Fram

@kakuriyuki

第1部

Fram

R18


.人物表

フラム 主人公、物分かりがいい。

ユキ ちょっと馬鹿なくらいが可愛いと言われて本気にした子。自称魔法使い。

フィーリア ギルドの現受付スタッフ。エルフ?

ギデ・ガグ 巨漢の漢。でかい。

ゴルド・ライグ 猫の呼び方はにゃんこ派なギルマス。

アルマ・ライグ ギルドの前受付スタッフ。寿退社。

ミーミル・ライズキュート イニシャル=M 自称白魔導士の冒険者。A級魔術師。

ワイズ・スピネル イニシャル=W 呼んだら来るけど今回は出てこない。

サティ 馬。


ここにきて出てきたイニシャルって?

A=アッシュでZ=ザキラだよ、これで(パクリ元が)わかる人は分かると思うよ。どっかの組織で使ってた偽名です。

.1

『シナリオ=F』

 結論はまだ出ない=Aと思っていた、BだからAが真実だと信じていた。

.A

 命の始まりとは肯定である。

.2 Fram

 目を覚まさなかった。いや、目を閉じていなかった。瞬き。さっきまで眠っていなかった。


 否定。今までずっと起きていた。目は開いていたのだから。前後の状況が合わないという言葉を思いつく。


 違う。私はここで寝ていたんじゃない。寝ていたわけでもない。目を回すように辺りを見渡した。……やがて二人の男女が走り寄って来た。


 分からない。状況が分からない。辺りの瓦礫や怪我人……血とうめき声。つまり戦争?何故か自分の周りには円を描くように土塊つちくれの一つも落ちていないが、瓦礫の下敷きになった人もいる。


 理解ができない。今目の前にいる二人は何事かを私に叫んで、いや、穏やかに、私に何かを告げている。しかし言葉が意味をなさない、耳が聞こえなくなったか?いや、周りのノイズは間違いなく聞こえる。


 何も伝わらない。「何が…あったの?」と彼らに尋ねた言葉は、早口になった不明な言葉で返される。今やっと、言語が違うことに気づいた。端々のク《qu》やケ《que》、頭語の冠詞からスペイン語辺り、と予想を付けるが、流れるような発音で、文章の単位も意味のとれる単語も聞き取ることができなかった。この勉強は何かあった時に役立つだろう、という言葉を軽視していた事に後悔を思う。


 質問や尋ねるべきこと、共通の言語やしぐさ、思いつく手段をすべて否定。今できることは首を傾げることだけ。違う言語の人間だと思われるより、言葉を話せないと思われる方がいい。生きる為に、多分。分かっているのはこの状況で放り出されたら絶対に死ぬということなのだから。


 七度の否定、漸くとれる私の行動は、尚も優しい声音で話しかけてくる二人のうちの男の方に擦り寄って猫なで声を上げること。

「にゃぁあっ♪……にゃっ♪あっ♪」

 彼が何かを言う度にぐりぐりと躰を擦り付けて甘えて、彼の躰を上ろうとしては滑ってわざと躰を密着させて。……全力で媚びを売った。

 先生は言ってくれていた、自分で生きることができないとわかっているならば、周りの人間達に無力だと思われなければならない。何かが人よりできるとわかられてはいけない、適度に失敗して見せなければいけない。……大丈夫です。

.3 (ユキ視点)

 冒険者ギルドという場所がある、単に金が動く場という意味だが。

 A級冒険者の肩書きを得てからはこういう場所に来ることはなくなっていた、街を移る旅人をしていたが一度もギルドによらない事は何度もあった。色々とうざったいのだからしょうがない。

 まあ。来たくはないけど金がないときにはこういうとことに来るのも仕方がない、体売る方が稼げるけど。ま、たまにはA級冒険者様として仕事をサラッとやらないと、イメージってものがあるしね。

 ごつくて要塞然とした建物の前で立ち止まり、手を出すのが面倒だったので蹴り開け。

「ぐぶぁっ!?」「あー!あー!」

 押戸だと勝手に思っていた扉は一切開かずけっつまづき頭から扉に衝突した後、内側から開いた扉は私をかなりの勢いで吹き飛ばした、ぶっ倒れるまで飛んでいたので結構飛んだ。のたうち回るほど痛い。

