第2話
突然帰って来たハルカは、ミカの所までやって来てそう詰め寄ってくる。そんな突然の事に動揺するミカだが、まず最初に聞かなくてはいけない事がある。
「ハルカちゃん……その……勇者パーティーを抜けたって……」
国王の王命で魔王討伐の為勇者パーティーに所属しているハルカ。そのハルカが勇者パーティーを抜けたという。ギルド職員としてまずはそこを聞く必要があった。
「抜けるに決まってます!あんな勇者とは名ばかりのクズパーティー!!勇者が助けるのはお金を持ってる貴族ばかり!商人達からタダで物を貰うのは当たり前だと思ってるし!おまけに年中盛ってるのか、女遊びが激しく私にまでセクハラしてこようとしたんですよ!?他のメンバーはその事に注意するどころか、煽ったりしてくる始末ですし……もう耐えられずにこっちから辞めてきましたよ!!」
ハルカはこれまで溜まった不満を爆発させるようにそう答えた。ミカは思わず片手を額にあてて溜息をついた。
勇者パーティーの素行の悪さはよく知っていた。冒険者ギルドには毎日のように苦情が舞い込んでいるし、ミカ個人も勇者パーティーについてはよく知っていたので、ハルカなら辞めるのではないかとは思ったが、まさか本当に辞めて帰って来るとは思わなかった……
「はぁ〜……勇者パーティーの素行の悪さはよく耳にしてましたが……本当だったんですねぇ〜……本当に彼らは勇者なんでしょうか……?」
「本当にそれですよ!!以前から分かっていたとはいえ!あそこまで酷いとは思いませんでした!!」
ルナの一言をきっかけに、半年間溜まりに溜まった不満をぶつけるハルカだったが、ようやく不満を全てぶちまけた後、ミカの両手をガシッと掴み
「それに!やっぱり私はミカさんとパーティーを組みたいんです!お願いします!ミカさん!もう一度冒険者に戻って私と冒険の旅に出かけましょう!!」
「えぇ!?いや!?無理よ!?私には……貴方と組んで冒険者稼業なんて……」
ハルカの誘いを俯きながら断わるミカ。しばらく沈黙していたミカは溜息を一つつき
「私は貴方とは違うのよ。ハルカちゃん。貴方ならもう知ってるでしょう。私は役立たずの烙印をあの勇者パーティーから押されて辞めさせられた冒険者だって……」
ミカは右手だけはめていた手袋を外す。すると、ミカの右手にも、ハルカと同じように女神から加護を授かった証の紋様が浮かんでいた。
ミカは数年前、女神から『生産』の加護を授かった冒険者として、勇者達のバックアップの為に、勇者パーティーに参加していた。しかし、ミカが生産出来るのはポーションといった最初に手に入る道具や装備品しか生産出来ず、勇者達から役立たずの烙印を押されてパーティーから追放された身なのである。
「私は優秀な『剣聖』である貴方と違って、役立たずの錬金術師だから、今更私が復帰して貴方のパーティーに入っても足を引っ張るだけよ……」
ミカは俯きながらもハッキリとハルカの誘いを断ったのだが……
「そんな事ありませんッ!!!」
ハルカがキッパリとそう断言した。ミカは思わず目を見開いてハルカの方を見る。
「ミカさんが作ったポーションは!初心者の冒険者達が貰って何度も助けられてます!私もその1人です!ミカさんのポーションで沢山救われた人がいるのを私はよく知ってます!!」
ハルカの言葉を受けて驚愕するミカ。自分が生成したポーションが沢山の人を救っている。そう言われてもミカにはその事実を受け入れられずにいた。
「それに……ミカさん……本当は冒険がしたいんじゃないんですか?」
「そ……それは……」
ハルカの言葉に思わず言い淀んでしまうミカ。元は冒険者であるミカは、世界中を冒険しながら沢山の人を救いたいという夢があった。しかし、役立たずの自分では叶えられないと諦めてしまった夢である。やっぱりちゃんと断わろうとミカが口を開こうとすると
「いいんじゃないか。ミカ。冒険者に復帰してハルカとパーティーを組んでも」
「へっ……!?マ……!?マスター……!!?」
当然、ミカの後ろに現れてそう声をかけてきたのは、かつてミカがパーティーを追放された時、ミカをギルド職員に就職させてくれたギルドマスターのカタリナだった。
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