「ディパーテッド」 監督:マーティン・スコセッシ

 

 上映時間150分。


 2006年にアメリカで公開されて、アカデミー賞で主要4部門の作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞を授賞したアクションスリラーです。

 この年の作品賞には、菊地凛子が出演しているイニャリトゥ監督の「バベル」、イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」、「リトル・ミス・サンシャイン」、ヘレン・ミレン主演の「クイーン」がノミネートされています。


 なお、この年の監督賞を発表するプレゼンターが、スコセッシ監督の友人でもあるフランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグという豪華な3名の監督であったことも、いきはからいとして話題になりました。


 というのも、スコセッシ監督の作品は、アカデミー賞で大勢の役者に賞をもたらすものの、監督自身が作品賞や監督賞を授賞したことは、この「ディパーテッド」までありませんでした。

 カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた「タクシー・ドライバー」も、アカデミー賞では作品賞のノミネート止まり。「レイジング・ブル」、「ギャング・オブ・ニューヨーク」、「アビエイター」では、監督賞と作品賞のノミネート止まり。

 ですから「ディパーテッド」は、6度目のノミネートにして、30年越しにやっと授賞できた作品なんです。


 授賞した賞のうち、脚色賞というのは、おくられる賞です。海外の映画をリメイクした作品として、アカデミー賞作品賞を授賞したのは、本作品が史上初。

 「ディパーテッド」の元ネタは、2002年に公開されて大ヒットした、香港ノワール3部作「インファナル・アフェア」。中国語のタイトルは「無間道」だそうで、邦訳ほうやくすると「無間地獄むげんじごく」です。

 監督は、アンドリュー・ラウとアラン・マック。

 この2人のコンビ監督は、2006年に金城武が出演した「傷だらけの男たち」を世に送り出し、アンドリュー・ラウは韓国映画「デイジー」の監督もつとめています。

 「インファナル・アフェア」は、アカデミー賞外国語映画賞の香港代表作品に選ばれましたが、ノミネートされませんでした。この年、日本から選出された山田洋二監督の「たそがれ清兵衛」は、同賞にノミネートされています。



 さて、「ディパーテッド」の原題は、「The Departed」。

 Departedとは、「最近亡くなった者」とか「今はいない者」や、「過ぎ去った」「過去の」、「死者」などと訳すことも出来ます。

 タイトルにはTheがついているので、特定の人物を指していますが。



 舞台はアメリカ東部マサチューセッツ州、ボストン南部のサウシーと呼ばれる治安の悪い地区。

 ボストンには名門大学が多くあり、チャールズ川を北にはさんだ対岸のケンブリッジには、ハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)もある。

 一般的に、アメリカでは、都市の北部は金持ちが、南部は貧しい者が住むとなかば決まっていると聞いたことがあります。


 ジャック・ニコルソン演じる、フランク・コステロというアイリッシュ・マフィアのボスは、少年の頃から目をかけている若者コリン・サリバンを、マサチューセッツ州警察へ内通者として仕立て上げます。

 マット・デイモン演じるコリンは、優秀さを認められ、特別捜査班に配属されることに。

 そこでの任務で、彼が捕まえようとするのは、大物フランク・コステロ。

 実際には、フランクに警察の捜査情報を、コリンが流すわけですが。


 そんな中、マフィア内の情報を警察に流す者がいると、フランクが気づきます。

 コリンは警察内部で、さぐりを入れようとしますが。


 マフィアに潜入する警察官、アイルランド系のビリー・コスティガンを演じるのは、イニャリトゥ監督の「レヴェナント: 蘇えりし者」で、ようやくアカデミー主演男優賞に輝いたレオナルド・ディカプリオ。

 犯罪組織に5年間も潜入するためとはいえ、刑務所に投獄されるという徹底っぷり。警察学校を中退したという嘘の経歴をでっちあげられ、所内でコステロの手下たちとの仲をきずきます。

 いくらボーナスが出るとはいえ、ビリーが警察官だと知っているのは、彼の本当の上司2人だけ。

 そんな中、ビリーもまた、警察にマフィアの内通者がいることを知ります。


 互いの情報源を駆使くしし、立場の違う内通者を突き止めようとするコリンとビリー。

 ビリーだけでなく、コリンもまた、素性がばれればマフィアに殺害されることに。

 元ネタとなった「インファナル・アフェア」の中国語のタイトルが、鑑賞後に頭をよぎります。


 舞台をボストンに移したことで、「ディパーテッド」の脚本は、ボストンに実在した犯罪組織とジョン・コナリー元FBI 捜査官をもとにしたと言われています。

 ウィンターヒル・ギャングは、犯罪者によって組織された連合で、その多くがイタリア系やアイルランド系でした。典型的な組織犯罪(敵対するギャングの殺害やドラッグの売買)に手を染め、競馬での八百長やIRA(アイルランド共和軍)への武器密輸などで知られています。

 ジョン・コナリーは、FBI捜査官でありながら、ウィンターヒル・ギャングを始めとする犯罪組織との関係を深め、密輸や捜査妨害、そして殺人の罪で有罪となった実在の人物です。


 さて、ビリーとコリン、どちらが先に相手を見つけられるのか。

 命がけの潜入捜査の行方は。

 あっという間の150分です。












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どんでん返しのミステリ好きが、二度観必死の映画を勧めてみる 更級ちか @SarashinaChika

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