「ああ、ああ、すまん、嬢ちゃん立てるか?悪かったな、痛かったろ?」扉の幅ほどはあろう巨漢の男が心配そうに覗き込む傍らを「なぁなぁ今の見た?見た?」と後ろから見ていたらしいひょろい奴が入れ違う、ちょっと涙が止まらない。元から赤い眼が更に赤みを帯びる。

 いい、大丈夫、と軽く振り払いながら入場。ぎゃははははははははとかバカみたいな笑い声が迎える、くそ。ていうかギルドで酒飲んでやがる、こういうのがいるから治安が良くなんないんだよなー。

「おい、おい、そんな笑うことはないだろうよ、ケガさせたんだからさ、笑ってくれるなよ」よし、お前が話を聞いて口角をピクリとも上げない優しさを持っているなら私は一発ただでやらせてやる、マジだ。絶対だ。

 結果、苦笑だった。よし。糞。

 受付へ、面白そうに笑う彼女に話しかける、女の子は笑っている方が可愛いので許せる。さらに言うとエルフだ、超かわいい。

「はっ。初めての方ですよね、ご登録ですか?」

 はと発音すると口角を上げて耐えきれなくなったように笑いながら迎えられる。よし。

「ユキ・ライゼ・フォン・フィグル」

「はい?」

「危険種だ」ごとりとA級の登録証をテーブルに置き見せつける。

「はい?」

「危険種の依頼全部受ける」

「はい?」

「ぜ、ん、ぶ、ころすー!!!」

「あ、A級なんですね、へー。あぁ危険種の依頼は掲示していないので、おかけになってお待ちくださいー」

 ずっと笑いながら最後は間延びした声を残しつつ奥へと消えていった。

.4 エロシーン1(ユキ)

「なんか眼やばくね?大丈夫?」

「あーこれ?魔眼だぜ魔眼」

「魔眼って初めて見たぜ、すげー、何ができんの?」

「真名看破。偽名名乗ってても無駄だぜっ」

「かっけースパイとか見破れんじゃん」

「そうそう、でもさー国の依頼とか受けると狙われるじゃん?だから距離置いてんの」

「なあ、なあ、ほんとに危険種やんのか?他のパーティーのやつ今はいないのか?」

「いないっていうかずっとソロだよ~」

 ほへーっと間延びした時間が流れている、話してみれば酒は奢ってくれるしいいやつらだった。既に三杯目となったビールを流し込む。

「しっかし危険種ってパーティー必須だろ?」

 そうだったそうだったと誰かが追従する。愉快。

「ずっとソロでやってるし、ほとんどの危険種は討伐実績あるからさ~」

 つえーんだなー、すげーと言った声、そうなんだよ。ほんとはな?

「なぁなぁ、俺も連れてってくれよ!一人でやれるんなら見学してみてもいいだろ?」

 いいなー俺もーと追従。ふーんしかし甘いな。

「ま、来てもいいが炎熱耐性5以上な」

「5か……5かよー、高すぎるだろー」

 戦闘は魔術師が仕切っている。耐性とは魔術師がパーティーで戦う為に魔術師以外のメンバーに要求される数値だ。……巻き込まれても死なないために

「5ってどれくらいだ?」

「大やけどを負った状態で上位種の魔獣討伐、更には低酸素状態で5分以上正常に活動できること」

「えぐいなー、おい」

「土の方がえぐいと思うんだよね、四肢のどれかが抉れた状態で上位種討伐、更に大出血しながら5分以上戦闘……だったろ?」

「どれもぐろいわー」

「普通A級の魔術師でも3とか4なのにな、ユキちゃんってA級の中でも強いんだな、流石だぜ」

「まっソロだと手加減しなくていいしな」

 ひゅー、かっけーとか正当に褒めたたえる声、いやー強いってばれるのは怖いぜ。

「あー、そんなユキちゃんでも酒が入ると弱いんだな?」

 服の中に手を入れられて胸を揉まれる、ワンピースタイプの服は一切の抵抗もなく、ブラジャーを外されて足元に落ちるまで何もしないでいた。偶然を装って胸を触ってきたり、体に触れて来るのは笑顔で対応することができていたが、これは誤魔化しようがない。

