第35話 反省は程々で良いと思います



「ほらよ、朝飯だ。たっぷり食って今日も頑張れよ」

「ありがとうございます。ガリアさん」

 朝食を取るために、ガリアの店に来た優気達。

 ガリアは、カルマ達の様子がおかしいことに気付き優気に聞く。

「ところで、何かあったのか? 嬢ちゃん達は随分と元気が無いようだが・・・」

「ええっと、昨日1日中寝てしまって。僕と一緒に行動出来なかった事を後悔しているようで」

「はっはっは、何だそんなことか! 誰も料理に手を付けないから心配したんだが、それだけ疲れていたってことだろう」

「店主、笑い事ではない。優気様から丸1日離れ、ずっと寝ていたのだ。本来なら重い罰を受けなければならないのに」

「本当ショック~。折角、優気に付いて来たのにあんなに寝るなんて思わなかったわ。優気と一緒に色々な場所にお出かけしたかったのに」

「カルマもエレナも気にしないでよ。お出かけだって、これからでも十分出来るから」

「しかし、優気様、やはり私は何かしら罰を与えて下さった方が良いのですが?」

「まあ、すでに罰を受けているような奴もいるけどね」

 エレナの視線の先には、料理を食べるのを我慢しているシルファがいた。

 いつもなら、口いっぱいに料理を詰め込んでいるが、今は涎を垂らしながら目の前の料理を見つめている。

「お、美味しそうな料理が目の前に・・・ダメだ、これを食べてはいけない。これは、自分への罰だ。主殿の傍から離れてしまった。・・・ああ、でも一口だけなら」

「あれは、流石に可哀想じゃない?」

「そ、そうだな」

「シルファ、一緒に朝食を食べよう?」

「で、ですが、主殿」

「僕が皆と一緒にご飯を食べたいんだ。残したらガリアさんにも迷惑だしね」

「確かにそうですが・・・」

「それじゃあ、僕が皆にやって貰いたいことを考えておくよ」

「・・・分かりました」

「カルマとエレナもそれで良い?」

「優気様が、そう仰るのなら」

「私は罰は受けたくないけど、後でそこの2人に何を言われるか分からないしね。優気の言うことを聞くわ」

「よし、それじゃあ・・・いただきます」

 

ガリアの店で朝食を済ませた後、ギルドに向かう優気達。

「あ、優気さん、おはようございます」

「おはようございます。リアさん」

 掲示板の前で依頼を整理していたリアが優気達に気付き挨拶をしてきた。

「昨日は、処理に困っていた依頼を受けて頂きありがとうございました」

「いえいえ、結局1人じゃあまり進められませんでしたし、体が臭いままギルドに戻ってきて逆に迷惑を掛けてしまいました」

「あの程度のにおいはくさいの内に入りません。モンスターの討伐部位の処理やモンスターの返り血を浴びた冒険者の相手をするより全然マシです。それより私、優気さんに謝らないといけません」

「何をですか?」

「この間お願いした館の依頼、Bランクの依頼に変更するという話しを今朝ギルドマスターから聞きました。そんな危険な依頼を優気さんに任せてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げるリア。

 頭を下げたリアに驚き、慌てる優気。

「あ、頭を上げてください! 仕方無いじゃないですか。僕達が受けるまではFランクの依頼だったんですし、それに無事に戻って来ましたから」

「ですが、死んでいたかもしれません」

 「死んでいたかも知れない」というリアの言葉を重く感じた優気。

 顔を上げ、真剣な表情で優気を見つめるリア。

「冒険者は危険な職業です。いつ命を落としてもおかしくない冒険者達の生存率を少しでも上げるのが私達ギルド職員の仕事です。今回のようなミスで誰かが死んだ場合、それは私達が殺した事と同じなんです」

「それは・・・いくら何でも言い過ぎなんじゃ」

「いいえ、それ位の気持ちでいなければ冒険者の方々に失礼ですから」

「リアさん・・・」

「私のミスで優気さんの命の危険をさらしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。そして、生きて帰って来てくれて本当にありがとうございます」

 もう一度、頭を下げるリア。

 ギルドのミスで、優気は確かに死ぬ可能性もあった。

 しかし、リアの話しを聞き、冒険者の為にギルド職員がどのような気持ちで働いているのかを知る機会にもなった。

「確かに、今回死んでもおかしくない事もありましたけど、良いこともありましたから大丈夫です!」

「・・・本当に優気さんは、他の冒険者なら怒鳴り散らかしているような話しなのに」

「前向きに考えることは大事ですから! ・・・それに、やっぱりリアさん、ギルドの皆さんが悪いとは思えないので」

「優気さんがそう仰るならこの話は終わりにしましょう。これからもよろしくお願いしますね」

「こちらこそ、よろしくお願いします。あっ、そうだ、仲間が増えたんですけど手続きとか必要ですか?」

「あ、それならギルドマスターから聞いているので大丈夫ですよ」

「えっ? そうなんですか?」

 リアは、周りを見渡し近くに人が居ないことを確認する。

 優気の耳元で小声で話す。

「実は、カルマさん達の正体を教えて貰ったんです」

「えっ、え~~~むぐっ」

 驚きで声が出そうな所をリアに手で防がれた。

「お、落ち着いて下さい。この事は、私と一部の職員しか知りませんから」

「・・・・・」

「私も最初は驚きましたけど、優気さん達が危険な人達じゃないことはちゃんと分かっていますから。ギルドマスターは、私達にも情報を共有しとくことで優気さん達のサポートをしやすいようにしたかったんだと思います」

「(確かに、もしカルマ達の正体がバレてもフォローして貰えるかもしれない。それに、リアさんなら安心出来るよね)」

「エレナさんの事も聞いているので安心して下さい」

「分かりました。ありがとうございます」

 カルマ達の事を知られていて驚いた優気だったが、リアの話しを聞いて安心した。

「(・・エルさんも流石に1人じゃ抱えきれなかったのかもしれないな)」

 エルに申し訳無いと思い、改めて出会えて良かったと感謝した優気だった。








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優しい心を持った人になりなさいと育てられた自分が転生したら職業はテイマーに成りました 夢見 望 @12761476

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