!


「ピピ、『ウインド』で衛兵たちを吹き飛ばしてくれ! シュシュは『ミストヴェール』!」

「ん!」

「は、はい!」


 ピピが烈風を起こし、衛兵をまとめて吹き飛ばした。


 シュシュが発生させた濃霧が、謁見の間を覆い尽くす。


 俺は叫んだ。


「撤退!!」

「「「「「了解!」」」」」


 俺たち六人は、謁見の間を飛び出した。

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