「ねえ、酔っちゃったの?」

 楽しかった雰囲気から醒めて、軽く腕を掴むが止める気はないようでびくともしない。表情も消える。

「A級魔術師様のくせに無様な格好だよなぁ?」

 周りの声も侮蔑に変わる。

「燃やしちゃうわよ?」

 それでも止めない彼らには一応抵抗しないといけない、……A級魔術師だしな。

 体の熱が上がっていく、特に魔力を使わない熱コントロール。

「おお、熱い熱い――そんでさー昨日のことなんだけどユキちゃん見かけたんだよね」

「火傷しちゃうよ?」

 忠告にも言葉と胸を揉み続ける手の動きを止めずにいる。言ったからには火傷させないといけない。嫌だけど。

「路地裏でさー、ユキちゃん体売ってたよね?」

「それが?」

 まぁ体を売ってるのは間違いない、ばれて困ることでもないし。

 緩やかに熱は上がっていく。

「それでさ、ユキちゃん無理やりやられてるみたいだったけど、大丈夫だった?お金もらえてなかったみたいだったけど」

 ぴったりと、上がっていた熱が止まり安定していく。

「俺が知りたいのはさ、ああいうプレイで事前に金貰ってたのか…、でももしかしたらだけどさ、ほんとにされてたならそういうのが好きってことだよなぁ?」

 胸を包んでいた指が乳首を抓っていた。

「ひゃぁっ……んっ、変なことしないでよ…」

「なぁ、ユキ、俺らさ、お前を酒に酔わせて廻すつもりだったんだよな、好きなら言えよ」

「んっ…好き」

 躊躇は少しもなく肯定していた。胸を弄ばれて、無表情を保っているのもやめ腰を後ろに、勃起していたペニスに擦りつける。と雰囲気が変わってからはずっと黙っていた巨漢の男が叫ぶ。

「おい、おい、まて、あんたA級魔術師だろっ!こんなことしたら痛い目に合わせると思ってたのにこんな変態みたいな…、お前のような存在に憧れて目指してる人間も居るんだぞっ!」立ち上がった。

 そして急ぎ足で、足を引きずる様に歩いて立ち去っていく。

「あ……、待って!一番おっきい、よね?」

 振り返るのに間に合わせて足を開いた、周りの人も合わせて、足を持ってくれたり、太ももを擦って気持ちよくしてくれたり、秘所に指を入れて水音を立てていた。

 不快そうに顔を歪め、踵を返し立ち去っていく。残念。

 周りの男たちは今や自分のペニスを弄っていたり、無遠慮に体を触ることで興奮している。

「あいつ魔術師志望だったんだよなー、たしか」

「あんの体格でなぁ?魔力もねえのに」

「お、知ってるぜぇその理由ワケ

「どうせ魔術師に助けられたーとかだろ」

「知ってんのかよ」

「うけるわ、まじかよ」

「んなのいいからとっととやろうぜ」

「パンツ履いてないのは何時でもやれるようにだよなあ?」

 はやった男の一人がペニスを押し付けると、直ぐに挿入された。

「んっ…!んっ、あっ…」

 その男の限界はかなり早いようだ、数度ピストンした後腰を打ち付けると膣内に熱を感じる射精をした。

「いっく……!いくっ!」

 演技ではあるがあでしく絶頂の声を上げる。他の男達にももう完全に遠慮が要らないことが伝わったようで、体を愛撫する手とペニスを扱く手が熱を帯びていく。

「んっ、もう……中はダメなのに」ダメという割には一切の抵抗もなく。

「いや、ダメじゃねえだろこれはよ」

「つーか一発目から中出ししやがってよ、もうぐちゃぐちゃになるの確定だな」

 抜かれたペニスから滴る精液を確認し、腰をくねらせて中出しされた精液を膣内から噴き出させる、どうするのが輪姦において興奮されるのかを、何度も犯されて知っている為に……。

