吸血鬼に一致する情報は見つかりませんでした。
晴間あお
吸血鬼に一致する情報は見つかりませんでした。
吸血鬼で検索。
検索結果。
吸血鬼に一致する情報は見つかりませんでした。
「やっぱり引っかからないかあ」
自分の部屋のベッドに寝転がりながら、ARフォンに表示されたその文字を見て、僕はため息まじりに呟く。
吸血鬼。
そんな名前の怪物をおじいちゃんに教えてもらったのは、西暦2510年の夏。僕が6歳の時だった。
「直彦は、吸血鬼って知っているかい?」とおじいちゃんは言った。
「きゅーけつき?」
「そう。血を吸う鬼と書いて、吸血鬼だ」
「なにそれー!」
興味を持った僕におじいちゃんは教えてくれた。
人の血を吸う怪物だということ。吸われた人は死ぬか吸血鬼の眷属になるということ。姿形を自由に変えられるということ。鏡に映らないということ。日光に弱く、昼間は日の当たらない場所で眠るということ。銀の武器に弱いということ。杭で心臓を貫けば死ぬということ。弱点さえ突かれなければ不死身だということ。
「すっげー。吸血鬼ってめちゃくちゃ強そうじゃん!」
初めて聞く怪物の話に僕はわくわくした。
「でも、どうしておじいちゃんはそんなこと知っているの?」
「じつはね、おじいちゃんは吸血鬼に会ったことがあるんだ」
「ほんとに?」
「ああ、本当だとも」
「血は吸われなかったの?」
そこで僕はハッとして訊ねる。
「もしかしておじいちゃん、じつは吸血鬼とか……?」
「はっはっは。今まさに日の光を浴びているじゃないか」
「ああ、そっか。吸血鬼はお日様に弱いんだっけ。じゃあ会ったけどやっつけたの?」
「その子はだいぶ弱っていたから、やっつけるまでもなかったなあ」
おじいちゃんはしみじみと言った。
「今おじいちゃんがした吸血鬼の話はね、吸血鬼本人から聞いたんだよ。この存在を語り継いでほしい、と言われてね」
「吸血鬼と仲良くなったんだね。誰とでも友達になれるだなんて、おじいちゃんはすごいや!」
「はっはっは。たしかにその子とは友達だったかもしれないな」
おじいちゃんは笑ったかと思うと、遠い目をして言った。
「その友達からの頼みだ。どうだろう、直彦。おまえも吸血鬼のことを覚えておいてくれるかい?」
「うーん」
僕は少し考えてから言った。
「覚えていられたらねー」
「直彦は正直者だね。でも、それでいい。覚えていられたら、覚えておいておくれ」
おじいちゃんは微笑み、僕の頭をなでながら言った。
「忘れ去られるのなら、それはそれで運命なのだろうよ」
その年におじいちゃんは亡くなった。
吸血鬼という名前の怪物を僕の記憶に残して。
それから10年が過ぎ、今は西暦2520年。
この春で高校二年生になった僕だが、吸血鬼のことはちゃんと覚えていた。
おじいちゃんとの大切な思い出だから?
たしかにそれもあるだろう。
実際にあの時の会話は印象的で、よく覚えている。
だけど他にもっと大きな理由があった。
それは吸血鬼の謎に関わることだ。
おじいちゃんに教えてもらった吸血鬼のことを僕は友達に話したことがある。
「ねえ、吸血鬼って知ってる?」
だけど誰もそんな怪物のことは知らなかったし、信じてくれもしなかった。
「怪物が実際にいると思ってんの?」
「怪物が出て来る漫画なら読んだことあるけど、吸血鬼なんて言うのは一度も出てこなかったぜ」
「なんだよそれ。おまえのおじいちゃんが勝手に作っただけじゃねーの?」
僕はみんなに笑われた。
悔しかった僕は、その日のうちに父さんや母さんにも聞いてみた。
吸血鬼っているよね?
