第3話
「素敵です!!ミカさん!!もう!最高です!!」
「あはは……ありがとう……」
ハルカが目をキラキラ輝かせながら、ミカがかつて装備していた錬金術師の装備品を見て褒めちぎり、ミカはそれを乾いた笑みを浮かべ何故こうなったんだろうと数時間前の事を思い返した。
ミカの背後に突然現れて、自分の冒険者復帰とハルカとパーティーを組む事に許可を出すギルドマスターのカタリナに困惑するミカ。そんな困惑しているミカに淡々とカタリナは語り出す。
「ハルカは一度言い出したら聞かないところがあるからな。もう勇者パーティーを抜けると言ったら再び加入する事はないだろうし、何より、お前が冒険者として復帰しなかったら、ハルカまで冒険者を引退すると言いかねん。それは、ギルドとしても世界にとっても由々しき事態だ」
カタリナの言葉は大袈裟でもなく、『剣聖』の加護を持つハルカは魔王討伐の為の貴重な戦力だ。そのハルカが冒険者を辞めたらギルドとしても、国としても非常に困るだろう。
「それに……お前の事情を知ってここに雇い入れたが、いつまで女神の加護持ちであるお前を置いてはおけないからな」
と、ここまで言われて、ミカは冒険者へ復帰したのである。
「どう。ミカ。着心地は?」
「うん。サイズも怖いぐらいバッチリだったよ」
冒険者時代に、ミカが世話になった武具屋の店主ナタリアがミカが着ている装備品をチェックし頷く。
「ん、こんな事もあろうかと取っておいて整備もして正解だったわね」
「本当に昔使用していた装備品を残していたなんて……」
ミカは冒険者を引退した際に、かつての装備品はナタリアに預け、次世代の子らに譲り渡すか素材にしても構わないと言ったのだが、カタリナに頼まれて、ミカの装備品は保管・整備されていたのだ。
「カタリナさんはあんたみたいな優秀な子を職員のままにしておけなかったんでしょう」
「私は役立たずで追放された身なんだけど……」
「知らぬは本人ばかりかなってね……」
ナタリアは呟くようにそう発言したが、ミカにはその言葉が届かなかった。それより、ミカはハルカを見てある事が気になっていた。
「ところで……ハルカちゃん。装備品は?」
ハルカを見ると、肝心の剣はどこにもないし、鎧や盾なども装着していない。勇者パーティーに入って行く際は確かに着けていた装備品はどこにも無かった。
「あぁ!それなら!勇者という名の屑が抜けるなら有り金や装備品は全部置いていけって言うので、全部投げつけてやりました!!」
「はあぁ!!?」
まさかのハルカの返答に素っ頓狂な叫びをあげるミカ。前から横柄な態度はみられていたが、ますます酷くなっている様に頭が痛くなるミカ。しかし、肝心のハルカが装備品が無ければ意味がない。急いでナタリアにハルカの装備品を依頼したら
「そんなの……ミカが作ってあげればいいじゃない」
「はい!!?」
ナタリアの言葉に、ミカは目を見開いて2度目となる素っ頓狂な叫びを上げた。
元冒険者だったギルドの受付嬢は、勇者パーティーを抜けてきた剣聖に誘われて冒険者稼業を再開しました 風間 シンヤ @kazamasinya
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