第51話 みんなで、乗り越えていこう

 女神のような微笑、とても美しくて素敵だと思った。


「礼には及ばないよ。ルナ。困っているのがよくわかってたから、純粋に助けたいとおもってた」


「それでも、本当に嬉しい。それがあったから、私はこうして信一君たちと友達になれて、一緒にいれるんだもん」


 にっこりとした笑顔のルナ。本当に喜んでいるのがよくわかる。


 そしてにぎやかな大通りを過ぎ去り、物静かな公園にたどり着く。


「ちょっと、休憩しようか」


「──うん」


 そして公園のベンチにちょこんと座る。



「あの……信一君。いいかな?」


「なに?」


「私のために戦ってくれたお礼。させてほしいな──」


 そしてルナは耳打ちでその内容に触れていく。内容に俺は思わず驚いて顔を赤くしてしまう。


「本当に。俺なんかで大丈夫なの?」


「うん。信一君なら、私の初めて、上げてもいいかな」


 ルナは顔を真っ赤にして俺にそう話す。ルナの初めて、ふさわしいかどうかはわからないけど、そこまでお願いするなら、やらないわけにはいかない。


 なにより、ルナの気持ちにこたえたい。



「わかった。ルナの初めてのキス、絶対に成功させてみせるよ」


 そう、ルナにファーストキスの相手をしてほしいと頼まれたのだ。


 そして彼女は胸が当たるくらいに俺に急接近。肩にトンと触れ──。


 チュッ──。


 そっとキスをする。


 唇同士が、優しく触れる。ほんのりとした甘い香り、マシュマロのような柔らかさが俺の唇を包む。

 ずっと、この唇を味わっていたいという気持ちになれる。



 永遠のようで短い時間が過ぎ、俺はルナから唇を離した。


「信一君。本当にいてくれてよかった。だからこれは、そのお礼──」



「私のこと、ずっとよろしくね」



 ずっとか、いい友達関係でありがたいものだ。


 その後も、俺たちはぎゅっと手をつなぎながら街中を歩く。

 宝石店や飾り物を見たり、海に沈む夕日を見たり、楽しい1日だった。


 特別な所に行ったわけではないけど、とても特別な時間に感じられた。

 また、こんなふうにして1日を過ごしたい、心の底からそう思える1日であった。


 そんな、あっという間の幸せな時間は過ぎ、夜になる。

 俺たちは、ルナに実家に帰る。


「ただいま」


「「おかえり」」


 ダルクとメルアが部屋から出て来る。


「楽しかった? うまくいった?」


「ああ、楽しい1日だったよ」


 メルアの明るい笑顔を見ていると、こっちまでああ軽くなってくる。


「一緒に寝たのか? 気持ちかったか?」


「なわけ無いだろ……」


 ダルクは、相変わらずませている。

 すると、メルアがニヤニヤとしたジト目を向けだした。


「信一君。もうより取り見取りのハーレムって感じだねぇ~~」


 からかうような言葉使いで俺に言い放ってくる。


「おい、そう言い方はやめてくれよ」


 ちょっぴりと悔しそうに顔を膨らませている。何か不満でもあるのかな?

 こういう時のメルアの本心は、正直分からないと思うことがある。女の子じゃないから、どうしてもそう感じてしまう。



 文香との戦いの後、俺たちはしばらくここに暮らすこととなった。

 最近は、楽しいことばかりでいい日々を送っている。街のいろいろな所に出かけたり、みんなで外食をしたり。


 楽しいと思える日常に、充実した日々だ。メルアもダルクも、楽しそうに遊んでいる。


 そんなことを考えていると、メルアが1枚の紙を俺に渡してきた。


「今日ね、ギルドに行ってきたの。それでね、シェルムさんからこの紙を受け取ったんだ」


 俺はメルアが受け取った紙をよく見てみる。


「何々、先日はルナの件、解決していただき誠にありがとうございます」


 そして内容にはこう書かれていた。


「世界中を旅して、いろいろな困っている人たちのために戦ってほしい?」


「うん。シェルムさんがね、言っていたの。あなたたちのような強さと、正義感がある人達だったら、それが似合っているって」


「ただの村人として人生を送るよりも、合っているって言ってたぞ」


 メルアとダルクの言葉。いろいろなところへ旅か、そういうのもいいかもしれないな。1度っきりの人生だ。1回くらいは、こんな経験を積むのも悪くはないな。


「俺は、大丈夫だ。みんなはどうだ?」


 俺の問いかけにみんなは明るい表情になり答える。


「私は、大丈夫だよ。いろいろ冒険、ちょっとやってみたいかも」


「ああ、悪くないな。いろいろなところで、魔王軍たちをぶっ飛ばしたり、おいしいもん食ったり、面白そうだな!」


「私は、旅してみたい。いろいろな所に……行ってみたい」


 この状況じゃ、結論は決まったようなものだな。


「じゃあこの依頼、受けるということでいいな?」


「「「やったー」」」


 全員が賛同し、俺たちの旅がこれから始まることとなった。

 しかし世界中を、旅るのか。楽しそうだな。



 ──が、世界中を回るというなら、その前に帰りたいところがある。冒険をするなら、そこからでも遅くはないだろう。


「これが終わったら、一回村へ帰ろう。ルナを連れて。それからでもいいかな?」


 ダルクとメルアは故郷のことを想いだし、どこか懐かしそうな表情になる。


「そうだね。みんなに別れの挨拶とかしなきゃね」


「だな」


「みんなの故郷、ちょっと行ってみたいかも」


 ルナは、好奇心旺盛な表情で賛同する。始めていく田舎の村だもんな。ちゃんと迎え入れてあげるように頑張らなきゃ。


「とりあえず、明日ギルドに行ってこのことを伝えよう。それから旅の準備だ」


「そうだね」


 明日から、また忙しくなりそうだ。これから、楽しくも厳しい旅路が、俺たちを待っている。


 けれど、どんなことがあっても、俺たちなら乗り越えられるような気がする。

 そして、3人がそうだったように困っている人たちを救っていけるだろう。



 楽しくも、厳しい俺たちを待ち受けている冒険が、これから待ち受けている。

  










 これで──終わり……だ。


※近況ノートにこれからの情報あり。このENDが好きではない方用です

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【完結】暴力系幼馴染と異世界に転生したら、幼馴染が魔王軍に裏切るとか言ったから、そのクソみたいな面を思いっきりぶん殴って、別のヒロインと付き合ってみた。 静内(しずない)@~~異世界帰りのダンジ @yuuzuru

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