「そんな怪物、いるわけないじゃないか」
僕は一蹴されたうえに、叱られてしまった。
「そんな話はもう二度と友達にしちゃいけないよ。嘘を付くことは悪いことだからね」
僕は両親に従った。
だけど納得もできなかった。
だから僕は、吸血鬼について自分で調べてみた。
ネットで検索してみたり、事典を開いてみたり、図書館に行ってみたり。
だけど吸血鬼という怪物は、リアルにはもちろんフィクションの中にも存在しなかった。
神話にも、伝説にも、昔話にも、民話にも、伝承にも、漫画にも、映画にも、アニメにも、テレビにも、SNSにも、インターネットにも、吸血鬼という名の怪物は一切出てこない。
それどころか単語自体が存在していない。
どこをどう調べても検索結果0件。
つまり吸血鬼という言葉を僕が耳にしたのは、おじいちゃんとしたあの時の会話の中でだけだった。
あの話は、おじいちゃんの創作だったのだろうか。
友達の言う通り、勝手に作ったものだったのだろうか。
そう思ったことは何度もある。
少なくとも実際に会ったというのは嘘だろう。
それを信じられるほど今の僕は子どもじゃない。
だけど、引っかかるところもあった。
おじいちゃんは、吸血鬼という存在が忘れ去られるのを悲しんでいたような気がする。
あの時の表情が僕には忘れられない。
もしかしたら子ども時代の美化された記憶なのかもしれないけれど、どうしても気になってしまう。
それで僕は今でも、吸血鬼のことを覚えているのだった。
ナーヴコネクターの拡張現実によって表示されているARフォンを非表示にし、僕はベッドに仰向けになった。
「まったく、変なものを遺してくれたよ」
僕は悪態をつきながらも少し寂しい気持ちになった。
おじいちゃんが生きていればもっと話を聞けたのに……。
と、その時だった。
僕の部屋の天井に異変が起きた。
「なんだ?」
ベッドに仰向けになっていた僕は、その異変にすぐ気がついた。
天井に円形の黒い渦が発生している。
拡張現実はオフにしているからCGではないはずだ。
じゃあ、あれはいったい……。
黒い渦の中から女性が落ちて来たのは、そう思った直後だった。
「!?」
それは一瞬の出来事で、僕は身動き一つできなかった。
気がつくと女性の顔が目の前にあった。
柔らかそうな唇、滑らかな肌、銀色の長い髪。宝石のような青い瞳が、僕の瞳を覗いている。
凛々しい大人の女性。そんな印象の顔立ちだった。
息がかかってしまいそうな距離に、僕は息を飲んだ。
何が起こっているんだ?
僕はいったいどうすればいいんだ?
戸惑う僕のことなど気にせず彼女は体を起こした。
そして馬乗りの状態で僕のことを見下ろし、言う。
「小僧、今は西暦何年じゃ?」
「えっ……?」
「聞こえなかったのか? 何年かと聞いておる」
「2520年ですけど……」
「それはたしかか?」
「は、はい。間違いないです。今日は2520年4月23日の火曜日です」
僕が正直に答えると、彼女はベッドから飛び降りガッツポーズをした。
「成功じゃー!」
それはまるでゴールを決めたサッカー選手のような喜び方だった。
いったい何事……?
