彼女には裏があったが、それでも俺は見捨てない。――9
「なかなか戻ってこないと思い、来てみれば……ククッ、面白いことを話しているではないか」
宝玉の視線に射貫かれ、シュシュが「ひっ!」と声を引きつらせる。
俺はシュシュを
「俺の仲間に手を出すな」
「
悪びれもせずに言い切ったデュラハンに、俺はギリッと歯を
「傲っているのはどっちだ? シュシュは誰のものでもない。お前が勝手にシュシュの自由を奪ったんだ」
だから、
「俺たちが、力尽くで取り戻す」
宣言すると、デュラハンが肩をすくめた。
「失敬な小僧だ。我の邪魔をしたうえに、所有物にまで手を出すか。ドッペルゲンガーを倒したことで、調子に乗っているようだな」
デュラハンがシュシュを指差す。
「シュシュ、この小僧に教えてやれ。貴様は誰のものだ?」
デュラハンに問われ、シュシュが息をのむ。
シュシュの呼吸が速まる。全身を汗が伝い、顔色は蒼白そのものだ。
「シュシュ」
恐怖に支配されているシュシュに、確固たる覚悟をもって伝える。
「俺は、きみを必ず守る。信じてくれ」
「主、さま……」
しばしの沈黙ののち、シュシュが口を開く。
「あ、あた、あたしは、主さまの、ものです! 主さまたちの、仲間、です!」
勇気を振り絞ったシュシュの宣言に、自然と俺の
よく言ってくれた、シュシュ。よく恐怖を乗り越えてくれた。
あとは、俺たちに任せてくれ。
俺たちは眼差しを険しくして、臨戦態勢をとる。
「……ふむ。そうか」
そんな俺たちを眺め、デュラハンが手のひらをかざした。
「まあ、貴様の意志など、どうでもいいのだがな」
直後、背後でジャラジャラと音が聞こえ、
「い、いやあぁああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
シュシュの悲鳴が木霊した。
「シュシュ!?」
慌てて振りかえると、シュシュの首元にアザが浮かび、そこから無数の鎖が生えている。
無数の鎖は、寄生植物のように、シュシュの体に絡みついてた。
「たしかに、我の『隷属』スキルは神獣には効果が薄い。しかし、我が手ずから力を込めてやれば、その限りではない」
シュシュの首元から生えた鎖が、デュラハンの手元まで伸びる。
デュラハンが鎖を握りしめた。
瞬時、シュシュの悲鳴が不自然なまでにピタリと止まり、まるで人形になってしまったかのように、顔付きから感情が失われる。
「姿を現せ、『レヴィアタン』」
デュラハンの
尻尾がより太く、長くなり、上半身も蛇のものに変容していく。
やがてシュシュは、
神獣『レヴィアタン』!? これが、シュシュの真の姿なのか!
俺は神獣形態となったシュシュを呆然と見上げる。
「やれ、シュシュ」
デュラハンが冷ややかに呟いた。
シュシュの
「え?」
思いもしなかったシュシュからの攻撃に、俺は
我に返ったとき、シュシュの尻尾は目前に迫っていた。
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