「あーほんとに出されちゃって、これからもっと注がれることになるけど嬉しいよね?」

「はい……」

 中出しされて陶酔した表情、二本目となるペニスがまた突き入れられている。悦びを感じているのが声にも表れる。

「んっ…んっ……ほんとは危険種倒してから襲われる計画だったのにぃ」

「んー?いやユキちゃんクソ雑魚だしそんな小細工要らないっしょ?」

 ちげえねえと笑いながら賛同される。

「だって、お金いっぱいもらえた後に襲ってもらった方が……」

 あー。と理解が拡がっていく。

「金貰って安心してるところを襲うと」

「危険種倒し終わった直後なら疲れてるし、不覚を取っても仕方ない……よな?」

「いいな、それ」

 その一言は背筋を震わせるほどの快楽を与えてくれた。

「ぜひっ……♪」

「まあだからってまだヤるのは変わんないけどな」

「いくらでも出せるぜこの女」

「くっそガバガバだけどな」

「ちっマジかよ、好きものだもんなぁ?」

「んっ…いぃっ♪あ…オーク様にも使っていただいてるので……」

 舌を出して誘うといきりたったペニスを口に嵌められる、さっきよりも長く、おまんこの方もピストンを受けているので、快楽が全身に立ち昇ってくる。空いている手は自分からペニスを擦りに行った。

「なっ……にをしているんですか」

 女の子の声がした、多分さっき受付で話した子。目を向けることもせずに奉仕し続ける。

「お、フィーリアちゃん、混ざろうぜー?」

「こいつ自分からやってるんだよ、無理矢理じゃないぜ?……おい、そうだろ?」

 答えを求められているのでペニスを咥えたまま首を縦に振り答えた。いい刺激になったようで喉奥に押し付けられると射精される。喉をならし、か細く高い嬌声を上げた。

 フィーリアというらしい少女は何枚かの書類を抱えている。顔を紅潮させ、不安そうに涙目に。

「女の子を酔わせて襲うなんて、自分からでもいいわけないでしょうっ!?」

「いやーでも自分からそうしてくれって言われたしなぁ……」

 ペニスが喉から射精したまま引き抜かれて口内に精液を満たしていく。口を開け下に載せた精液をどうするかを目で問いかける。

「フィーリアちゃんに好きだってわかる様にごっくんしような?」

 吐く方が、エロくなって好きだけど言われたとおりに飲み込んだ。口を開いて見せる。

「おい、中に出すのと外にぶっかけるのどっちがいい?」

 分かりきったことを聞かれている、答えは当然に……。

「そ、そんなこと……絶対に……」フィーリアは涙声に呟いていた。

膣内なかっなかがいいですっおねがいしますっ中出ししてください!」

「おっおっ出るぞ!逝けっ!逝かねえとやらねえぞっ」

 中出し、今度は演技なく体を震わせて啼きながら絶頂。

「いっくっ、いくっ!いくっのっ!!気持ちいいのっ!」

 男は中出ししながら上に乗り出してふーとかぐーとか息を吐き出しつつ、子宮に射精し続ける。射精が止まった後もまた腰を軽く揺すって更に連続で精液を吐き出し続けているようだ。

