意地の悪い輩だらけだが、勇者は結構いいひとらしい。――5

 結局、成果は得られなかった。


「資料に情報は載っていませんでしたし、聞き込みをしても、知っている方はいませんでしたね」

「ご主人さま、どうしよう?」


 ミアが落ち込んだように猫耳をへたらせ、クゥが困り顔で見上げてくる。


「ほかの冒険者ギルドを訪ねてみよう。立ち止まっていても仕方ないよ」


 ふたりを励ましつつ、俺は続けた。


「とは言え、今日はもう遅いから明日にしようか」

「ん。明日も、頑張る」

「あ、諦め、ません!」


 ピピが珍しく眉を上げて頷き、シュシュが、むん! と気合きあい充分な様子で拳を作った。


「それじゃあ、夕食をとりにいこうか」

「「「「はーい!」」」」


 元気よく返事をする四人とともに、冒険者ギルドを出る。


 直後、俺は目を丸くした。


「やっと見つけたわ」


 呆れ顔のエリスさんと出くわしたからだ。


「ど、どうしてエリスさんがここに!?」

「あなたたちを追ってきたのよ」


 はぁ、と、エリスさんが疲れたように溜息ためいきをつく。


「速すぎるわよ、あなたたち。おかげで『聖者』スキルを使うはめになったじゃない。戦闘以外で用いたのははじめてよ」

「そこまでして、どうして追いかけてきたの?」


 クゥが鋭い目付きで尋ねた。


 四人が、エリスさんの前に立ちはだかる。


「もしかして、ご主人さまを襲うため?」

「解答によっては、わたしたちは全力であなたを排除します」

「そう殺気さっき立たないで。あたしに事を構えるつもりはないから」


 睨みつけるクゥとミアに、エリスさんが戦闘の意思はないとアピールするように、両手を挙げた。


「みんな、落ち着いて」と四人をなだめ、俺はエリスさんに質問する。


「なんのために、俺たちを追ってきたんですか?」

「あなたたち、レインボーサーペントのことを知らないのでしょう?」


 エリスさんは、逆に問うてきた。


「どうしてエリスさんがそのことを?」

「ミハエルさんがルールを追加したからよ。あのルールは、あなたたちがレインボーサーペントについて詳しくないことを見抜き、付け加えられたと思ったの。大方おおかた、あたしを勝たせるためでしょうね」


 エリスさんが再び溜息をついた。


「まったく……余計なお節介なのよ」


 ぼやき、エリスさんが俺と目を合わせる。


「あなたたちがポッサを訪れたのは、レインボーサーペントの情報を得るためでしょう?」


「違う?」と訊くエリスさんに、「その通りです」と答えながら、俺は警戒する。


 エリスさんの目的が、いまいちつかめない。


 いまは勝負の最中さいちゅうだから、レインボーサーペントの討伐に向かうのが、エリスさんの自然な行動だ。


 それなのに、エリスさんはわざわざ俺たちを追いかけてきた。


 なにがしたいんだ?


 戸惑う俺に、エリスさんが言い放つ。


「あたしがレインボーサーペントについて教えてあげる」


 俺たち五人は、揃ってポカンとした。

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