そう思いつつ僕は彼女を見る。
彼女の身長は僕よりも高く、180センチくらいありそうだった。スタイルも身なりも美しく、女王様と言われても納得してしまうだろう。
ただし今しているポーズは全然女王様っぽくないが……。
「あの……、あなたは……?」
「わしに名を訊ねるとは。人間のくせにいい度胸じゃな」
人の部屋に不法侵入しているくせに彼女は偉そうだった。
「じゃが、今のわしはすこぶるご機嫌じゃ。ゆえに特別に教えてやろう。わしの名前はテルル・コバルト・ペントランド。怪物の頂点たる吸血鬼のさらに頂点、怪王テルルとはわしのことじゃ」
そう言って彼女は狂気の滲んだ笑みを浮かべた。
その口には、鋭い牙が生えている。
彼女が言ったことを僕はしばらく反芻し、やがて聞いた。
「今、吸血鬼とおっしゃいました?」
「いかにも」
「あなたが、吸血鬼?」
「そんなに信じられぬか」
「ええ、まあ……」
「どうすれば信じる?」
「じゃあ……、ちょっと一緒に来てもらってもいいですか?」
「なんじゃ、まったく」
僕はテルルと名乗るその女性を家の洗面台の前に案内した。
テルルの姿は鏡に映っていなかった。
「……」
「満足したか? では部屋に戻るぞ」
僕たちは部屋に戻って会話を再開する。
「本物の吸血鬼かよ!?」
僕は律儀にも部屋に戻ってからそう叫んだ。
「だからそうじゃと言っておるじゃろうが」
「吸血鬼がなんでこんなところに……」
「おお、よくぞ聞いてくれた。わしが成し遂げた偉業を語り聞かせてやろうと、ちょうど思っておったところじゃ」
「はあ……」
「まさに異形の偉業というやつじゃな」
「……」
「ま、結論から言えば、わしは2020年からタイムスリップして来たのじゃ」
「ふぁ!?」
「クククッ。あまりに突拍子もなくて付いて来れんか。ならば順を追って語ってやろう」
テルルはここに来た経緯を話し始めた。
「じつはわしはSFが大好きでのう。
ハラハラドキドキ夢いっぱいなSF作品を見ては胸を躍らせておったのじゃ。
わしはSFに強く憧れた。
こんな体験わしもしてみたい、早くSFの世界が実現してほしいと、作品を見ながら思ったものよ。
しかしじゃ。
科学の進歩は思ったよりもずっと遅かった。
『2001年宇宙の旅』を見て2001年には宇宙旅行に行けるぞやっほー! と思っておったのに、2020年になっても実現する気配がまったくない。
アトムだって作られておらぬし、空飛ぶ車も実用化されておらぬ。
このペースだとドラえもんだって怪しいものじゃ。
まったくいつになったら実現するんじゃ。
人間どもよ、もっとやる気を出せ!
そうしているうちにわしは我慢ができなくなってきた。
たしかにわしは不死身じゃし、気長に生きていればそういう世界に勝手になっていくのじゃろうが、わしは早く未来を体験したかった。
SFを感じたかった。
その時わしは思いついたのじゃ。
待てないのならタイムスリップすればいいじゃない、とな。
怪王としての莫大なエネルギーを使えばそれくらいできるじゃろう。
そう思ってわしは試しにやってみることにした。
そしたらほれ、この通り。
SFへの思いが時間の拘束を打ち破り、500年の時を超えてわしはこの部屋に降り立った。
とまあ、こういうわけじゃ」
語り終えたテルルは、清々しい顔で言った。
「どうじゃ、これでわかったじゃろう?」
「わ、わからねえ……」
僕は正直な感想を言った。
めちゃくちゃにもほどがあるのでは……?
「なんじゃ頭が固いのう」
「いやだって、吸血鬼はこの世界には存在しないんですよ。それが目の前に現れて、しかもタイムスリップして来ただなんて……」
「クククッ。もしや吸血鬼は物語の中だけの存在だと思っておったのか? このたわけめ」
「いや物語っていうか、おじいちゃんの話の中だけの存在かと……」
「ほ?」
テルルは首を傾げた。
「聞き捨てならぬ言葉が聞こえた気がしたが、気のせいかの。今おじいちゃんの話の中だけと言ったか?」
「はい」
「小僧は世界が広いことを知ったほうがよいぞ」
テルルはやれやれという仕草をして言った。
「吸血鬼がおじいちゃんの話の中だけ? そんなわけはあるまい。吸血鬼と言えば世界中に知れ渡っている怪物じゃ。吸血鬼が登場する作品だって数え切れぬほど存在しておる。それなのにおまえときたら……。非常識にもほどがあるぞ」
「あの、お言葉ですがテルルさん」
「なんじゃ」
「2020年はどうだったか知りませんが、2520年の現在、吸血鬼はまったく世間に知られていません」
「……ほ?」
「むしろたぶん、僕しか知らないかと……」
「なん、じゃと……?」
その瞬間、テルルの見た目に異変が起きた。
何が起きているのかは分からない。
とにかく成人女性だった彼女の顔や体つきが、10代後半を思わせる姿へと縮むようにして変貌したのだ。
「そ、そんなバカな……。まずい! これはまずいぞ!」
あたふたしながらテルルが言った。
「なんですか急に。いったい何が起きているんです?」
僕もテルルにつられるように慌てて聞いた。
「怪物というはな、人間の心を拠り所にしておるのじゃ。そして人に知られていればいるほど怪物は力を増し、存在も強くなる」
そう話しているうちにテルルは僕と同年齢の姿になった。
変化はまだ止まらないらしい。
テルルが話を続ける。
「逆に言うと人に知られていない怪物は力も存在も弱い。そして知名度があまりに低い怪物は、この世界に存在していられなくなる。つまり――」
中学生の風貌になったテルルが、叫ぶ。
「つまり吸血鬼の知名度がほぼゼロなこの時代では、わしは消滅してしまう!」
「な、なんだってー!」
それでさっきから体が縮んでいるのか?
