クエストは順調だが、どこか引っ掛かって仕方ない。――2
ピピの案内で向かったのは、フィナルの南東。森に面した村の
俺とシュシュが目的地付近まで来ると、甲高い悲鳴が上がった。
見ると、村人と思しき女性が尻餅をついている。
「い、いや……助けて……」
尻餅をついた女性ににじり寄るのは、ロングソードを握る剣士と、杖を装備した男女の魔法使いだ。
剣士の男がロングソードを振りかぶり、女性が「ひっ!?」と顔を青ざめさせる。
『ピピ、足止めしてくれ!』
俺は駆ける速度を上げながら、ピピに指示を送る。
「『ウインド』!」
俺の指示に答え、ピピが魔法を行使した。
頭上から来た突風に
そのあいだに、俺は女性の元に駆けよった。
「大丈夫ですか?」
「あ、あなたは?」
「『刺客の捕縛』クエストを受けた冒険者です。あいつらは俺たちが捕まえますから、あなたは安全な場所へ避難してください」
「は、はい」
女性がヨロヨロと立ち上がる。
青白い顔で荒い呼吸をする様子は、一目で危ういとわかった。
「シュシュ、念のため、このひとについていってくれる?」
「わ、わかりました!」
「このひとをひとりにしてはいけない」と判断した俺は、シュシュに護衛を頼む。
「あ、主さま! ご武運を!」
シュシュの残した
ふたりを見送った俺は、視線を三人組へと戻した。
ウインドで吹き飛ばされた三人組は、すでに体勢を立て直し、戦闘準備に入っていた。
「『ビルドアップ』!」
男性のほうの魔法使いが、剣士の男に身体強化魔法をかける。
俺がミスリルソードを引き抜くと同時、剣士の男が猛然と突っ込んできた。
剣士の男がロングソードを
俺は一歩下がって回避し、続く振り下ろしの一撃をミスリルソードで弾いた。
男の猛攻は止まらない。
横薙ぎ、
身体強化魔法の影響もあるだろうが、もともと相当な
それでも、こちらが
いくら手練れと言えど、身体強化魔法がかけられていると言えど、フリードのほうがよっぽど強かったからだ。
成長した、いまの俺には通じない。
次々と繰り出される斬撃を、俺は危なげなく
ただ、俺に課された任務はあくまで『捕縛』であり、本気で相手をするわけにはいかない。それが、少々
けど、やりようはいくらでもある。
男が放った逆袈裟の一撃を、ミスリルソードで
ようするに、相手を昏倒させればいいんだ。それならば、タックルでこと足りる。
俺は脚に溜めた力を爆発させた。
突撃。
豪速のタックルが剣士の男へと迫り、しかし、届く寸前で、斜め後ろへの跳躍によって回避された。
意表を突かれた俺の、視線の先で、女性のほうの魔法使いが、杖を構えていた。
「『フレイムバレット』!」
放たれた炎の弾丸が、一直線に俺に迫る。
万全の状態ならなんなく避けられただろうが、いまの俺はタックルで自分の体を飛ばしいている
「くっ」
俺は歯を食いしばり、無理矢理に地を蹴って横っ跳びしようとした。
「『バインド』!」
瞬間、男性の魔法使いが拘束魔法を行使する。
地を蹴ろうとした俺の足を、拘束魔法が生み出した
敵ながら見事な連携。もはや回避は不可能だ。
俺は舌打ちしつつ、腹を見せるようにミスリルソードを構え、フレイムバレットの盾にする。
「『アクアウォール』!」
被弾の直前、俺の目の前に
「ご、ご無事、ですか! 主さま!」
シュシュが俺のもとに近寄ってくる。
どうやら、安全な場所に女性を避難させ、俺の援護にきてくれたらしい。このアクアウォールは、シュシュの魔法なんだろう。
「ありがとう、シュシュ。助かったよ」
シュシュに礼を言って、足を拘束する蔦を、ミスリルソードで斬り裂いた。
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