第50話 ルナとの、素敵なデート
そしてそのやり取りから戦いがひと段落していることを感じる。
俺はルナに肩を貸しながらこの場を後にしていった。
その後、俺たちはギルドに直行して起こったことを説明する。文香が裏切り者で魔王軍の力をなんの躊躇もなしに使ってきたこと。
それを打倒し、ルナの魔王軍の力を打ち破ることができたこと。
そして、お情けかどうかはわからないが、魔王軍を打ち破ることができたこと。
「とりあえず、もうルナは魔王軍の力に、悩まされるようなことにはなりません」
その言葉にシェルムさんは目に涙を浮かべながら俺たちを絶賛してくれた。
「ありがとうございます。ルナの表情が、どこか明るくなっているとは感じましたが、そんなことがあったとは。感謝の気持ちでいっぱいです。このご恩は、五日かならづさせていただきます」
そして、後日正式なお礼をさせていただくこととなった。どんなお礼なのか、とても楽しみだ。
あと1つ、俺はルナとデートをすることになってしまった。
理由は簡単。家への帰り道で、ルナがそう迫ってきたからだ。
俺は特に断る理由もなくて了承したわけだが──。
「信一君。女たらしだったんだ……」
メルアが不満そうに顔をふくらます。俺はどう言葉を返すか戸惑ってしまうが……。
「でも聞いたよ。ダルクちゃんも、メルアちゃんも、1度信一君とデートしたんだよね。だったら私だって1回デートする権利はあるはずだよね。違う?」
ルナの強く迫る言葉にメルアは何も言えなくなってしまい、了承せざるを得なくなってしまう。
結果、明日俺はルナとデートをすることになってしまった。
ルナとのデート、大変なことになりそうだなぁ。
そして翌日、ルナとのデートの日。
俺はルナの家の近くの公園にいた。この前と違い、2人っきりという雰囲気を醸し出すために別々に家を出て公園で待ち合わせをするということにしようということになっていた。
そして俺は先に家を出て、公園で待ち合わせをしている。スーツ姿で、周囲をきょろきょろしながら立っている。
周囲では家族連れや、カップル、友達同士でキャッキャしていたりしておとても賑やかな雰囲気をしていた。
そしてしばらく時間がたっていると彼女はやってきた。
「信一君。おはよう。待った?」
ルナが明るく元気な声で話しかけてきた。その姿に俺は思わずドキッとしてしまう。
今までのルナとは違い、明るくはだけた服と、活発的そうなミニスカート。
メルアがコーディネートした風なのだろう。
意外性があり、ドキドキとしてしまった。
「おはよう。その姿、とても新鮮だね──」
「あ、ありがとう信一君。初めてのデートってことで、気合入れちゃった。似合って──いるかな?」
確かメルアはここで彼女のことをほめていた。
ここは俺もほめよう。それも出来るだけ自然に。そうすれば彼女だって喜んでくれるはずだ。
「その、ルナに似合っていて素敵だと思う! ルナの落ち着いて繊細な雰囲気と、その大人っぽい上品な服がとてもに合っていると思うよ」
よし、これなら大丈夫そう。──って思ったんだけど、ルナは顔を真っ赤にした後、ぷくっと顔を膨らませた。
「信一君。そういう事、付き合ってもない女の子の前で平気で言う?」
えっ? 俺なんか地雷踏んじゃったのか? やっぱりかっこつけたことを言うんじゃなかった。
「信一君って、結構すけこましで女遊びが好きそう」
ルナがジト目でこっちを見てくる。マジかよ、失敗しちゃった。やっぱり女心というのは複雑だ。
「そ、そんなことないよ。女遊びなんて、全然やったことないし、モテたことなんて、全然ないから!」
慌てて否定する俺。まずい、悪い印象を持たれてしまったかもしれない。
「と、とりあえずどこかに行こう。どこか行きたいところってある?」
するとルナはフッと笑みを浮かべって一言。
「今日は、どこかとかじゃなくて、いろいろんなところを信一君と回ってみたい。二人っ2りで歩いてみたい」
「そ、それだけでいいの? もっとどこかに行きたいとかないの?」
意外な答えだ。その言葉は予想できなかった。戸惑う俺にルナは顔を赤くして照れながら答える。
「……うん。今日は、信一君とずっと、手をつないで歩いたりしたい」
──俺は、以前の世界で文香以外の女と縁なんて全くなかった。だから女心なんてよく分からない。ダルクも、メルアも戸惑う所はあった。
まあ、もっとこういう経験もしよう。
「わかったよ。じゃあ今日はそうしよう」
「やったー。わーい」
ルナは喜んでにっこりと笑みを見せる。嬉しそうでよかった。ただ、歩くだけだとどこかに寄ったりしないからイベントでごまかすことができない。下手をするとどっちも話さずに気まずい展開になってしまう。大変なデートになりそうだ。
「じゃ行こうか、ルナ」
「うん」
そして俺たちは街中へ。
にぎやかな街の中を、俺たちは歩いていく。そして歩きはじめるとルナが手を差し出してきた。
「手、握っていい?」
「わ、わかった──」
ぎゅっと手を握って俺たちは街中を進む。
ルナの手は、細くて冷たかった。
ずっと握っていたいと思える。気持ちいい手。
そして歩きながらルナが微笑を浮かべ始め、話しかける。
「信一君のおかげで、私はここにいれて、戦う勇気が出せて、こうしてみんなといる。本当にありがとう」
心から喜んでいるルナ。
女神のような微笑、とても美しくて素敵だと思った。
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