そしてそのままどんどん小さくなって、いずれは存在が消滅するっていう、そういう展開なのかー!?
「ぐっ……、ぐあああああああ!」
テルルの体はさらに縮まって小学生高学年の姿になった。
そのうえ苦しそうに胸を押さえ、呻き始める。
その凄惨な様子に僕は後ずさりをした。
本当に消えてしまうのか?
こんなふうに苦しみながら?
そう思うと僕は怖くてたまらなくなり、気がつくとテルルに駆け寄っていた
「何か助かる手段はないのか? 何か、僕にできることは!?」
彼女の体を支えながら僕は訊ねる。
健康的だった彼女はやせ細り、冷たくなっていた。
「血じゃ……」
こんな状態でも吸血鬼としてのプライドがあるのか、テルルは僕を睨みつけて言った。
「お主の血を寄越せ……!」
僕の頭の中に思いが駆け巡った。
吸血鬼に血を吸われる。
それってつまり死ぬか、眷属になるということでは?
だけど、僕しか彼女のことを助けられない。
僕しか彼女のことを知らない。
その時、おじいちゃんの言葉が思い出された
覚えていられたら、覚えておいておくれ
忘れ去られるのなら、それはそれで運命なのだろうよ
僕は運命に抗うことにした。
思えば10年前のあの日から、僕はそうして来たのだった。
「僕の血を吸ってください!」
僕は彼女を抱きしめた。
彼女の口元に僕の首筋が来るように。
すると彼女は耳もとで弱々しく言った。
「馬鹿者め」
次の瞬間、鋭い痛みが首筋に走った。
熱い。
しかし血の気が引くにつれて、痛みは快楽に変わっていく。
自分が誰かの一部になるという多幸感。
心地よい眠気に満たされて、僕は意識を失った。
目を覚ますと、僕はベッドの中だった。
部屋は明かりが付いていなくて暗く、静寂に満ちている。
どうなったんだ?
なんて思っているとすぐ近くで声がした。
「やっと起きたか」
その時初めて、隣にテルルが寝ているのに気がついた。
「うわあああああ!?」
僕は慌てて彼女から離れ、ベッドからも抜け出し、壁際まで後退する。
テルルはその様子をクスクスと笑って眺めている。
「あまり騒ぐ出ない。今はもう夜中じゃぞ」
「えっ?」
時刻を確認すると夜中の1時を過ぎていた。
テルルが現れたのがたしか18時くらいだったから、7時間近く眠っていたことになる。
「まったく大変じゃったぞ」とテルルがベッドに座って言う。「いつまで経っても起きないから誤摩化すのに苦労したわい。夕飯を食べろだのお風呂に入れだのドアの向こうでうるさかったからのう」
「うるさい、と言ったら妹かな。でもどうやって誤摩化したんです?」
「お主の声真似をして『今好きな子にラブレターを書いているんだ。集中したいから放っておいてくれ』って言ってやったら、ウキウキした感じで引き下がってくれたぞ。わしのファインプレーじゃな」
「なんて対処の仕方をしてくれたんですか!」
明日絶対に何か言われるよ。
あいつの恋愛脳はすごいんだぞ。
「ほう。じゃったら見知らぬ幼女に添い寝してもらっておる、お主のありのままの姿を見せたほうがよかったかのう?」
「うっ……。それは家族会議どころか警察に突き出されるのでやめてください」
さすがは吸血鬼だ。
やることがえぐい……。
「ってもう、いったい何の話ですか」
いい加減今の状況を確認したくて、僕は部屋の明かりを付けた。
ベッドに座っているテルルは、幼女の姿で留まっていた。
学年で言ったら小学生低学年というところだろう。
その年齢特有の華奢な体つきではあったがやせ細っているという感じはなく、健康的に見えた。
ちなみに服装も体格に合わせていつの間にかチェンジされている。
「えっと……、助かったんですか?」
「わしが? それともおぬしが?」
僕はテルルのことを言ったつもりだった。
というか自分のことは失念していた。
そういえば僕はどうなったんだ?
