彼女には裏があったが、それでも俺は見捨てない。――8
「これからどうしよう、ご主人さま」
「シュシュさんの『隷属状態』は、
「ん。放って、おけない」
シュシュが泣き止んだころ、神妙な面持ちで、三人が俺に尋ねてきた。
三人の意見はもっともだ。
『隷属状態』にある限り、シュシュの居場所はデュラハンにバレてしまうし、今後、『支配状態』に
『隷属状態』を解かない限り、シュシュを救うことはできないんだ。
考えをまとめ、俺は三人に答える。
「シェイラさんに事情を伝えて、『解呪』を施してもらおう。シュシュは『支配状態』じゃないから、『解呪』に
「け、けど、あたし、王国騎士団の方々を、お、襲ってしまいました、よ?」
シュシュがおずおずと意見してきた。
たしかに、シュシュは王国騎士団を壊滅させようと動いていたし、見張りの騎士たちも昏倒させている。脅されていたとはいえ、許されるとは限らない。
それでも、俺には勝算があった。
「デュラハンに『隷属』されていたってことは、デュラハンの情報を提供できるってことだ。デュラハンが抗争を起こしていた黒幕だと判明した現状、シュシュは貴重な情報源になる。無下に扱うような真似はしないはずだよ」
無論、万が一ひどいことをされそうになったら、俺たち四人でシュシュを守るつもりだ。
「そ、それでも、あたしがいたら、みなさんに、め、迷惑を、お掛けしてしまいます」
シュシュがうつむいて、キュッと唇を引き結ぶ。
「あたしは、デュ、デュラハンに、位置を把握されて、しまいます。あ、あたしを助けようとした
シュシュの体がカタカタと震え出す。
予想では
シュシュが自分のもとに戻ってこなかったら、デュラハンも異変を察して、俺たちの前に姿を現すだろう。
つまり、シュシュを助けることは、デュラハンと――魔公と対決することに繋がるんだ。
けど、それがどうした?
「構わない」
俺は断言した。
シュシュが、ハッと顔を上げる。
涙に濡れた瞳を真っ直ぐ見つめ、俺はシュシュに告げる。
「シュシュを助けるためなら、どんなことだってやってやる」
「大丈夫! ご主人さまは、魔公のドッペルゲンガーを倒したんだから!」
「もちろん、わたしたちも力になります」
「シュシュは、仲間だから、当然」
俺に続いて、三人もシュシュに約束する。
三人とも、気合い充分な
「シュシュは俺たちが守る。たとえデュラハンを相手にすることになっても」
「あ、主さま……みなさん……」
またしても泣きだしそうになったシュシュに、俺は柔らかく微笑んだ。
「ほう。
闇のなかから、
その声を聞いた瞬間、シュシュの肩が跳ね上がった。
「結構、結構。
ガシャガシャという金属音を伴って、足音が近づいてくる。
俺は素早く振りかえり、ミスリルソードを抜いた。
三人も、警戒するように身構える。
「しかし、それは
松明型魔導具の明かりが、声と足音の
首のない
その色は奈落の如き漆黒。背には、
頭部がないにもかかわらず、俺よりも
全身甲冑は、胸元にひとつ埋め込まれた、目玉のような宝玉をギョロつかせ、俺たちを見下ろす。
「デュ、デュラハン……さま……」
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