 フィーリアが、その場から背を向けて逃げ出す、それにも構わない、もっと男の人たちに使われたい……。

 絶頂しているおまんこにまたペニスが突き立てられる、快楽が途轍もない……、サービスの意味も込めて、挿入された瞬間に潮噴き。ピストンが激しさを増す。

「この人はA級の魔術師なんですよ」

 ペニスを扱く手も疎かになるほどピストンに気を遣っていると、いつの間にかフィーリアが戻ってきていた、手には書類の代わりに何かの水瓶を持っている。

「正気に戻ればあなた達は返り討ちに会うんです」

「おいおい、フィーリアちゃんこいつはマジで最初から淫乱――」

「そんなわけないんですっ!」

 叫んだフィーリアに目を向ける、顔を見ると目が座っている、ちょっと狂気的で何をするか危ないかも――。

「飲んでくださいっ気付け薬ですっ」

「えっ」驚く私の口に瓶の縁が当たる、既に開けられた瓶からは刺激臭が……。

「い……いやっ気付け薬は飲むものじゃなっ」

 抵抗するモードではなかった私の口の中に瓶の中身が注ぎ込まれる……、喉の奥から拒絶するほどの吐き気が舌先に触れた瞬間に込み上げてきた。

.5

 吐くのは二回目だった。

 一度目は気付け薬を飲んだ後直ぐに吐いた、すっかり白けた場は最後まで残って射精していった男を残し解散。後で襲う約束はしてくれた。

「ぐ…、うぅ……うっ……」

 泣きながら吐いた、さっきまではあまりにも気持ち悪すぎて吐けなかった。

「大丈夫ですよ」とフィーリアが抱きしめてくる、嬉しいけど完全に違う、お前のせいだ。

 ふー、ふー。と吐き終わった後、荒く息をつくとなんとかまともになってきた。

「落ち着いた?体拭いてあげるからね」

 離れていくフィーリアの体についていき頬を擦り寄せる、更に腕を回してぴったりと体を重ねた。

「ん……、まだなでなでの方がいい?ずっとしてあげるね」

 フィーリアが抱きしめ返してくる、そして吐瀉物が付いていた口元を指で拭った。胸に顔を埋めると強く抱きしめられる。

 安心して甘えながらほんの少しの眠りに就いた――。


 ふと、目が覚める。誰かの手が背中をさすっている感覚。

 目を開いて見るとフィーリアの膝の上で眠っていた。柔らかく膝枕。

 涎を垂らす前に息を吸い込む、そして頭を押し付けた。すりすり。

「起きた?もう怖い人たち居ないからね、安心して起きていいよ」

 体を起こされて、名残惜しく体を擦りつけて甘えていた。

「おきた……」

「何があったか覚えてる?」

「ふぃーりあとけっこんするの……覚えてるよ」

「しないよ」と笑って済まされる。

 くぅん……と鳴きながら猫のように四つ這いに伸びをした、今日の寝起きはハイテンションの様だ。

「うおー、よく寝たの…気持ちよかったー」

「服は着せましたけど、シャワー浴びてきた方がいいですよ。ギルドにあるから入っておいで?」

 フィーリアは最初に会ったときの丁寧なしゃべり方と、甘くて優しい口調を混ぜながら話している。不思議。

「ううん、いいやー。帰ったら浴びるー」

「そうですか……」

 ギルドのソファに座っていた、酒盛りの跡はそのままに、床に落ちた白い塊は情事の匂いを残していた。

「お仕事受けてから行くね、フィーリアちゃんありがとう……大好き」目を見つめて、思いを伝えてから口づけをした。少なくとも嫌そうな様子はなく受け入れられた。

「お酒はほどほどにしないとダメですよ……ああそうだ」

「ユキさん魔眼持ちなんですよね?真名看破の……。ギルドから指名依頼をしたいんですけど」

「んー指名依頼は受けないようにしてるんだ、戦争に巻き込まれるからさー」

「お願い、できませんか?」今度はフィーリアから口づけされた、軽く唇を合わせた後舌で舐められるご褒美付き。

「あ、あ、あっぅ……」「と、特別だよ?」

 背筋が震えるほどの快楽を与えられて、聞かないわけもなく。いや自分からそういうことしなさそうな娘からのそういうことはとても興奮する。

「ギルドマスターからの依頼なんですけど……えーと、先ほどギルドで掘削をしている鉱山のトンネル工事で事故がありまして。情報が錯綜していますので、要領を得ないかもしれませんが聞いてくださいます?」

「うん…」

「鉱山の事故でにゃんこが閉じ込められていて、そのにゃんこの名前が分からないから見てほしいと」

「???」

 ほんの少し考えてから答えた。

「えと、つまり鉱山でにゃんこが見つかったっから名前を付けてほしいってこと?」

「そういうことなんでしょうか?一応ギルドマスターから直接聞いた依頼なんですけど。真名看破の魔眼を持った魔術師がいると話したら直ぐにと」「そ、そう……にゃんこに真名もなにも勝手に呼んだら良いと思うけど……」