「両方です」
と僕は答えた。
「ふむ」
テルルは立ち上がり、部屋をうろうろしながら言った。
「まずお主は特に変わりない。生きておるし吸血鬼にもなっておらん。倒れたのはただの貧血。これまで通り普通の人間のままじゃよ」
「なんだ、よかった」
僕は胸をなで下ろした。
「死ぬか眷属にでもされるのかと思いましたよ」
「ふん。吸血鬼を知っている唯一の人間を殺すわけがなかろう。お主を吸血鬼化しても一緒に消滅するだけじゃしな」
「そっか。よく考えたら僕を人間として生かしておくしかなかったのか」
「じゃから言ったろう。馬鹿者と」
「……」
血を吸う前に言った「馬鹿者め」ってそういう意味だったのか。
たしかにネタばらしをされると、僕のあの気負い方はちょっとアホらしく思えてくる。
例えるなら、遺書をしたため死ぬ覚悟で献血をしたようなものか。
「さて、次はわしがどうなったかじゃが、見ての通りお主のおかげで消滅はせずに済んだ。しかし相変わらず知名度最低の最悪状態。下手すれば即消滅じゃ。そこでわしは、お主に頼みたいことがある」
そう言うとテルルは、ここぞとばかりにベッドの上に飛び乗り、僕を指差した。
「わしと一緒に吸血鬼の存在を世に知らしめるのじゃ。怪物としての知名度を上げるためにな」
「!?」
僕は頭がまっ白になった。
吸血鬼の知名度を上げる、だと……?
「な、なんで僕が?」
「そんなの当たり前じゃろう。お主しか吸血鬼のことを知らんのじゃから」
「でも、知名度を上げると言ってもいったい何を……?」
「それはこれから考える!」
「えぇ……」
「ああ、それと知名度が上がるまでは、わしはお主と一緒に暮らすからの」
「えぇ!?」
「仕方がないじゃろう、お主のそばにいないと吸血鬼として存在できんのじゃから。これも運命と思って諦めるんじゃな。まあでも、こんなに可愛い幼女と寝泊まりができるのじゃ。お主にとっても嬉しかろう?」
「そのセリフに喜んだら通報されますよ! というかこの部屋に暮らすんですか? 僕普通に家族と暮らしているんですよ? みんなになんて説明したらいいんですか!?」
「そこは自分で考えんか。隠し子だとか誘拐して来ただとか、適当に言って誤摩化せい」
「誤摩化し方のチョイスがひどい!」
「それか隠し通すしかあるまい。捨て犬を親に黙って拾って来てこっそり飼おうとする子どものように」
「絶対にバレるやつじゃないですか!」
「まあ最悪、家族は眷属にしてしまうから安心せい」
「鬼か!」
「鬼じゃが?」
「ぐっ……」
どうやら何を言っても無駄なようだった。
僕が黙っているとテルルはベッドから降り、僕の前にやって来た。
「お主には期待しておるぞ」
そして微笑み、彼女は言った。
「わしを有名にしておくれ」
結局僕は吸血鬼のテルルと暮らすことになった。
時は西暦2520年。
僕は彼女のために、怪異譚を作ることになる。
吸血鬼に一致する情報は見つかりませんでした。 晴間あお @haremaao
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