「危険種一体分の報酬は出るらしいので、あ、女の子らしいです」

「んー名誉所長みたいにして売り出すのかな、まぁお金出るならいい……けど魔眼目当てに依頼される前歴作ると厄介だから。秘密にしてね?」

「はい、大丈夫ですよ。マスターもその所は十分に理解しているはずですから」片目を閉じてウィンク、可愛い。

「マスターとそのにゃんこはもうすぐこちらにやってくるはずです、……ので掃除でもして待ってて?」

「あ、うん……」

 押し付けられた……。

.6

 もしかして、異世界転生というやつか。

 言葉の祝福ないとダメなんだよね、ちょっと神様なんで……。状況を思い返すとなにか事故が有ったか。

 拉致されて異国に飛ばされたという方が現実にありそうなのに、この状況では異世界転生を期待してそう思い込んでいる、乙女的な空想癖。

 最初に会った男に連れられて部屋に運ばれた、二人の女が掃除をしている。気にせずににゃあんにゃあんと鳴きながら男にまとわりつく。

「あ、にゃんこだ」

 赤い眼のやばそうな女が呟く、にゃんこーなでなでにゃー。と纏わりつかれる、どうしようか。

「ふしゃー!」

「あぅぅっ!?」

 威嚇。うん、最初に出会ったから刷り込みで懐いてると思わせよう、そして他の人間には懐かなければ親の代わりに、なってくれるだろうか。まぁそれよりも先に試すことがあるか。

「ステータス」

 目の前には何も出てこない。おいおい異世界転生物のテンプレ何も踏襲していないな?神様っぽいやつもいないし。

「プロパティのこと?」

 チート、チートはなんだ?まさか何もないとか……あり得るなこれ。現代の知識だけで無双しに行く感じか。数学と科学にはほんの少し自信があるかもしれない。

「あ、ていうか真名見るわね、嫌だったらごめんね?」

 ふむ、取り敢えず生活はあの人たちに寄生すれば何とかなるとして、お金になる知識って何があるだろう、この世界にないものを語ったとして、信じられなければ袖にされるだけだし、何かを作るにしてもお金はかかる。孤児院とかでなく、引き取られることを願うか。

「あ、あ、っていうかやっぱりF?ひ。……久しぶりだ、ね?」

 目の前の眼が赤い女は勝手に動揺している。なんだこいつ。

「ああ、このにゃんこの名前分かったよ?Fね、一応古い知り合いなんだけど、何でこんなところにいるのかな」

 ん……?

「え、なんで計画をぶち壊していくの?」

「え?私何かやっちゃった?」

 手が出た。頬を平手で張る音が高く鳴る。

「う、うぇ。何するのよぅF」

「Fって誰よ、っていうかなんであんたの言葉しか聞こえないの?」

「ん?Fでしょ?あなたの名前。他の人の声が聞こえないっていうこと?どっかコーデック違う世界に行ってたの?それならスピネルに言ってよ、私知らないから」

 顎を掴んだ。

「なんでかって聞いたんだけど?」

「うぐっ、う……多分私だけ共通言語から話してるからだと思うにゃ」にゃで首を締め上げる。

「今すぐ他の人の言葉も聞こえるようにして?」

「ぴぐー」

 豚め。転生して初めての会話が豚相手って私が初めてじゃないのか?――槍の勇者?知らんな。

「私じゃ無理だからスピネルに言ってよぉ……」

「スピネルって誰、連れてこい。私も共通言語を話せばいいってこと?じゃないよね、聞こえないんだから」

「そうだね……呼んだら来るんじゃない?どこにいるのかは知らないよぅ」

 この家畜が使えないことが分かったので、押し倒し体重をかけて首を絞めた。

 殺人が起ころうというのにだれも止めなかった、部屋にいたもう一人の女は無表情で眺めている。そういう世界か。護衛がいる、通訳もいる。

「ぐごっ……ぼぇっ、ぼ、本気ぼんきで絞められた……」

 盆器による殺人か、やった後そう証言してくれるなら、しばらくは捕まらなさそうだ。

 もう一人の女に目を向ける、耳が……エルフか、睨んではいるが助ける気は全くないようだ。

「はあ……っていうか臭いわねこいつら、二匹とも豚の匂いがするわ」

 豚がフィーリアちゃん!と名前を叫んだので犯人の名前がわかった。私を殴って床に叩きつけた犯人の名前だ。

.B

映画や小説、どんな物語を読んでも命の始まりだけは誰にも否定されなかった。

.7

 まぁあれは殴るわね。とは最初に会った男女の女の方、アルマ・ライグの言葉。

 案外口悪かったんだなにゃんこ……。これは男の方ゴルド・ライグ。ギルドマスターらしい。にゃんこって何だおいとは思ったけど口には出さなかった。

 多分二人は夫婦なのだろう、と予想を立てた。

 え、F?大丈夫?と一切止めなかったくせに心配だけして見せている赤眼の豚。

 フィーリアはゴルドに止められてからまだ一切口を開いていない。救助対象だぞ!と制止されて、ようやく殴るそぶりを止めた。媚びを売っておいてよかった。

 いきなり言葉が聞こえるようになってびっくりしてしまって。というのを言い訳にした。

 苦笑で受け止められた。

 しかしいきなりだ、全部。前の私は死にたいとは思っていたが、死ぬ気なんてなかった。普通に暮らしていたから、死の原因について全く心当たりがない。戦争が始まってミサイルでも飛んできたのだろうか。

 最初はスペイン語辺りの言語だった、他の人間の言葉は、今は普通に日本語で聞こえる。聞くべきだろうか、両親候補だった二人には距離を置かれてしまったし、情報を得るための物にするべきだろう。それに最初から話せたいかれた紅の豚もいるし。

 テーブルにお菓子が並べられ曲輪くるわに席についている。真っ先に手を出すのは豚だから当然か。

「ねえFにゃんこ、いつ戻ってきたの?これからどうするのにゃん?」

「ねえ、変なことを聞くかもしれないんだけど、日本って知ってる?」

「知ってるにゃー」知ってるな、日本?なんだそれって聞け。ふざけてんのか。

「最近の流行りよね、日本って国に転生して魔法で無双する異世界転生小説。私結構好き」

 真逆……か、異世界らしいな。まぁまぁ。

 豚がチョコチップの二枚目を取った時に手前に引き寄せる、他の人が取りやすい位置に。

「そう、それよりいつまでもFって呼ばれるのは嫌ね、あんたの名前は?」

「……今はユキだよ」

 無駄にためてしょんぼりとした様子で名乗った。名前を憶えられてないのがそんなにショックか?っていうか初対面だけど。今ってなんだ、偽名かこいつ。

「ねえユキ。私Fって名前じゃないわ、初対面でしょう?いくら私がそのFに似てるからって知らない人と同一視されても困るわ」

「ん、でも。真名がFだし、見た目も全く同じだよ。違うわけないよ」

「違うって言ってるのが分からないの?」

「うん」うんじゃねえよ。


.8

 話している時間が経つごとに、部屋の窓からは暗闇が差し込む。

「Fにゃ」

 フィーリアちゃんとは、普通に話せるようになった、まだ謝られていないが寛大に流そうと思う。ほんの少し潤んだ眼が可愛らしい娘だ。

「FFにゃー」

 ユキは…魔法使いらしい。湯水のように魔法を使い、奇跡のように火を目の前で起こして見せた。

 目の前で初めて見た魔法に少し驚くと、最高に上機嫌そうににたりと、笑われる。可愛く言って憎たらしい以外の感情がわかない。

 特にA級の魔法使いは希少らしく畏怖の対象になっている為……アルマさん曰く、本人を目の前にしながら。ちょっと調子に乗っている人が多いらしい。

「(トランプ取り出して)えふだ(ドッ)」

 ゴルドはユキが取り出したトランプで遊んでいる。

 いや、お金を……報酬の半分を掛けて勝ったら1.5倍、負けたら0.5倍のゲームを吹っ掛けられていた。

「チェックカードって知ってる?Fにゃ」

 私は……、私の事だけがよくわからない。

「じゃあ名前は?」と聞かれて。

 答えることが出来なかった。

 何故だろうか。私が住んでいた、場所では、魔法なんてただのファンタジーでしかなくて、魔法のある世界はただ、本の中にしか存在せずに…。

 そんな世界に自分という存在があったはずなのに、*思い出すこと*ができなくて。

 つまらない日々だったけれど、それほど捨て去りたい記憶ではなかったのに。

 ……ただ感じるのは無性に、Fと言われるのは嫌だという思いで。私は呟いていた。

「Fって呼ぶのやめて」

「じゃあ何て呼べばいい?えふ……じゃないや、アナタとかー?」

 ぺちっと、一枚のカードをテーブルに叩きつけながら言葉が放たれる。

 ふっと、息を吐いて。喋った。ほんの少し頭も下げた。

「Fって呼ぶのやめてください」

「ん……?んぉお、えっほっ…ぐぇはっ」

 ユキはカードから目を離しこちらに向き直る。

「あっんっ、じゃあさー名前変えちゃおうよ――あ、これで勝ちねっ、勝ったにゃー!」

「あああああ、負けが大きすぎる…ぐっ……」

 ゴルドはうなだれて消沈した。もう戻ってくることは、あってもどうでもいいや。

「それじゃあね、説明とかするね」

 できないことを言うんじゃねえ、とは思うだけに留める。

「真名の変更スキル持ってるから、好きな名前言ってくれれば変えられるよ」

 ふっふんと自慢するように鼻を鳴らしてくる。

「ねえ、誰かこの子の言ってること分かる?」

 少しの間を置いて、立ち直ってきたゴルドが。

「分からなくはないが、普通は変えられんぞ。普通じゃないやつだが」

 フィーリアちゃんが続けて。

「別段に、好きな名前を名乗ればよろしいのではないでしょうか?偽名を名乗られる方は大勢いますし」

 ユキが反抗するように答えた。

「Fちゃんは今までだって真名変えて名前変えてたもの、今回もそうするのがいいわ。一番最近の変更はフラメアね、その後Fに戻したけど」

 アルマさんが優しく、ユキには棘を放つ。

「何だかそんな、怪しいことをする意味があるかしら?真名なんて彼女以外には見えないんだから、気にすることはないと思うわ」

「そう……」

 聞いてから、私は考えた。

 特段に、真名なんて気にする必要はない。

 でも自分の名前はFではないこと、それだけは分かっている。

「別の名前を名乗っても、Fという真名が残るのが、とても気になる」

 私の言葉にユキが我が意を得たという表情に。

「じゃあ変えようにゃー、とっととやっちまおう」

 そして表情と口調が変わる。

記述式魔法詠唱castspell

type=castspell

「代償は一つ」

trigger=cost=1

「とりあえずこれは知られてはいけないから。見えなくしよう」

value=Blind

「魔法=ブラインド」

 夜のとばりが降りるように、辺りには暗闇が拡がった。

.9

 真名の変更が終わるまでは誰にも見えないし聞こえないの。貴女には都合よく聞こえるようにしてるけど。

 ユキの声もどこか遠くから聞こえるようだった。

「兎に角なんの名前がいい?またフラメアにする?」

「Fじゃなければ何でもいいから……」

 そう、F以外なら何でもいい、英語名でも名乗ってみようか――折角ならかっこいい名前がいいな。

「フィーネとかどうだろう。ふふ」

「えっとフラメアだからスペルはFRAM《えふあーるえーえむ》……」

「おいちょっと待て」

 何も見えないが手探りでユキを探す。居場所は変わっていなかったので、直ぐに手が当たる。首に手を掛けた。

「がっ……」

 やがて晴れるように闇が消えていく。ユキの手元には光る文字が浮かんでいてFRAMと書いてある。手を離した。

「フィーネとかがよかったっ……」

 愕然と、ほんの少し涙を浮かべながら本当に膝を突いてしまった。

「えっ、大丈夫だよ!いくらでも変えれるからねっ安心してっ」

 走り寄ってきて肩を撫でてくる――、打ち払った。

「フィーネか……いい名前じゃないか、なぁ?」

 同情を元にゴルドが同意を求める。

「え、ええそうね、真名なんて特に気にするものではないわ」

 アルマさんが微笑みながら、励ますように肩に手を掛けながら言ってくる。

「泣かないでください……これからはフィーネ……ふふっ…さんと呼ばせていただきますから……」

「笑っちゃだめだよフィーリアちゃん……」

 何で皆笑った……そんなにおかしいか。ちょっとした思い付きの、かっこいい名前がそんなにおかしいか……。

「違うの……、いいわ、フラムにするから」

「フラメア様?」

「フラムにするから」




 

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Fram @kakuriyuki

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